これまで騙されたことは、社会的に真っ当な方法で清算すべきと思って、慰謝料請求をした。
慰謝料請求 示談交渉の始まり
内容証明には、これまでの経緯や私の気持ちを出来るだけ細かく書いた。事実を妻に知らせるためだった。
2回目に会った直後に内容証明が先方に届いて、その翌日、彼が困惑した様子で電話をしてきた。というのも、会って話したときには慰謝料請求の話はしなかったし、「本当は誰と一緒にいたいのか真剣に考えたほうがいい」と伝えていた中で、内容証明が届いたから。
私は困惑してるだろうと思い、電話に応じた。
「内容証明に《誠意を表してほしい》と書いてあったけど、これは慰謝料金額のことであって、自分の気持ちを弁護士経由で回答するということではないよね」と尋ねてきた。
私は「自分の人生をどうしたいかはそんなすぐに答えが出るものではないから、その理解でいる」と答えた。
不倫が発覚してから3週間。
交渉が始まってからも連日、彼から連絡がきていた。
2人で会ったときに私が一気に痩せていたからか、体調を心配してきたり、天候の話をしてきた。
私は、彼がまだ繋がっていたい雰囲気を感じた。
単なる遊びでない不倫の場合、しばらくは妻と私の両方に良い顔をするものらしい。
でも、そのメッセージが私には辛かった。
彼に戻ってきてほしい気持ちと、慰謝料請求をしている現実。
精神的に限界を感じた私は、弁護士を通じて「精神的に限界なので今はそっとしておいてほしい」と彼に伝えてもらった。
慰謝料請求を早々に始めたことで、彼が結論を出す前に、手も足も出ないように外堀を埋めるような形になってしまったとも思った。
彼は慰謝料請求が終わったら、私を選ぼうとするかもしれない、と変な期待もしていた。
占い師に、「彼が何を考えているのか」、「結末はどうなるのか」、毎日のように相談していた。
でも、そうしながらも、(未来のことはわからないし、相手の考えは誰にもわからない。コントロールすることもできない。今考えるべきは今の現実だけ・・・)と必死に自分に言い聞かせた。
感情の波が激しい。
交渉開始から半月くらい経って、強い怒りが湧き起こる日が多くなった。
その怒りが薄れた日に襲ってきたのは、底のない穴に吸い込まれるような深い寂しさ。
孤独感に苛まれて、どうしようもない日もあった。
朝起きた瞬間、胸が痛くなって自分が深く傷ついているのを強く感じた日もあった。
怒り、寂しさ、孤独感、傷心。
これらの感情に日々振り回されていた。
大げさな表現ではなく、毎秒毎秒が本当に辛すぎて、思いつく限りの対処法を試した。やるしかなかった。
その間にも慰謝料の交渉が進んでいった。
発覚直後から、彼は妻にGPSをつけられ、銀行口座も握られていた。
まるで人権がないと思ったが、慰謝料の交渉もすべて妻の言いなりだった。
彼に誠意のある謝罪を示してもらうはずだったが、伝書鳩になり下がっていた。
どこまでもずるい。
彼の不誠実で、傷ついた心がさらにえぐられる
最初に提示された慰謝料は、やはり低い金額だった。
なぜなら、妻の言いなりだから。
彼はもう少し出せると弁護士に話していたけど、妻に確認するといつも金額を下げられていたそう。
金額交渉は、弁護士と最低ラインをあらかじめ合意し、その中で交渉をお任せするスタイルだった。
そんな中、妻から質問があるということで、メールで受けることになった。
本来は彼と弁護士の間でのみ交渉が進むものだが、ひとまず聞くことに。
ふたを開けると、質問の要素はひとつもなく、私が内容証明で伝えた事柄に対して一つずつ漏れなく、反論してきた。
会っていた頻度など事実の否定だったり、これだけ大事にされてなかったのだから既婚者だと気づけたはずで、
「内容証明の主張は否定できるから金額を下げろ」という言い分。
要はお金の話。
そして、妻からの反論の中で、彼に2回目の謝罪を受けた際、「私が彼に何度も何度も復縁を迫った」とあった。
