Chapter 2,682〜 -7ページ目

Chapter 2,682〜

非表示にしたものも含めると2,800話くらい?
これ8章。

「kenさんもう何年になる?」

 

そうですねぇ、10年・・

 

「10年てこたないよ。もっとだよ」

 

 

撮影に行って来た。

厄介な撮影で、この撮影をこの時間内で撮れるのは日本中で俺と相方だけじゃないか?てくらい。で、恐らくその通りだから10年以上続いてるんだろう。

でもね、

 

当日の朝、TOCOTのエンジン掛けるまで「行っきたっくねぇなぁ」「やだなぁめんどくさいなぁ」

いや行けば思いっ切り仕事するんだけどさ。

もうさ、まとも(か?)な勤め人の生活になっちゃってるからさ、例え休日であってもわざわざ写真撮りに行きたくないんだよ。ルーティーンを崩されたくないと言うか。

 

撮影一日、画像処理一日半。都合二日半で会社から貰う月収の半分稼ぐ。

 

そりゃさ、そんな撮影がいっぱいあってカメラマンで飯が食えれば・・・いやもーいーよ。

片手間の、カメラマンの名残仕事でも「いつまで写真撮れっかなぁ」て考えるもん。クオリティが下がるとか大きな失敗をしそうとかじゃなく、モチベーションが上がらないんだよね。これもまた『お金じゃない』んだよ。

痛い膝を引き摺って、なんかさぁ「人間ってこうやって衰えて死んで行くんだな」て思うんだよ。

俺は身体能力が異常に高い。けど、部品が着いて来れなくなった。

ならばさ、残りの人生、穏やかに過ごしたいんだよ。

ギター弾いて、大好きな人の横顔を眺めて。

 

 

 

人生に何度か『いい時間』てある。

そう。

残念ながら俺には「何度か」なんだよね。何十回とか何百回もない。そんな人居るんかな?

指が足りないくらい大勢の女の人と一緒に居てもらって良くしてくれて、それでも「一緒に居ていい時間を過ごさせてもらった」と思える人は四人しか居ない。そこに二度の結婚の相手は入っていない。

「幸せだなぁ」「生きてて良かったなぁ」「俺にもこんなことあるんだ」と思える時間。

こんな可愛くて完璧なプロポーションの女の人が俺に告白してくれるんだ。とか、

いやらしいことの限りを尽くしてたくさん笑ってくれた人。とか、

これ以上ないくらい気を遣ってくれて俺を地獄の淵から引っ張り上げてくれた人。

残りの人生の全てを賭けて一緒に居て欲しいと願った人。

後は、

南の島にロケに行って、沖のリーフの上で遠くの積乱雲を眺めながらバドワイザーとマールボロ。

人骨と陶器の欠片が散らばる砂漠に沈んで行く夕陽を眺めたこと。

Ferrariのローンが通って「ああ俺もカメラマンとしてここまで来れたか」

娘が生まれてパパっ子になって、どこでも着いて回ってくれたこと。学校一の仲良し父娘と言われてたこと。

双子ちゃんの子守りに長い間、関わらせて貰ったこと。

そう考えるとさ、

俺、多分、今、この歳でいい仕事に恵まれてとりあえず何とか暮らせて娘が居る。最近は慣れて「?」とか「いら。」とかすることもなく、娘の性格生活人生を尊重して気にしない何も言わない。

死ぬ間際に「いい時間だったな」と思うんだろな「ありがたかった」と。

 

 

父親が急速にボケて面倒臭いことになりそうな気がする。いや間違いなくなる。でも並行して息子の俺は死ぬ準備が整って来たぜ。後はギターがどこまで行けるか。

 

娘がね、元々あの母親譲りの美人なんだけど、最近色気に凄みが加わってるんだよね。恋愛だろね。同棲とか結婚とかしないのかな。

独り暮らしがちょっとね、恋しい。

 

 

起きて来た娘に、

 

出掛ける?

 

「うん。」

「なんで?」

 

いや別に。

 

「ごはん?」

 

あー、いやまぁ。

 

「いいよ」

「時間あるし」

 

ちゃんぽん行く?

 

 

こないだフードコートのメニューの前で「リンガーハットってどんな味するの?」

「どんな味」と言われても・・

豚骨醤油なのかなぁ海鮮の太麺で塩味で・・えーっと説明むずい。一緒に博多行った時にさ『水炊き』食べたじゃん?あれにちょっと似た・・いや似てないか。

ちゃんぽん食べたことないんだ?

 

「ない。」

 

 

着替えて出る時、

 

ちゃんぽんとラーメンどっちがいい?

 

「うーん・・ラーメンじゃないかな」

 

○○(地名)でも?

