中学は滋賀県の学校で
一学年に3クラスでした

学校に一卵性の双子の
男の子がいました

苗字は同じで、A君とM君
ほとんど見分けつかないくらい
同じ顔をしていました

彼らは双子というのが理由なのか
3年間同じクラスにはなりませんでした

成績がいいのかもよくわからない
運動ができるのかもよくわからない
目立たなくいつも隅に座っている
2人ともそんな男の子でした

いつもA君M君はふたりで
自転車で通学していました


わたしは3年生でM君と
同じクラスになりました

それまで彼らのどちらとも
同じクラスになりませんでした

わたしは彼らと
話したことはありませんでした



いや、双子のA君とM君と
会話をした人は学校に
誰1人としていませんでした




2人は学校で声を発したことが
一度もありませんでした

先生に音読をするよう言われても
何も声を出しませんでした

表情一つ変えずに
黙ってその場にたたずんでいました



先生は、「A君か、じゃあ次の人」
「M君ね、では隣の〇〇君が読んで」
と、彼らが声を出さないことを
知っていていつも諦めていました

常にうつむきがちの彼は 前髪が
目を覆うように伸びていてつむじが
ずいぶん後ろにあるように見えました




わたしは彼がなぜ声を出さないのか
不思議に思い、彼に近づきました

M君が座っている前の席の椅子に
後ろを向いて座り、声をかけました




なぁ〜朝ごはん何食べた?


M君は表情を変えず
その場からピクリとも動かず
自分の机を見つめていました



その日は収穫はありませんでしたが
私はたまにM君に話しかけました






シャーペン無くした〜
M君知らん?知らんよな〜


あの先生マジうるさいよな〜
今度M君キレてみてや!笑


M君て部活とかやらへんの?
運動嫌いなん?うちはまじで
運動音痴やけど一応してる笑




何度話しかけても
M君が表情を変えることは
一度もありませんでした。





つづく