昨日は、眼科受診(緑内障を患っているのです)のため、都内に出向きました。終わった後は、いつも美術展あるいは映画を観てから帰るのですが、今回は視野検査のため、散瞳薬を目にさしたので、数時間目がかすんで、見づらく、仕方なしに書店に立ち寄ることにしました。最近は、本もネットで取り寄せるので、めったに書店には行きません。2,3時間ゆっくり見て回って、いろいろと興味をそそる本が出ていることを知り、時には書店でゆっくり過ごすことも大切だな、と思った次第です(書店も、今、ネットでの購入、電子書籍の普及などで、苦戦を強いられているようですね)。

 さて、今、関心の強い平安時代の本に限りますと、今、『光る君へ』で注目を浴びている公卿の一人、秋山竜次(この人、イメメン揃いの中にあって一人異彩を放っていますね)演じる藤原実資の『小右記』が何と角川ソフィア文庫、ビギナーズ・クラシックシリーズで昨年の7月に刊行されているのに驚きました。勿論、吉川弘文館の完訳版は16巻もありますから、こちらは簡約版です。それでも、784頁(!)(ちなみに1980円)もあって、文庫としては、かなり分厚く、読み応えがあります。このシリーズを御覧になってことがある方ならご存じのように、現代語訳、訓読文、原文(漢文)の順に並んでいて、その解説がついています。抜粋されているのは、膨大な量の記事の中から、初心者にも面白く、興味深い内容のものを精選したものです。とても編集が行き届いていると感じたのは、年ごとに、実資の年齢の他に、その時の身分や官職、在位している天皇や重要人物の年齢も記載されています。
例えば 確認できる最も古い年次の記事である、貞元二年(九七七)の項の始めには

藤原実資二十歳(従四位上、右中将) 円融天皇十九歳 藤原兼通五十三歳

とあり、編集者もしくは編者、倉本一宏先生の配慮をいたく感じます。

 

小右記 角川ソフィア文庫 : 藤原実資 | HMV&BOOKS online - 9784044007263



 実資は、二十一歳から八十四歳まで何と六十三年間も日記を付けていたのですね(なお、享年は九十歳)。平安時代の政務や儀式などに関する史料として、極めて重要なことは言うまでもありません。平安時代に関心のある方は必携ですし、今『光る君へ』を御覧になっている方で、正確な史実をお知りになりたい方にも役立つことは間違いありません。この貴重な書を手元に置いて読めるように、ハンディ(分厚いですが)かつ求めやすい価格で刊行されたKADOKAWAの関係者に深く感謝します。また編者の倉本先生にも同様に感謝致します。これまで、決して熱心な読者ではなかったのですが、これからは出された著作を意欲的に読むようにします。

どこかで、藤原定家がこの『小右記』を高く評価、愛読していたと読んだ記憶があります。

 なお、僕は、書店では買わず<(_ _)>、電子書籍Kindleで購入しました。本で部屋が占領されないようにするためと、紙の本だと、だらしがなく、部屋を散らかしている僕には、探す無駄な時間を省くためでもあります。なお、藤原行成の日記『権記』も同シリーズで出てているのには、また吃驚でした。こちらも倉本先生が編者で、同様の体裁です。こちらは、260頁と割とアタックしやすいですね。アマゾンのレヴューを見たら、講談社の学術文庫版が先に出ていたそうです。広告文に、「秘事」も記されているとありました。大体見当がつきますが、やはり読みたい気持ちをそそりますね。

日記を読むと、その記事内容や視点などから、人物像も浮き彫りになるのがいいですね。
式子内親王の後見人的存在の吉田経房にも日記『吉記』があり、わずかに内親王について触れていますが、未公開の記載はないのでしょうか。