■あらすじ
父親が起こしてしまった事故で、母親の命と自らも右腕を失ってしまった少女アリス。人間の言葉を話せる装置をつけた愛犬をママと呼び、周囲に心を閉ざした彼女は、ある日森で巨大な黒い立方体を発見する。その中でアリスが見つけたのは不思議なことに彼女自身の筆跡で「彼らを信じないで!」と書かれた一通の手紙。ほどなくして、父親が森で倒れていたという姉弟を連れ帰ってくる。「彼ら」とはこの二人のことなのか?手紙は一体誰が書いたのか?黒い箱の正体は?やがて訪れる恐怖と惨劇。その先でアリスを待ち受ける運命とは?(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*第1章:キューブ/父の起こした交通事故で、右腕と母を失った少女アリス。父に反発し、飼犬にヒトの言葉を再生する装置を着けて[ママ]と呼び日々を過ごしている。白く機械的な義手でリハビリを始めたばかりだが、アリスはそれに乗り気ではなく直ぐに諦めてしまう。
*ある日、アリスは森の中で大きな黒い立方体を見付ける。1辺が自分の身長程度のその物体に触れてみると、一部が凹んで空間が現れる。手を挿し入れてみると中に紙片があるが、それを掴むと空間は消えて凹凸のないキューブに戻る。紙には『彼等を信用しないで』と書かれていて、どうやら自分の筆跡に見える。
*第2章:見知らぬ姉弟/同じ日、父が美しい姉弟を森で見付ける。姉エリカは恋人デヴィッドに殴られたと話し、酷く傷付いている。弟ポールは「話さない」のだとエリカが言う。エリカの説明を聞いて自己紹介し「父のアダムと母のベアトリスよ」と言うアリス。エリカは犬を見詰めて困惑している。エリカの手当てをして、今日のところは2人を泊める事にする父。この家なら防犯完備で二重ロックのため安全だ。
*夜になると窓の外に人影が見える。茂みの向こうに誰かが居たようだ。父を呼ぶともう人影は見えなくなっている。紙片に書かれていた[彼等]とは姉弟の事なのか、外に居る誰かなのか。
*翌朝、父に「念のために2人をもう1日泊めたら?」と提案するアリス。父はエリカを気に入っているようだ。ポールはアリスのリハビリを手伝う。義手で3本の円筒を掴む練習。太い円筒を掴むのは比較的容易だが、細い円筒は難しい。直ぐに諦めてしまうアリスを、ポールが無言で抱き締める。
*その頃、父はエリカの身体に触れていた。それがママの傍だった事に激昂するアリスを「あれはママじゃない」と諭す父。アリスは「ママよ、パパがあの姿に変えてしまったの。私の事もこんな姿に変えた」と義手を突き出す。父は詫びるが、アリスが「謝るならママに」と言うと、それは頑なに拒絶する。「母さんを死なせた」と項垂れる父と「死んでなんかいない」と受け容れられないアリス。
*父とは和解出来ないまま、アリスは森へ出掛ける。警備システムを解除する彼女を、ポールが見詰めている。
*第3章:聞こえてくる声/アリスはママを連れて再び黒い立方体までやって来る。今日の紙片には『黒い時計で4時になったら話す、ヘッドホンで聞いて』と書かれている。[黒い時計]とは、アリスの部屋にあるデジタル時計の事だ。紙片にはメモリーカードも添えられている。
*帰宅して時間を待って、ファイルを再生する。イヤホンから流れてくるのは自分の声だ。声は『パパに「外にデヴィッドが居たから見てきて」と言うのよ。通報させちゃ駄目、いつも通報して失敗する』と言う。
*指示通りに父を外へ追い遣り、キッチンでポールに会う。サンドイッチを作ろうとすると、自分の声が『包丁を持って、ポールを殺す』と告げる。信じ難い内容に動揺するアリス。『エリカが来たら彼女も殺すの。同じ結末を繰り返してきたけど、殺すのは初めてだわ。彼が好きでも殺すのよ』到底実行出来ず、包丁を握ったままで立ち尽くすアリスにポールが黙ってキスをする。アリスはサンドイッチを完成させてポールに差し出す。
*夜になると、エリカは邪魔な犬を玄関から遠ざける。アリスが操作するのを見ていたポールが、警備を解除してデヴィッドを迎え入れる。裸のエリカが父をベッドから誘い出して、家の中を移動していく。エリカを追う父の背後から、デヴィッドが接近して喉を切り裂く。デヴィッドと姉弟は、3人揃ってアリスと父の家を後にする。
*アリスが異変に気付いて部屋から出ると、父が血を流して床に転がっている。嗚咽しながらママを探すと、犬もまた血塗れでもう動かない。アリスは激しく長く泣き続ける。
第4章:長い旅/泣き疲れてそのまま眠ってしまったアリス。朝を迎えて、この家で生きているのは自分だけだ。彼女は黒い立方体へ向かう。しかし今日はもう何のメッセージもないようだ。「大嫌いよ」と叫ぶと、触れても変化のなかったキューブに大きめの凹みが出現する。アリスは身を屈めて、その空間に入り込む。
