エッセイ 陽だまりの中で | 七星 光のブログ的観測

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愛猫(ひめ)の旅立ちから一年。今日はひめを偲んで、エッセイを載せてみる事にしました。


陽だまりの中で


 愛猫ラムが虹の橋を渡った後、ずっと心の隙間を埋めてくれた先住猫のひめが、闘病の末に旅立った。加齢で足腰も弱り、トイレで用を足す事も難しく、オムツを使うようになってから間もなくの事だ。お盆の飾り付けをして、普段閉め切っている一階寝室の縁側の雨戸を開け、朝の光をたっぷり取り入れてから、暫しそこで日向ぼっこをさせた。殆ど目も見えなくなっていたひめが、庭先から立ちのぼる夏草の匂いに目を細め、鼻をひくひくさせる姿は、この上なく愛しい。腎不全が進行し、痩せて骨ばった背中をそっと撫でながら、一日おきに水分補給の点滴を打ち、シリンジに移した流動食を飲ませる。艷やかだった柔毛は不規則に毛割れを起こして、見るも痛々しく寝てばかりの毎日だった。体調に変化があってから、あっと言う間に旅立ったラムとは違って、夏の暑さはじわじわと死の気配を連れて来た。猫の1日は猛スピードで過ぎて行く。仕事で留守をしている間に、容態が急変しないとも限らない。後悔をせぬようにと仕事も休みがちになった頃、腎機能と加齢がついに限界を迎えた。ひめを見送った夏は、酷暑が各地に様々な爪痕を残し、強烈な印象を記憶に焼きつけて行った。ひめの旅立ちの後、気が抜けたように、我が家はすっかり寂しくなってしまったが、やがてまた夏が巡り、忙しくお盆の飾り付けを始める頃になると、夏草の匂いに誘われて、ひめが再び縁側に帰って来る気がする。陽だまりの中で、まだ若く健康だったひめの艷やかな柔毛が、深い黄金色に輝くのを見た気がした。 



今は亡きひめ