「夜歩くなら懐中電灯、ヘッドライト? 頭に付けるやつ必要ですね」
(災害備蓄品の中に3個あるよ。持ってくれば? ・・あ。)
「朝さっむい」
「羽織るもの、もう一枚持ってくるんだった」
(倉庫行ってガウン持って来ちゃいなよ。いっぱいあんだから、いーよ使っちゃって。現在国内にあるガウンの80%は年内で使用期限が切れる。どうせ廃棄だ使っちゃえ・・あ。)
会社じゃねえし。
山の宿だし。
俺の感覚がだいぶ倉庫にやられてるのか、会社を忘れられないのか。
今もまだ『マスクありき』の仕事だから、日に3回か4回「やべっ」「マスクしてないっ」と激しく狼狽える。
あ。いーのか、山ん中だ。
鬱蒼とした原生林、抜けると日陰一つない草原。
見上げる太陽に輪、その縁に虹が掛かる。これは『彩雲』とは違うんだろうか?
目の前に鹿の群れ。
この距離だったらライフルいらないんだろなぁ。拳銃とか矢とかで狩れるんじゃない?と思う。
狼が滅びて以来、この国の鹿には天敵が居ない。一説には「熊が天敵」とも言うけれどそれヒグマのことでしょ?
鹿は害獣。人間が天敵になるべきじゃない?
とか考えるけど、どーでもいーそこどいて。
会社に居る方が比べものにならないくらい楽。
写真を撮ってる方が全然楽しい。
お金は勿論、写真の方がいい。
山はキツいほんとにキツい。
山に上がると『夏の旅 / 松岡直也』を聞く。
もう20年近いのか。