*森の中でエリカを殴るデヴィッド。それはエリカも了承済の行為で、傍にはポールも居る。少し離れた場所から携帯電話でその様子を撮影するアリス。彼女は立方体に入って、過去へ戻ったのだ。もう1人の自分が居る家に入る訳にはいかず、外から様子を窺う。それに気付いた過去の自分が、まだ生きている父に「茂みの向こうに誰かが居た」と話している。
*翌日、アリスは密かに家の中に入る。ママを部屋に入れた状態でアプリを操作して「アリス、助けて」と音声を出すと、過去の自分がママを探しにやって来る。そこで自分と対面して、部屋に入っているように促す。立方体が未来と繋がっている事を察している過去の自分は、特に抵抗する事もなく聞き入れる。
*アリスは父を再び外へ追い遣ると、キッチンでポールにサンドイッチを作る。そして今度はキスされる前に、躊躇いなくポールの首に包丁を突き立てる。やって来たエリカはその光景を笑って、握ったままだった包丁を奪ってアリスの腹部を刺す。成果なく帰宅した父が、息絶えた未来の娘を見付けて泣き叫ぶ。そこへまだ生きているアリスが現れる。
*アリスは森で見付けた立方体について父に説明する。恐らく一種のタイムマシンだろうと。父としては信じ難い事だが、生きているアリスと死んでしまったアリスが同時に現れたのだ、そう考えるしかない。タイムマシンの仕組みは分からないが、アリスは「自分の義手と同じようなもの」と考えている。上手くは説明出来ないが、強く思う事で動く。
*第5章:3本のシリンダー/アリスは父を連れて黒い立方体までやって来る。夜になると家に何者かが侵入し、父を背後から殴り倒す。父を殴ったのは父自身だ。彼は立方体に入って、過去へ戻ったのだ。まだアリスもポールも生きていて、エリカは姿を消していない。
*警備を解除してリビングで待つ父。手にはパイプを握っている。やって来たデヴィッドはその光景から、計画が露見したのだろうと考える。「父と母をあんたに殺された」と話すデヴィッド。彼の両親は、アリスの右腕と母を奪った交通事故の相手だったのだ。
*デヴィッドは両親への想いや彼等が好きだったものについて話す。旅行・青色・ピザ・犬とトム・ハンクス。デヴィッドの背後からアリスが接近して、ナイフを彼の頭頂部に突き立てる。もう話せなくなったデヴィッドの隣りに座って、アリスは自分の両親が好きなものについて話す。AC/DC・料理・犬と猫・スタートレック・雨上がりの庭の匂いとトム・ハンクス。
*エリカとポールが加担し、デヴィッドがこの家にやって来た理由が分かった。アリスは「あの日に戻ってやり直そう」と父に言う。事故を防ぐのだ。父は一旦は拒否するが、アリスは「エリカとポールはどうするの?放ってはおけない」と説き伏せる。
*白く機械的な義手で、3本の円筒に向かい合うアリス。1番細い円筒ももう掴む事が出来る。父が「集中しろ」と言う。「1日掛かりか、1週間か」「7ヶ月と12日必要よ」「着いたら車のキーを持ち出せ。机の中にある。その部屋で何をする?」「キーを投げ捨てる」
*アリスは1人で黒い立方体までやって来る。今日は触れなくても叫ばなくても、キューブが凹んで空間が現れる。アリスは身を屈めて、その空間に入り込む。
■雑感・メモ等
*映画『黒い箱のアリス』
*レンタルにて鑑賞
*スペイン製のタイムループ系SFサスペンス
*緩々テンポの上に、1つ1つの場面が長い。ループ系としてのインパクトも弱くて物足りない。少年少女は美しく、不思議な家の構造も相俟って雰囲気は良。
*店舗でジャケットを見て[喋る犬]に勢い良く釣られてレンタル。その犬を[ママ]と呼んでいる辺りがまた堪らない。この要素からしてファンタジー寄りかと思ってたけど、寧ろ不穏。
*トム・ハンクスは愛されている。
*犬のママについては詳細描写が少ないから書くのは省いたけど、アリス自身が喋る言葉を設定しておいてそれに合わせて会話していると言う事らしい。だからエリカとの会話は「アリスの右腕はどうしたの?」「その服は私のよ」てな感じで噛み合わない。
*突如森の中に出現するキューブ型のタイムマシン。干渉出来るのは恐らく過去に対してのみ。1人目のアリス・父・2人目のアリスが過去へ戻る。主人公だった最初のアリスは途中で死んで、別の個体と入れ替わる。
*アリスの場合は未来の方の個体が死んでいるけど、父は過去の自分を気絶させただけ?流石に過去の自分を殺したら今の自分に影響ありそうな気が。でも相当本気で殴打してたし、過去の自分を葬っての入れ替わりが可能なのかも。(因みに導入部分にも、同じ父襲撃の場面が流れる。)
*2人目のアリスが過去に戻ったら、計画が成功しても先行きが暗いような。父の場合は可能であっても、アリスには右腕がないから入れ替わりが出来ない。過去を変えたら[右腕がないアリス]も消えてしまうなら良いけれど、過去の父を殴っても未来の父に傷が出来たりはしてない訳で。過酷だ。