「すまんが、町の荒物屋で、ウシの
鼻ぐりを買って来てほしいんじゃ。
数は、いくつあってもいい。
値段は、なんぼ高くてもかまわん」
と、変な事を頼みました。
みんなが引き受けてくれましたが、
帰って来て、
「あいにく、売り切れとるそうじゃ。
ウシの鼻につなを通す、鼻ぐりの輪
など、めったに売れるもんでは
ないから、普段は置いてないそうじゃ」
「おれもずいぶん探したが、一つも
なかった。『今日は何人も、鼻ぐりを
欲しいと言う人が来た。こんな事なら、
たくさん仕入れておけばよかった』と、
くやしがっとったわい」
と、口々に言いました。
「それはどうも、すまん事じゃった」
吉四六さんはガッカリするどころか、
喜びながら家に帰りました。
さて次の朝、吉四六さんはつくって
貯めておいた、ウシの鼻グリを、町へ
かついで行って、
「ウシの鼻ぐりは、いりませんか?」
町中の荒物屋を回りました。
「これは良いところに来てくれた。
いくつでも置いていってくれ」
昨日、もうけそこなっているので、
どこの荒物屋でも、喜んで仕入れて
くれました。
「さあ、これで、昨日のお客が来て
くれれば、ひともうけ出来るぞ」
荒物屋は、もうけのそろばんを
はじきましたが、ウシの鼻ぐりは、
さっぱり売れません。
もうかったのは、吉四六さんだけでした。
(おしまい)
いつものことですが、
吉四六さん、一人だけ
もうかって良かったですね。
でも、tenは、
吉四六さんのゆかいな商売は、
少し間違えれば、立派な悪徳商法の
お仲間なんじゃないかと、思って
います。
荒物屋さんに、鼻ぐりは、よく売れると、
思いこませるのは、
詐欺 否 催眠商法なんじゃ
ないかと、…。
ウソをついたり、人を騙したり、
その気にさせたり、思いこませたり、
それは、ゆかいなとんち ではないと、
わたしは、思っているのですが、
牛は馬と並んで古くから家畜として、
飼われてきた動物です。
だから何かと馬と比べられますが、
機敏さの点でかなり分が悪いです。
コトワザでも"不利なほうから有利な
方へ鞍替えする"ことを、
「牛を馬に乗り換える(歩みののろい
牛から速い馬に乗り換える)というし、
"何も使わぬヨリは使ったほうがまし"
ということを、「馬に乗るまでは
牛に乗れ」とも言います。
一方、「牛も千里、馬も千里」とも
言います。これは"遅くても速くても
(上手くても下手でも)結局行き着く
ところは同じ“という意味です。
tenは、ダンゼン牛の方に親近感を
抱いていますが、…
皆さまは、どうですか?
今日、ご紹介の土人形は、
小幡の俵牛
(滋賀県) の、郷土玩具です。
俵牛は、米の豊作を願うとともに、
牛の強健を祈るものです。
幸せになるのは、一人だけでなく、
二人、否 みんなが幸せになるように、
願い、祈っていきたいですね。