『Xの悲劇』
エラリー・クイーン(鮎川信夫訳)、創元推理文庫、1960年
「どうやら、あなたがたは、罪と罰に対する心がまえにおいて、多くの演出家が戯曲とその解釈に関して犯すのと、まったく同様の誤謬を犯しておられるようです」
ニューヨーク市を走る電車内で、婚約披露パーティーを終えたばかりの株式仲買人が殺害された。凶器はニコチン毒を塗った針を無数に埋め込まれたコルク玉だった。
満員の電車内での犯行に容疑者は多数いるが決め手に欠ける警察は、往年の名優ドルリー・レーンの協力を乞うことに。
しかし、事件はさらなる犠牲者を出していき、魔除けのような奇妙な指の形のダイイングメッセージも残される。
レーンが叡智の限りを尽くしたロジックで驚異の殺人者を暴く。
エラリー・クイーンがもともと「バーナビー・ロス」名義で出版したシリーズ第1弾。
別名義で書いていることも内緒だし、そもそも「エラリー・クイーン」が2人の合作であることすら知られていなかったので、エラリー・クイーンとバーナビー・ロスの討論会みたいなことも行なわれたことがあるとか(それぞれクイーン役とロス役に分かれて)。
そして、もう1人の名探偵ドルリー・レーン。60歳を迎える名優ですが耳が聞こえないため読唇術で周りと会話します。変装もお手の物。
刑事事件に興味があって新聞に載っているような事件を推理して警察に手紙を送っていたりしたようで、それで困った警察が助けを求めに来るところから本作は始まります。
ダイイングメッセージも出てきますが、それに関しては恣意的かなぁ、と。それ以外は論理的でなるほどーと思います。