「深呼吸してください」
「ゆーっくり深呼吸」
「吐く時ながーく時間かけて」
「穏やかーなこと考えましょう」
(?)
(んー)
真っ白な天井と空色のカーテンを見上げながら、
(仲良しだった頃。ほっそりした形のいい指。愛した後ろ姿。)
「はい」
「んー」
「もう一回測りましょうか」
(え。)
「リラックスしてください」
「もーっと」
「リラッークスすることを考えて」
(さっきからなんだよその、言葉をながーく伸ばすのは?)
(んじゃ、)
(一緒にお風呂。上がって涼むエアコンの下。で、どーだ?)
「はい。」
「138の68」
「いいでしょ。これで。」と看護師のおばはん。
はあ。
(お陰様で妄想、じゃない、フルカラーの記憶)
て、
いーのかこれ?
血圧1回目148の96だったのに、4回測ってどんどん下げたぞ。
ありなのかこれ?
正確な俺の血圧と言えるのか?
と言うよりも、
落ち着けば俺、この血圧。
ひょっとして俺、穏やかならこの血圧。
とも考えられる。
ひだり。
「違います」
んー・・うっえ、かな?
「上じゃないです」
(じゃあ二つしかないじゃん)
右。
「そうです」
「では画面変わります」
この調子で、見えなくなったら教えてくれる視力検査。
これもいーのか?
ありなのか?
役所の健康診断て『引っ掛かっちゃいけない割合』が決まってんのかな。「70%以上の職員が概ね健康であることが望ましい」とか?
「あれ。」
「もう一回測りますね」
どぞ。
「あー」
(なんだよ?)
「だいぶ痩せましたね」
(検査表見ながら)「あー去年より7キロちょっと落ちてるんですね」
(そ、そんなにー⁈)
「腹囲も立派です」
「基準内」
「ここまで落とすの大変だったでしょう?」
(いやぜんぜん。)
はぁ。
どうも。
ありがとうございました。
去年。
てーことは春か。
働く前の成人病検診だ。就職前ひと月以内だからそのままコピーを提出。データになってんだな。
あの頃かー
再び鍛え始めたばかりでダレてたんだろな。ヤケクソとも言える。不満と嫉妬、怒りと諦めを原動力にしちゃいかんてことだね。
ずーっと俺言ってるよね「嫉妬と自己憐憫は人間の最も下等な感情」て。
そういう意味では、今は多少落ち着いたのか。
いーえ。
んなわきゃねー
さいにょー心電図心音身長ちん長(うそー)聴音やって、
「ぶっすり」採血されて健康診断終り。
今回も何にもなさそう。
再来月内視鏡希望した。
だってただだし。
無駄に健康は続く。