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マッチングアプリで出会って付き合った彼と、彼の家に行く話や同棲の話をしても、彼はなかなか前に進めようとしない。
私の中にあった目を逸らしたい小さな違和感が、日を追うごとに見過ごせなくなっていった。

彼の同棲できない理由と私の葛藤

私は年齢的にも付き合ってすぐ同棲をしたかった。
でも、彼は「前の妻とのトラウマがあるから」「自分に自信がないから同棲にはまだ踏み切れない」「待たせるのは心苦しい」と言って煮え切らない態度をとり続けた。
どうしたら前に進めるか、何度も話し合いを重ねた。

私はバツイチで失敗した経緯があったから、結婚前に同棲したい気持ちが強かった。そのことを彼に話しても、何かと理由をつけて前向きに考えてくれない。

付き合ってからちょうど半年経った頃。
彼が同棲に少し前向きになったとき、彼が戸建て持ちだから、家を売るか?どこに住むか?の判断をするために、まず家の査定を進めることになった。
3回くらい査定をしたと当時は言っていた。
(もし家に女がいて既婚者だったら家の査定なんてできないだろう)と私は思っていた。

その戸建てを売るよりもそのまま住むほうがもちろん経済的メリットは大きい。査定をした結果、将来のライフプランをすべて計算し、可視化して彼を説得し、その家に一緒に住むことになった。

その流れで、彼のほうから「まず私の両親に挨拶をしたい」と言い出してきた。
私は当然嬉しかったから、すぐに日程調整を始めた。
ただ、日程が決まりかけたとき、彼が体調不良を訴えてきて、挨拶の話は体調が良くなってから、という雰囲気になって流れた。

今思えば、単なるその場しのぎであり、時間稼ぎだった。

彼から別れ話を切り出されるけど

そのあとすぐに、彼から「君を待たせるのは申し訳ないから」「自分に自信がないから」という理由でまた別れを切り出された。
それまでも同じことを2〜3回言われていたから、またその波が来たのだと思った。
私は彼の本心を言葉通りだと受け止めて、彼がどうすれば自信が持てて前に進めるようになるのか真剣に考えたし、一緒にどうしていくべきなのかを本気で何度も、何時間にもわたって話し合った。
その度に彼もちゃんと話し合いに応じて向き合っていた。

その中で、私は同棲を急ぎすぎたのかもしれないと反省もした。
彼が前の人と離婚したと言っていたのが私よりも最近だったから(もちろんこれもでっちあげた嘘だったけど)、彼なりのタイミングがあると自分に言い聞かせて。
彼と何度も話し合って、別れる・別れないの話までするけど、結局は別れない方向に落ち着く。

最終的にどうしたいか聞くと、いつも決まって彼がやっぱり別れたくないと言うから。

家に呼ぶことを回避するための彼の策

私が何度も「家を見せてほしい」「他に女性がいるか分からない」と話している中で、彼が「ビデオ通話でなら家の中を見せれる」と譲歩案を出してきたときがあった。

彼が有給をとった平日の朝。まず玄関から開始され、1人分の靴しかないことを確認。
私は「もういい」と伝えた。

家の様子をこんなかたちで見るなんてそもそも本望ではないし、ビデオ通話で家を見せるなんて状況としておかしすぎる。
それに、ビデオ通話だけだったら何とでもごまかせる。本当に他に女がいないかどうか、これでは分からないから意味がない時間だった。

戸籍謄本を見せないマッチングアプリで出会った彼

ビデオ通話で玄関を見た後、やっぱり腑に落ちない私は「戸籍謄本を見せてほしい」と彼に伝えた。

すると、「マイナンバーを発行してないからすぐに見せることができない」と言われ、年末調整の書面を見せてきた
そこに記載されていた保険金の受取人は女性ではなく、以前聞いていた母親の名前。「だから結婚していない」と言ってきた。

(保険金の受取人が親だからといって、未婚を証明できたことにはならない)そう思った私は、改めて「戸籍謄本を見せて」と彼にお願いした。
これが2年前の夏。付き合ってちょうど一年が経つ頃。
彼は「分かった」と言いつつも、まったく見せてくれる様子がなく秋になった。

それから、彼が「マイナンバーカードを無くした」と言い出した。最近取得したと言っていたのに、そんなことあるのか。
もし本当であれば平日日中に役所に行く必要があるけど、すでに彼の仕事が繁忙期だったから、年内中に戸籍謄本を見せてもらうのは無理な状況だった。

年明けからしばらくして、有給休暇を取って会う約束をしていた日に「今日は平日だから役所やってるよね」と言って、取りに行ってもらうことにした。

そしてその日の午後。
戸籍謄本を取りに行った彼から、びっくりした様子で電話がかかってきた。

「離婚したと思っていたら籍が抜けてなかった。相手が離婚届を出していなかった」
「彼女にSMSメッセージも着信も残したけど、反応がない」

違和感がどんどん膨らんでいく。私は「連絡したSMSと電話履歴のスクショ、送ってくれる?」と電話越しに彼に伝えた。

すると、彼がもごもごしだした。電波の悪いフリをし、急に電話が切れた。少し経ってから返電があって、スクショを送ってもらった。

SMSの送信時間が見えないように隠すような感じで。よく見たら、SMSも電話履歴も、私と電話した後の時間だった。

おかしい点を問い詰めても彼は説明できなくて、まともな話し合いができない。
とりあえず彼女からの返事を1日待って、返事が無かったら彼の親経由で彼女の親に連絡してもらうことにした。