このことを妻に否定すると彼に伝えたところ、それは否定できないという。なぜなら、妻に指示されて彼が私との会話を録音し、妻に聞かせていたから、と。
私の傷ついた心がさらにえぐられたような気分だった。
またもや不誠実なことをされて、強い怒りが爆発した。
不誠実な人間は、どこまでも不誠実だと思い知った。
精神がどうにかなってしまう。どうやってこの怒りを沈めればいいか、まったく見当がつかなかった。
音声を録音することはあり得ることだけど、それを他人に聞かせるのはあまりに非道徳的で、非倫理的。
私との関係は偽物とはいえど、彼の結婚歴4年のうち、私は2年も一緒にいたのだ。
どういう神経をしているのか。私の理解を超えていた。
しかも、「なんで家庭をとるのか」と何度も質問したのは事実だが、勘違いされないように、そして万が一録音されていても問題ないように、「決して復縁を迫っているつもりはない」とはっきり付け加えていた。
人間の受け取り方は様々だから、聞こえようによっては復縁を迫ったと思われるかもしれない。
ただ、こちらの意図としては完全に異なるから否定できるものだった。
謝罪を受けた日、彼が何度も抱きしめてきたのに、そこの録音は聞かせてないのか。
疑問に思って弁護士経由で確認すると、スマホの容量がいっぱいになって録音が途中で切れてしまった、とのこと。
当然、携帯に容量オーバーなんてあり得ない。
自分に都合の良いウソばかり。
このウソを妻は見破れなかったのか、見て見ぬふりをしたのか。
私に気づけたはずと主張するのなら、妻なのだから自分のほうが気づくべきではないかと思った。
翌日、弁護士に思いの丈を長文でぶつけさせて貰った。
傷つきながらも揺らぐ気持ち。事実を暴露したい
それからさらに数週間。
こういうときって、なぜ朝起きた瞬間に強い感情があらわに表出するのだろう。
この頃は、漠然とした嫌な気分を強く感じるようになっていた。
もし私が妻に
「発覚直後にこれまでの写真を消したくない、と言われた」
「何度も抱きしめてきた」
と事実を伝えたら、彼が私のもとに戻ってくる道筋がなくなる気がして、どうすればいいのかまったく考えられなくなっていた。
復縁のルートを残しておくにはどうすればいいか、という考えが離れなかった。
この葛藤を終わらせたくて、(今の気持ちを彼に伝えたい。言いたいことが言えたなら、この気持ちをきっと清算できる)と思い立った。
弁護士に「彼との接見の機会がほしい」と言うと「接見は対応していないのでその場合は解任していただきたい」と断られた。
交渉の最中に接見させてくれる弁護士は普通にいる。
ただ、相手に謝罪を直接してもらうといったケースが一般的のようだけど。
他の弁護士に乗り換えようかと考えた。
弁護士を解任して個別にアプローチしようかとも思った。
ただ、弁護士から「それで向こうが応じる可能性は低い印象を受けている。彼は妻の手中にある」「お勧めしないので一先ず1週間考えてください」と言われた。
それから1日、2日と時間を置くと、彼に伝えたい気持ちは不思議と落ち着いていった。
代わりに、彼に最低な言葉を放たれていたことが次々と頭をよぎった。
既婚だと発覚した時、第一声が「だから何回も別れようって言ったじゃないか」。
発覚した後、「居ても立っても居られない時に会って相手をしてほしい」と言うと「俺の立場も考えてよ」。
謝罪をしているにも関わらず、「こんな状況じゃなければ一緒になろうよってとっくに言ってたよ」。
(どの立場で言ってるんだ。この人、感覚がおかしすぎる)と、今更になって込み上げてきた。
私はこんな人間と一緒にいるべきではない、と吹っ切れた瞬間だった。
最低な言葉を思い出すうちに、1回目に会ったあとに「写真を消したくない」と言われたこと、2回目に会った時に抱きしめられたこと、妻に本当のことを言っていないこと、これらすべての事実を妻に伝えたい衝動に駆られた。
弁護士に相談すると、妻を刺激するとこちらが不貞行為で逆に訴えられかねないとのこと。
