BMW 118i 試乗記(その3) | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

思いのほか長くなってしまった118iの試乗記。

良いところとイマイチと思うところを整理して、最後に結論を出したいと思います。

まずは良いと思ったところ。

★「望外に」と失礼な表現をしてしまったエンジン。

BMWのラインナップの中で最も非力な136馬力の直4ターボエンジンは、下から上まで気持ちよく回り、ターボラグもトルクの中抜けも感じさせない優秀なエンジンです。

エントリーグレードであっても「走り」に妥協しないBMWの面目躍如といったところ。

中低速での豊かなトルクによる扱いやすさもさることながら、特筆すべきは低出力であることを微塵も感じさせない高速域での余裕ある走りと安定感。

これは、B・Cセグメントの国産車では絶対に味わえない。今度プリウスでも買おうかという人はぜひ一度BMWにも乗ってみてほしい。

★最廉価グレードを感じさせない質感の高さ。

200万円台からという、ひと昔前のBMWでは考えられなかったような価格帯でも、装備や内装に手を抜くことなく、高い質感を保っているのはさすがとしか言いようがない。

最廉価グレードはまるで「お仕置き」のようにチープな素材や部品を使い、見た目だけでなく使い勝手まで平気で犠牲にしてコストカットしてくる某国産メーカーと対極にあると言っていい。

小さいところでは、自分が持ち込んだiPod(かなり古いやつ)をUSBに繋いだら、センターディスプレイに専用プレーヤーのように表示されて、すべての操作がiDriveやステアスイッチで行えたのには驚きました。

一世代前の蜜柑号では直接iPodのコントロールはできない。うらやましい。ソフトウェアのアップグレードで対応できないかな。

メーターパネル中央のマルチディスプレイも、短期間で全てを使いこなすことはできないほど多機能で、例えばナビで目的地を設定すると次の分岐点までの情報をリアルタイムで表示してくれ、運転中の視線の移動を最小限に抑えてくれる。

iPod接続時は再生中の前後を含め曲名を表示させ、ステアのスイッチで選曲も。これらのことも、全てはドライバーが運転に集中できる環境のため。BMWのクルマ造りの基本思想が根底にあることが窺える。

続いて、いまひとつと感じたところ。

★ブレーキ・エネルギー回生システムの所作

乗り始めてしばらく、この車に合ったブレーキの踏み方(踏み始めるタイミングや強さなど)を探っていたのだけれど、ブレーキの甘さ(前述)とは別に減速フィールに妙な感触が乗ってくるのが気になっていました。

その理由は、メーターディスプレイを見ていたらすぐに判明。

現行世代のBMW車ほぼ全てに搭載されるエネルギー回生システム。

ブレーキをかけた時だけでなく、アクセルを抜いたときにも、従来熱として放出されていた減速エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに蓄電する仕組み。

充電するためにエンジンの動力(オルタネーター作動)を使うのを極力抑え、燃費を稼ぐのに貢献している。

しかし、システム稼働時にエンジンブレーキやフットブレーキによる減速Gとは別に、蓄電のための負荷(G)が、わずかではあるけど頻繁に感じられる。(回生システムのバーグラフの伸びと一致)

自分の操作や意図とは関係なく、前触れなく無遠慮に襲うこのGは、運転のリズムを崩し「意のままに操る」感覚を阻害し、たとえわずかな感触ではあっても僕には耐えられない。

これは結果的にスムーズに止まるためのブレーキの微調整にも影響してしまい、同乗者(パッセンジャー)に「怖い」と言わせてしまったほど。

おそらく、少なくとも僕にとっては「慣れれば・・」という問題ではない。BMWだけでなく、昨今出てくる多くの新車にも搭載されるエネルギー回生システム。

またひとつ、わずか数%の燃費向上のために「電制」によって運転する楽しさがスポイルされてしまうのは極めて残念でなりません。

アイドリングストップのように、オンオフスイッチをつけてもらえないかなあ。

★ちょっと意外だった燃費

今回一週間の借り出し期間中の平均燃費は、12km/l弱といったところでした。走行の内訳(割合)は、高速6・一般道2・ワインディング2、といったところ。

カタログ燃費を知らなかった僕は、実はもうちょっと伸びるのではないかと思っていました。

少し前に乗った320dが実測で16km/l(※ディーゼルです)いったし、以前所有していた320i(2,000cc直4)は、長距離に出ると14km/lを超えていたこともあったので。

ほぼ常時スポーツモードにしていたからかな。・・・と思ってカタログ燃費を確認したらJC08モードで16.6km/lでした。

概ね実燃費=カタログ燃費の7割と考えてよい(16.6×0.7=11.62)ので、ほぼ想定内の数値だった。

カタログ燃費は、若干だけど上級グレードの120i(177PS)のほうが上。エンジンの制御と効率の問題だろうけど。

燃費については、効率で理想とされる1気筒当たり450~500ccの2リッター直4エンジンのほうがむしろ良かったりもします。

ガソリンでも燃費20km/l超を謳う国産車たちは、エンジンのギア比を極端にいじったり、他の要素を犠牲にした軽量化だったりで遮二無二数字(カタログ燃費)を絞り出しているんだろうなと想像します。

★リアハッチの開閉について

後ろのハッチは、3シリーズのようなフットセンサー&自動開閉ではなく、一般的な手動式。

開閉するための内側の取っ手が左右どちらにもに付いているのはありがたい(BMWとしては当然)けど、全開するとハッチがかなり高い位置まで上がってしまう。

国産車であれば、片側にしか取っ手を付けていないクルマも多いけど、背が高くない人でも届きやすいように取っ手にさらに吊り手(ベルト)が下がっていることが多い。

118にはそれがなかったので、背が高いほうではない僕はハッチを閉めるのにちょっと苦労しました。さらに身長が低い家族なら、大げさに言えば踏み台が必要かも。

しかし、このことをわざわざ書かなければいけないということは、ブレーキ・エネルギー回生システムの件を除けば、欠点らしい欠点はほぼ見当たらないということ。


そろそろ、M3遣いとしての結論を。

BMW 118i(style)

エントリーモデルとか、一番安いグレードとか、そんなことを抜きにして、とても良くできたBMWらしいクルマです。

M3以外で久しぶりに、用件もないのに単純に運転のためだけに乗りたいと感じるクルマに出会いました。

操舵の鈍さとか、エネルギー回生システムの感触の気持ち悪さとかを差し引いても余りある運転の楽しさを存分に味わえます。

しかし、BMWは次世代の1シリーズはFFで出すと明言している。

実際にFFで作られた218dに乗ってそのネガ(前に重量が嵩むことによって生じる運転感覚の違い)を体感している僕には、今のところ不安のほうが強い。

そういう意味では、後輪駆動の「駆け抜ける歓び」を体感できる“最後の”1シリーズになるかもしれない。

今まで国産FF車にしか乗ったことがない人にこそ、ぜひ乗ってみてほしいクルマです。

長い試乗記を最後までお読みいただき、ありがとうございました。