■あらすじ
人里離れた山奥で主にアライグマや鹿の毛皮猟師として生計を立てて暮らす家族ジョゼフ・メルソー、妻のアン、娘のレネーは貧しく家計のやりくりに苦労していた。そこでジョセフは家族を残してオオカミの追跡を開始する。 アンとレネーはジョセフの長期不在で不安を募らせ、ジョセフなしで生きていこうと奮闘する。 小屋の外で奇妙な音を聞いたアンは、それがジョセフではないかと願うが、重傷を負い倒れていたルーを発見する。 ルーが傷を癒すため動けず長く滞在し、ジョセフが戻らない日々が長引くほど森の中に謎の捕食者がいるという考えがアンの頭を過ぎる。やがてアンとレネーに脅威が迫まる。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*深い森の奥で暮す夫婦ジョー(ジョセフ)とアン、その娘ルネ。3人は大自然の中で狩りを生業としているが、生活は苦しい。今日もアンが獲れた動物の毛皮を町の商店へ持ち込むが、前回分が売れ残ったからと狐やビーバーの買値を下げられる。中には買取不能の獣も居る。高値になるのはミンクやテン、狼は175ドルでクズリは300ドル。店主は「毛皮では充分な稼ぎを得られない。何が1番重要か考えろ」と忠告する。
*アンは商店に貼られていた売家のチラシを眺める。通りにはスクールバスが走っているのが見える。娘は学校には通っておらず、父から狩りの極意を仕込まれる日々だ。町での暮らしに思いを馳せるアン。彼女は帰宅後「200ドルにしかならなくて、食料品は買えなかった」と夫に訴える。毛皮は1年中売れる訳でもない。「コストは倍増してるのに、価格は2年前の1/4よ」「的を絞って、テン用の罠を増やそう。ビーバーの香囊で収入を安定させる」
*その後の食事中の会話で、危険な狼が戻って来たこと知る妻。夫はそのことを、妻には隠していたのだ。娘を自室に追い遣り、妻は夫を咎める。通報して捕獲を依頼するべきだと主張するが、夫は狼を仕留めたがっている。問題は狼だけではなく、このまま冬支度が出来なければ凍死する可能性もある。妻は夫に町の売家のチラシを見せて、移り住むことを提案。決して都会ではない田舎町、学校があり狩りも続けられる場所だ。「食費もないのに家を買うのか?」「ローンを組んで、私が働くわ」しかし夫は「ルネは学校に通うには、遅過ぎるだろう」と言うだけ。
*夜が更けて娘が眠ると、妻は「ここは最高の場所よ。私は貴方を選んだから満足してる。でもルネは選べなかった」と夫に語り掛ける。「学校に通って、数学や男の子に触れるべきよ。狼じゃなくてね」「狼を恐れているのはお前だけだ。学校を出ていないのは俺の弱点か?」「弱さや強さは関係ないわ、こんな生活は時代遅れよ。引き継ぐ世代は居ない」「居なければ作るさ。俺達の人生、俺達の家、誰にも奪えない。お前にも」2人の話は平行線だが、身を寄せ合って眠る。
*夜明け前に気配を察知して、単身狩りの準備をするジョー。ルネと犬のトバは置いていこうとするが、娘が「父さんは8歳で狼を狩ったんでしょ」等と言い募るので父も折れる。母が目を覚ますと、家に居るのはトバだけだ。無線機で父に呼び掛けると「狩りが始まったら娘は家へ帰らせる」と言う。父は暫くは狩りについて伝授しながら進むが、狼に肉薄すると言葉の通りに途中でルネと別れる。娘は強気な態度だったが、1人になると狼の気配に怯える。川で水を汲んでいた母も不穏な気配を感じて駆け出し、結局水を殆ど零してしまう。狼は3人の生活圏に接近している。
*父は銃のスコープに狼の姿を捉えるも、千切れたヒトの手を咥えているのを見て取り、撃ち損ねてしまう。狼の居た場所に辿り着くと、やはり手首が転がっている。そこから血の跡を辿って行くと、木の幹に刻まれた[X]印を発見。何者かが迷わないために、目印として刻んだようだ。次々に見付かるXに導かれ、やがて父は森の奥で、複数の遺体に遭遇。獣に襲われたのとは違う、誰かに殺された女達だ。そこには場違いなチェアも置かれている。犯人はここに腰掛けて、遺体を眺めて楽しんでいるのだろうか。
