『姑獲鳥の夏』 | えにーの読書感想文

えにーの読書感想文

読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。


『姑獲鳥うぶめの夏』

京極 夏彦、講談社文庫、1998年



「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」


文士・関口 巽が、京極堂こと中禅寺 秋彦に持ち込んだ話は東京・雑司ヶ谷の久遠寺医院に20ヵ月もの間、身籠っている妊婦がおり、その妊婦の夫は鍵のかかった部屋から煙のように消え失せたという噂であった。

探偵・ 榎木津 礼二郎の下には、久遠寺家の長女・涼子が、密室から消えた妹の夫の行方を探してほしいと依頼をしてきた。偶然その場に居合わせた関口は成り行きで榎木津、京極堂の妹・淳子と共に久遠寺医院に調査に向かうこととなった。

刑事・木場 修太郎は久遠寺医院で一年半前から発生している3件の赤ん坊失踪事件を担当していたが、3件とも訴えが取り下げられてしまっていた。木場は関口の受けた依頼の件を知り、警察として捜査を開始する。
しかし、一連の騒動はカストリ雑誌に載せられ久遠寺家の面々は世間の誹謗中傷に晒される。なすすべをなくした関口の決死の依頼を聞き入れた京極堂は、事件の幕を引くために久遠寺医院へと向かう。


   



妖怪シリーズ第1弾。

舞台は戦後間もない昭和27年の夏。
古本屋で神主にして憑き物落とし・京極堂こと中禅寺 秋彦、鬱病がちの文士・関口、他人の記憶が見える探偵・榎木津など個性豊かな登場人物たちと、複雑に絡み合う事件が絶妙。

それぞれの事件・出来事の根底を流れているものは同じで、それが様々な形で噴出してくることでひどく複雑化していってしまいます。
それを解体し、現実レベルで再構築をさせるのが京極堂の憑き物落としの仕事。
このシリーズは毎回ひとつの妖怪が事件のモチーフとなっていて、今回はタイトル通り姑獲鳥という、赤ん坊を預けたり時にはさらったりする妖怪がキーワードとなっています。

脳や心の不思議、妖怪の謎、現実の事件が融合し合う京極ワールドに入り込んでみてはいかがでしょうか。