 

「○○って?」

 

環七。

 

「そりゃ環七でしょっ」

 

 

娘の運転でガレージ出る時ミラー「かこん。」ぶつけて出発(気にしない気にしない。そうやって車幅感覚は鍛えられる)

それにしてもトコットの初心者マークの似合う事。娘、初心者ではないけれど「慣れるまで貼っとく。」

久しぶりだな娘とラーメン。

ラーメン自体が久しぶり。大家が年齢か体調か(多分こっち)でラーメン受け付けなくなった。

娘の運転で先週は田舎蕎麦屋。駐車以外はまぁ問題ないかな。あ、あと一時停止はちゃんと止まれ。

それにしてもトコットって女の人の車だよね。

そのつもりで買ったんだけどね。

 

 

つか、

俺がiPhone、カメラにしてピント合わせてシャッター切ってる間に食べ始めてるって凄くないか?

ラーメンは同時に来たし俺、元プロだし。画角決めてピント指定してシャッター押すの、10秒から15秒。

娘早えぇよ。どんだけここのラーメン好きなんだよ?

相変わらず一席離れて座るのは許す。

 

 

退勤時間近くに仕事を終えた職員さんに「もう風呂入る時間ないじゃん」と同僚さん。

 

「うん。」

「給湯室で頭だけ洗ってく」

「そんでさっき女房に、風呂沸かしといてってLINEした」

「ら」

 

(ら?)

 

「一緒に入ろ。て返事来た」

「あははは。」

 

 

『嫉妬と自己憐憫は人の持つ最も下等な感情』

ずっとそう戒めて生きて来た。

だから俺は、

他人がどれだけお金待ちでも、

誰かのフェラーリ流れるタンゴ♪〜(←知らないだろね)にも、

他人の綺麗な彼女にも、

羨ましいと思った事がない。

が、

 

こんな羨ましいことがあるだろか。

 

いい奥さんなんだろなぁ。

ノリだとしてもセンスいい返しだよなぁ。

 

 

 

上下(変な言い方だが本当)左右とレントゲンを撮ってくれて、

「加齢による膝関節変形症だね」とお医者さん(これもまた知らないだろうけど『クーロンズゲート-九龍風水傳-』に出て来そうな太っちょの胡散臭い中国人の先生)

人間は歳を取ると段々膝が変形してO脚になるんだと。

「でもね、」

「そぉうの歳で骨の間に隙間アル。軟骨もまだダイジョブ。これ膝のお皿ね、お皿ちゃんとくぼみにはいてる。立派なもんよ」

「ひざかんせつへんけしょの初期も初期も初期」

 

びぃゆーっ。とレントゲン画像を拡大して、

 

「ここにあるっちゃー、ちさなトゲある」

「左にもある」

「これ痛いのね」

 

こんな小さな棘(=骨の変形)でこの痛みなら大きな棘なら歩けないだろな。

マニュアル車のクラッチなんか踏めないんじゃない?スキーでウェーデルンとかボードとか無理じゃない?←だーいじょーぶだどれも今更やんないから。

膝が痛いと駅弁出来ないかなぁ?・・それはちっと困るな。

 

投薬と生活習慣(膝を冷やさない。下り坂、階段降りるの注意。正座禁止とか)とマッサージで進行を遅らせましょうと。整形のマッサージ、リハビリって言うの?あれ通うのめんどくさいんだよなー『家でびびび。』で良くない?

インフルのせいで病院に居た時間より長い待ち時間の調剤薬局。処方箋預けて買い物して一旦帰って着替えてから取りに行く。

もらった痛み止めの説明。

『連用中に薬の量を減らしたり急に薬を辞めたりすると、不安、不眠、興奮、震え、パニック発作、幻覚などが現れることがあるため・・』

 

をい。

 

これ飲んで大丈夫なのか?

「カロナールもロキソニンも効かないみたいです」と言ったから強いの出してくれたんだろけど。

何年か前、健康診断相談で『デパス(向精神薬)』処方されたの思い出す。俺はメンヘラじゃねえ処方箋すぐ破って捨てた。

 

 

効かないです。

(膝を触りながら)「水溜まってないからいい感じね」言いながら「ぶすり。」と打たれた注射も効いてる気がしません。

身体でかいからかな。

痛みの量も質も変わりません。

 

 

相変わらず会社では「すごいっす」「良く動くねぇ」「年齢考えたらありえない体力」と言って頂いてるけれど、

おっさん歯を食いしばって必死に着いていってるんだよ。親子ほど違う若者のダッシュに並べるわけないじゃん。離されるもんか置いて行かれてたまるか。一生懸命なんだよ。膝の痛みなんぞ二の次だ。

それでも仕事はとても楽しい。ぐっすり昼寝出来るし帰るの早いし。

 

 

 

俺の人生最後の女(ひと)だったのだなぁ。

それにふさわしい人だった。

けれど俺は、

大切に出来なかった。

そういう精神状態や環境じゃなかった。

もったいないことをしたとか後悔じゃなくて、

あの頃、俺がその程度だったんだよな。

大好きだったのになぁ。