事実を言わない代わりに慰謝料をつり上げる交渉材料とするほうが有効活用できると言われた。
私は迷いながらも渋々合意した。
訴訟は絶対に避けなければならない理由があった。
もし訴えられたら民事訴訟歴がついてしまい、今後の転職でバックグラウンドチェックでひっかかってしまうから。
こんな人たちにキャリアまで潰されるのが許されないことは、明白だった。
事実を言いたい気持ちを抱きながらも、間もなく示談交渉が終わった。
金額は、向こうが思ってたよりも稼ぎが低くて、当初弁護士に言われた最低金額よりを下回ってしまい、納得いかなかった。
私の中で(事実を言いたかった)という強い気持ちが残ってしまった。
彼と妻が事実を知らないまま過ごす生活を想像しただけで、到底堪えられない。
その後およそ4カ月間、来る日も来る日も、この葛藤が私を苦しめた。
この葛藤が、何よりも辛かった。
やっぱり言ってやらないと気が済まないと、何度も思った。
今振り返っても、事実を言わなくて良かったかどうかはわからない。
もっと早く示談交渉の中で言っていたら、こんな苦しむことがなかったのは確実。
ただ、暴露したら訴えられたかどうかは、その現実を実際に選ばないとわからない。
当然、どの占い師にも知る由もなかった。
合意書作成中も、琴線に触れる
示談交渉の最後のステップ、合意書の作成。
私の弁護士がなぜか彼に要望を聞いていた。
その際、彼が言ったのが、私と妻の接見禁止。
「接見禁止を盛り込んで安心したい」と彼が言っていたと聞き、私の琴線に触れた。
彼は安心をお金で買った、という感覚だった。
しかも私が仕掛けた慰謝料請求で。不本意で仕方がない。
弁護士に抗議したが、事実を言わないことを交渉材料にした手前、それを盛り込むことを拒否することは出来ない、と。
いずれにしても、接触禁止の条項を盛り込むことは一般的。
友人に相談すると、「世の中お金。お金でしか物事を計れない」「お金のない人から貯金額のほぼ全額を取るのは一番の罰になる、お金がないと心がすさむ」「社会的に勝ったという形をとったほうがいい」と。
信頼している友人の言葉だったから、きっとそれが正しいのだと信じ、半ば勢いで合意を決めた。
彼は4年の結婚歴の中で、2年も私と付き合っていた。妻の立場からすると許せないし離婚してもおかしくないと思ったけど、彼との関係は続けるようで。
私が事実を言ったところで、夫婦の関係が終わるわけでないのだろう。もはや愛がないから。
最後に、合意書に「録音されていない時間帯の会話を聞けば、復縁を迫っていないことは明らかである。よって復縁は迫っていない」と入れてもらった。
これが私に出来た精一杯の攻撃だった。
これで慰謝料請求がすべて終わった。
3か月間の慰謝料請求が終了
7月に発覚してから、交渉が終了したのは10月。
その後も、彼に仕返しをしたい強い気持ちから、戸籍謄本を偽造したことについて、私文書偽造罪の被害届を出したくて警察に相談した。
しかし、偽造しただけでは罪に問えず、さらにそれを用いて金銭被害といった実害を被ったとかでないと警察は動けないとのこと。
あと、偽造した現物も必要、と。本人が偽造を認める発言をした録音では不十分という。
刑事罰の方面でも、諦めざるを得なかった。
彼氏が既婚者だったことで、一生のうちに感じると思っていなかったような苦しみと恨みをどっぷり味わうことになった。
発覚してから丸6カ月経った現在。少し前のひどい心境からはとりあえず脱しているとはいえ、私の心の整理はまだ毎日のように続いている。
これまで、心の支えを求めて様々な占いや心理カウンセラーサービス(心療内科ではない)を利用した。
それぞれがどういったもので、どういう時にどの対処法を取れば良いのかよく知れた。
そして、やはりリアルの友人の言葉がどれほど大きな影響を及ぼすかも分かった。
次の記事では、滅多に経験しないほどの辛い経験をした私が、自分の気持ちをどう整理してきたか、その経験談を記録します。