*帰宅後、食事も摂らずに考え込んでいる父。死体の件は家族には話していない。父の中では犯人は新しい獲物となり、心を奪われている。深夜に罠を準備し、翌日またあの場所へ出向く。母からの無線には「徹夜するかもしれない。連絡が途絶えたら、遠出はせず銃を携帯するように」と指示。「安全な筈よね」と警戒する母。実際には狼とは別の危険も発生しているのに、父はそれを伝えない。
*母と娘が川で洗濯していると、そこに狼が出現。怯える娘を庇いながら、渾身の雄叫びを上げる母。狼が怯んだ隙に、傍に置いていた猟銃を掴んで家へ駆け戻る2人。娘は泣きながら「トバがまだ外に居る、連れて来ないと殺されるよ」と訴える。危険だが名前を呼び掛けながら、銃を構えて犬を探す母。しかし見付かったのは犬の死体だった。家へ戻っても娘にはそれを告げられず「明日、パパと一緒に捜そう」と言う。狼が居るのだから、犬と同様に父も心配だ。母は不安気な娘を「パパは森のどんな動物よりも強いわ、狼も怖くないのよ」と宥める。
*翌日になっても父は戻らず、無線での連絡もない。母と娘は食料調達のため外へ。すると狼の糞の中から指輪が見付かる。ヒトを食べたということだ。母は急いで地域保全局の事務所へ。局員のダニーとルーシーが対応する。「夫が昨日狩りへ出掛けて、無線にも答えず音信不通になっている」と事情を説明すると、先ず[森に定住していること]自体に否定的な反応をされる。「公有地に居住する許可を取っていますか?」「3世代前から夫の土地よ」「連邦政府の土地だ」「我々の管轄外ということです」「捜索願を提出すれば、車で待っている子供の生活環境も調べられますよ」
*狼についても「市街地の近郊ではなく森で発生したのであれば、狼に非はなく住む権利がある」という見解だ。「特殊な狼なの、卑劣なのよ」と訴えても、2人は母の言葉を信じていないように見える。「いずれにしても管轄外なんだ、狼の生息地で何をしろと?ご主人が帰宅したら森を出てください」母はもう「ありがとう」としか言えずに立ち去ろうとするが、ルネのために食べ物を少し分けて貰う。
*帰宅すると「周囲を見回るから」と娘に告げて家を出て、1人でトバを埋める母。獣の気配を察知して発砲するが、仕留めたのは子鹿だった。本来は撃ってはいけないので娘は抵抗感を示すが、今は唯一の食料だ。肉を無駄にしたくない。そして娘は母よりも狩りに詳しい。「パパが皮を剥ぐのをいつも観察してるでしょ。教えてくれる?」道具の使い方や手順を説明する娘。「最初に後ろ足から肋骨まで皮を切り開く。ここで奥まで手を突っ込んで…皮を剥ぐには、この角を下へ強く引っ張るの」無事に子鹿を捌くが、娘は浮かない表情だ。「いつもと同じ鹿肉よ、食べなさい」と母が促す。
*深夜になると、娘が「トバの鳴き声が聞こえた、怪我してる時の声だよ」と言い出す。しかしそれが犬ではないことを、母は知っている。それならば夢でも見たのか、或いは別の動物だろうか。銃を構えつつ野外へ出ると、確かに呻き声のようなものが聞こえる。父かもしれない。危険だが懸命に捜すと、見付かったのは怪我をした見知らぬ男だった。驚きつつ急いで家へと運び、応急処置をする母。
*翌朝になると、意識のなかった男が覚醒。娘は戸惑った様子で「パパは、知らない人を信用するなって言ってた」と言うが、母は「困っている人が居たら助けてあげるの、パパもそうする筈よ」と諭す。足の傷を縫ってやると、次第に男は回復する。男は身分証を持っていないが、ルーと名乗る。こんな場所に居たことを訝しがると「僕はカメラマンで、滝を目指してたんだ」と話す。車が故障して歩くことにしたが、程なく日が落ち気温も下がった。やがて何かに襲われて気を失ったようだ。
*母は地図を示して、ルーを病院へ運ぶことを申し出る。しかし彼は、狼が居るのに外へ出るということに積極的ではない。ソリで運ぼうとしても、痛がり無闇に声を上げるルー。これでは狼に見付かる危険性が上がるだろう。狼に怯える娘も嫌がり、結局運ぶのを諦めて、ルーには夫婦の寝室が宛がわれる。
*その後、母と娘は狼に向けてありったけの罠を準備する。父は狩りに毒を使わないが、今は父は居らず緊急事態だ。毒餌を撒きながら「トバが毒を食べてしまうかもしれない」と心配する娘に、母は「食べないわ」と答える。もう犬は食べられない。狼は火と煙を嫌うと言うので、それも準備する。