そして次の日、自分の親に連絡してもらった。彼と彼の父親とのLINEのスクショも送ってもらった。LINEは、彼女の親の連絡先を聞く内容。父親からの返事もあった。

(彼が既婚ってことは、私がこれ以上連絡を続けてたら不倫していることになる。訴えられることは避けないと。)私に不倫をさせる彼も彼だし、このまま連絡を続けるのは違うと思った。
「2週間以内に離婚の手続きをして。離婚したことを証明できなかったら終わりにしよう」

偽造した戸籍謄本で離婚を報告される

後日、2週間の期日が近づく頃に彼に連絡したら、「昨日、離婚届出してきた」と返事が来た。
この報告も腑に落ちなかった。本当に離婚届を出したなら、出したときにすぐ報告するのが通常の心理なのではないかと思った。
そして2週間以内と伝えていた期日に、彼とビデオ通話をした。

「除籍」と大きく書かれた戸籍謄本を見せてきた。これが偽造したものだったと後に知ることになる。

私は、一通りの記載内容はさらっとだけ確認し、除籍日が記載されているかを注意深く確認した。
そして彼が「こんな事態になっても、君が自分と付き合い続けたいか聞きたい」と言ってきた。

私はすぐに受け入れる気持ちになんかならなかった。自分が被害者みたいな感じでうろたえて、あわや私が不倫してしまうような状況になって。私への謝罪の気持ちが明確でなかったことに、怒りが込み上げてきた。

長時間話し合って、彼が「別れなくない。戻りたい」と強く言ってきた。
「それなら、ここまできたらもう家に行ってもいいよね」と言ったら、やっぱりそれは無理で。
なんでダメなのか理由を聞くと「ごめん言えない」。

このとき他に言われたことは、
「信じられないと思うから言わない」
「理由を言っても私がまだ付き合い続けたいと思うかどうかは半々」
「家にはこれまで誰も入れていない」
「今後一緒に住むとしてもこの家ではない」

そして、そのままこの電話で別れることになった。

私は怒り心頭だった。数日置いて考えても、やっぱり納得いかなかった。1年半も付き合って、変なクイズみたいなヒントだけ言われ、はっきりとした理由も伝えられずに終わるなんて。

私から彼に再び連絡すると、返事がすぐに来た。

家に呼ばない理由はポルターガイストだった

別れるなら理由だけは知りたいと伝えた。すると、「君が怖がるから君のためにも言えない」「親にも友達にも言っていない」「みんなに悪い影響を与えたくない」と。

話の流れでなんのことか察した。彼に「そういうこと?」と聞くと「そういうこと」って返事された。
彼が家で過ごしていると、何か聞こえたりするらしい。どんな事象があったか教えてもらった。

私と付き合った頃から悩まされてると言う。あいつが家にいるのが俺だって怖いと苛立ちを見せていた。
迫真の演技だった。

彼はもともと難聴の持病があったからメンタルからきてるとは思ったけど、幽霊だと信じているのであればむやみに否定はできない。
状況を改善するために、行動に移してくれるのであれば私もまだ向き合う、と彼に伝えた。
家の浄化のやり方とか、いろいろ調べた。もちろん行動に移してもらった。

そんな最中のゴールデンウイーク。
旅行もいったし、ほぼ毎日会っていた。

ゴールデンウィークが終わった頃、彼から「ポルターガイスト現象がなくなってきてる」「そろそろ次のステップに進んでもいいかも」と言われ、同棲に進むことに。

(やっと同棲できる)ホッとする気持ちと嬉しい気持ちと、ほんの少し、私ももし何か聞こえたらどうしよう、という不安も入り混じりながら準備を進め、引っ越す日を決めた。

そして引っ越し当日。彼の体調がまた悪くなった。

その翌週に彼と会った時、今度はメンタルがやられてしまったと伝えられた。声も弱々しくてまったく発声できていなかった。
(ポルターガイスト現象がとうとうメンタルに表れてしまった)
当時は辻褄があったように思えた。

私は知り合いにお勧めのメンタルクリニックを聞いて、彼に紹介して予約させた。予約当日は豪雨で、メンタルクリニックには行けなかった。

同棲の話をしたら「今は生活を変えたくない」と言われ、実現が遠のいた。
ここになってようやく、(もう彼と一緒にいるのは難しいな、そろそろもう終わりかな…)と思うようになってきた。

気持ちが変わってきた矢先、付き合ってから2年経とうとしていた7月の土曜日の夜中。

彼からの電話をとると、女性の声が聞こえてきた。

ここですべての違和感が一本の線でつながり、事実を知ることになった。