『 動く城 』
(山口県の民話)
昔々、ある大名に、美しい姫が
いました。
姫が年頃になると、ある立派な
若侍(わかざむらい)が、毎晩の様に
現れて、姫はその若侍に恋する様に
なりました。
姫は若侍に名前や家を尋ねましたが、
若侍は何も答えてくれません。
ある日の事、姫がその事を乳母に
打ち明けると、
「それでは、そのお方の着物のすそに、
長い糸を結んだ針をつけてごらん
なさい。
その糸をたどれば、どこのどなたか、
わかるでしょう」
と、教えてくれました。
姫は乳母の言う通りにして、若侍の
着物のすそに長い糸を結んだ針を
刺しました。
それに気づかなかった若侍が帰った後、
姫がその糸をたどってどこまでも行くと、
糸は中の島の池の中まで続いています。
この中の島の池は、昔から妖怪が
住んでいると言われていました。
「もしや、あのお方は妖怪なのでは」
姫は若侍が妖怪だと思って悲しみ
ましたが、その夜、大名の夢枕に
その若侍が現れて言いました。
「私は、池の主の大ガメです。
姫に心ひかれて、毎夜通って
おりました。
しかし正体を見破られては、どうする
事も出来ません。
お詫びのしるしに、中の島に城を
お築きください。
その城は、きっと難攻不落(なんこう
ふらく)の城となりましょう」
大名が言われた通りに城を作ると、
本当に難攻不落の城となりました。
なぜなら、敵が攻めて来ると城は
島ごと動いてしまうので、敵はどうする
事も出来ないからです。
そんなある年の事、城の中に井戸を
作る事になりました。
井戸掘り職人が堅い岩盤を打ち破って
穴を掘り下げていくと、穴から水では
なく、おびただしい血が吹き出しました。
実はこの城のある島は、あの大がめの
甲羅だったのです。
血が七日七晩吹き出すと、島は
二度と動かなくなってしまったという
事です。
(おしまい)
カメの郷土玩具は、あるだろうと、勝手に、
思いこんでたのですが、意外に、少なく、
[なんでやねん?]と、チョチ
怒ってしまいました。
年柄年中、「鶴は千年、亀は万年」と、
重宝に、お便利に、言われているにも、
かかわらず、また、神社仏閣には、必ずや、
亀池があり、「あっ、カメがいっぱいやー」
などと、お子ちゃまたちが、楽しまれて
います。なのに?郷土の玩具には、初めての
お目見えです。
身近な者なのかも、
しれませんが、大切に
していきたいですね。
今日の郷土玩具は?
張子人形 富士亀
ごたぶんにもれず、富士山です。
中の島ではありませんが、
おめでたいモチーフということで、
不老長寿のシンボルとして、
亀 は、とても、ポピュラーです。
[人間は、いつでもどこでも
調子いい、ケダモノやからな]
鶴は千年、亀は万年生きると言われて
いますが、この亀は、富士山を甲羅に
乗せた「不死(富士)身」の
亀です。若々しいこの亀のように、
いつも、元気にすごしたいものですね。