*母から見れば地域保全局の態度は冷たく思えたが、彼等の対応は常識的なものだった。特にダニーは、日頃の業務にも熱心に取り組んでいる。熊の目撃情報に駆け付け、スカンクの死体を回収して処理、そして、路肩に放置された車を発見する。それは2日程前にも見掛け、そのままになっている車だ。周辺に所有者の姿はないため、車のナンバーで照会してみる。車があるのは、狼の糞の中から指輪が見付かった場所からも程近い。
*事務所で「車を調べてみる」と言い出すダニー。終業時間まで残り1時間。驚いて「明日にすれば?」と提案する同僚ルーシーに「気になってこのままじゃ眠れない」と答える。彼は衛星電話を掴んで事務所を出る。
*放置車両の傍で、ダニーもまた木に刻まれたX印に気付く。それを辿る内に、秘密の場所を発見。複数の死体を前にして、衛星電話越しにルーシーへ呼び掛ける。同僚からは反応がない。もう退所してしまったのか。彼が右足を踏み出すと、トラバサミに挟まれる。痛みに絶叫し、どうにか逃れようとするが、足掻く内に今度は左腕を別のトラバサミに挟まれてしまう。それは父が標的を仕留めようと準備したものだった。
*翌朝、まだ父は戻らない。母が1人で狼用の罠を確認してみると、狼の姿はなくウサギが捕らえられてるだけ。心細く、涙を流す母。無線機に向かって「ジョー、応答して。力を貸して、独りじゃ無理よ」と訴える。すると何処か遠くない場所から無線機の音が聞こえる。それを頼りに捜すと、やがて父の遺体を発見。獣に襲われたのではなく、頭を撃たれている。誰の仕業か。自分が助けたルーの顔が思い浮かぶ。家へ戻るため、慌てて駆け出す母。
*一方、出勤したルーシーは、昨日ダニーが事務所へ戻らなかったのだと気付いて急いで放置車両の場所へ向かう。名前を呼びクラクションを鳴らすと、銃声が聞こえる。衰弱しているダニーは、声を張り上げるのが難しいのだ。ルーシーが呼び掛け続けて、銃声を頼りに捜すと、やがてダニーを発見。ルーシーは急いで応援を呼ぶ。ダニー周辺の死体が調べられ、父の死体も発見される。
*母は家に帰り着き、窓の外から様子を窺う。娘もルーも眠っているように見えるが、ルーは目覚めていて母の警戒を感じ取る。母が静かに屋内へ、そして娘を起こそうとしていると、ルーが忍び寄り母を突き飛ばし締め上げる。異変に気付いた娘が、泣き叫んでいるのが見える。
*次に母が意識を取り戻すと、酷く痛め付けられている。ルーは自分の持ち物や、痕跡が残るものを燃やしている。「トラックを借りるぞ。誰かが俺の車を見付けるだろうからな。トラックのキーは何処だ?」母は弱々しく、繰り返し娘の名前を呼ぶ。ルーは執拗に鍵の在処を訊く。母は立ち上がることもままならない状態だが、油断しているルーにどうにか反撃。ルネの部屋の扉を開くと、中の有様を見て慟哭する。
*母はその後、無表情になり、反撃に遭い気絶しているルーを吊し上げる。服を脱がせ、娘に教わった手順で皮を剥いでいく。冷静に、手際良く。最後には絶叫して、男の顔の皮を一気に剥ぎ取る。
*ルーが燃やした煙を頼りに、ルーシー達が小屋まで辿り着くと、全身血塗れの母がヒトの顔の皮を投げ寄越す。凄惨な状況に、警官達も直ぐには反応出来ない。まだ息があるが、全身の皮を剥がれたルーを発見した警官も言葉を失う。ルーシーは母の様子から、発見済の死体とは別の悲劇を感じ取る。
■雑感・メモ等
*映画『デストラップ 狼狩り』
*レンタルにて鑑賞
*カナダ製胸糞スリラー
*キービジュアルの時点で[ハンター×狼×サイコパス]てのは情報を開示し過ぎではないか。
*一方でキービジュアルではハンターがメインみたいだけど、実際にはその妻が主人公。ハンター役はデヴォン・サワ、サイコパス役はニック・スタール。
*終盤の展開にはなかなかインパクトがあるけど、そのために割と見え見えの不愉快展開がご用意されているので、当然爽快とは言えない。(具体的な映像はなし。)
*殺人犯はヘッドホンで音楽を聴きながら殺人を楽しんでいたと思われる。母は殺人犯の私物を奪って、同じ曲を聴きながら殺人犯の皮を剥ぎます。
*「冬は100km程北上して別の小屋で生活する」みたいな台詞があるんだけど、より厳しい方へ移動するの?どういう意図なんだろ。
*原題は『Hunter Hunter』で、画面に表示された時にちょっと笑ってしまった。