電制という宿痾 | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

久しぶりに、クルマのお話です。


先週末、出かけた先で駐車場に停めていた蜜柑号に乗り込み、さあ帰ろうとエンジンをスタートさせた瞬間、いつもと違う、グズるような音とともに、コンソールの画面に次々と警告メッセージが表示された。


○○が感知できません・・・
△△異常です・・・
××が正常に動作していません・・・


で、最終的に出てきたのが、これ。


M3警告表示


エンジンはかかっているけど、アイドリング音がいつもと違う。蜜柑、どうしたんだ?


ともかく、その場でディーラーに連絡して状況を伝え、すぐに入庫できるか確認する。


程なく、入庫OKの返事があって、そのまま15kmほど離れたディーラーに向かうことに。


しかし、蜜柑号はいつものM3ではない。エマージェンシー(緊急)モードに自動的に切り替わっているらしく、踏んでも全くスピードが出ない。


2車線の幹線道路でも、追い越しなんて絶対に無理。以前代車で乗って「カメ」と酷評してしまったトヨタプレミオより、さらに遅い。


体感では、エンジン出力は20%くらいに絞られている感じ。420馬力×20%=84馬力ってとこかな。


ようやく一番近くのディーラーに辿り着き、しばらく診てもらったけれど、すぐには原因がわからないとのこと。


その日は代車を出してもらって(バルコムさん、いつもありがとうございます)、蜜柑号はしばらく緊急入院することに。


ちょうど一週間の入院を経て、今日、蜜柑号が戻ってきました。


すっかり元気に・・・と書きたいところだけど、手当は応急処置のみ。


担当さんの説明によれば、考えられる限りの詳細な調査・点検をしましたが、機械的な故障は発見されませんでした。おそらくは、各種センサー類を繋いでいるカプラー(接続端子)が、何らかの原因で断続し、エラーを返しているものと思われます。


応急処置として、何十もの端子のひとつひとつを再度チェックして繋いでいます、最終的には部品交換しますが、ドイツ本国からの取り寄せになるので、しばらくかかります、とのこと。


説明のために、ボンネットに収められているエンジンのヘッドカバーを外した状態や、電装品のボックスの写真を撮っていてくれた。

M3ヘッドカバーオフ

M3電制box


普段は真っ黒のカバーに覆われているボックスの中には、まるで筋肉の繊維のように数百本のケーブルがぎっしりと収められている。


その中から、故障の原因を探し当て、正確に処理するのは並大抵の作業ではないことは容易に想像できる。



M3に限らず、現代のクルマの多くは、電子制御(電制)の塊と化している。


昔の車なら当たり前だった、アクセルペダルはスロットル(燃料噴射装置)と直接つながってはいないし、ステアリング(ハンドル)も、タイヤと直結してはいない。


人間の操作は、すべて電気信号に置き換えられてコンピュータで処理され、あらかじめセットされたプログラムに従って車の各所を動かしている。


車の基本三要素と呼ばれる、走る(⇒アクセル)、曲がる(⇒ステア)、止まる(⇒ブレーキ)。


現代の車は、そのどれも、コンピュータの制御の助けを借りずに操作することはできない。


M3に装備されている電子制御サスや、電制LSDも、タイヤから入ってくる路面の状況を1/1000秒の世界で演算し、瞬時にサスの硬軟や左右のトルク配分をリアルタイムで変更している。


僕は、峠の隘路をオン・ザ・レールの感覚で気持ちよく駆け抜け、いかにも自分のドライビングテクニックが素晴らしかったかのように錯覚するけど、なんのことはない。


ドライバーに路面の状況もタイヤの踏ん張りも全く意識させることなく、水面下ですべて「電制」が処理し、もしかしたら限界を超えていたかもしれない状況でも、何事もなかったかのようにクルマはすまして、ものすごいスピードで駆け抜けてゆくのだ。


そのかわり、ひとたび今回のように電気系統のトラブルが起きると、機械的には何の故障もなくても、車は無用の長物と化す。


地震や台風などで大規模な災害が発生し、停電が起きて、携帯やスマホもつながらなくなる。そんなとき、高齢者の家庭にある昔ながらの黒電話(ダイヤル式)だけが、唯一、連絡手段として生きていた、という話をよく聞きます。


車を移動手段と考え、1,500kgもの鉄の塊が猛スピードで動くことに伴うリスク(事故)を減らし、より安全に、より快適にという方向を目指せば、これらの「快適」装備は、今後も増えることはあっても、減ることはないのだろう。


昨今のモーターショーの目玉は、自動運転車だという。ヒトは乗っているだけで、クルマが勝手に目的地に運んでくれるそうな。(それならバスやタクシーに乗れば?)


へえー、すごいですね、と他人事のように言ってるヒマはないかもしれない。


いずれすべての新車販売車が自動運転車になる日も、そう遠くはないのだろう。


本当にクルマが好きな人、運転が好きな人たちが、最終的には、より自分の操作がダイレクトに反映される昔のクルマに回帰してゆく。


遅くても、不便でも、快適でなくても。


今は、その気持ちが本当によく解ります。


いずれ僕も、そうなってゆくのかなぁ。