老婆のお返し
一昔前の、旅先のスーパー・マーケットでのことである。
精算を済ませた私は、その足で、品物を詰め替える台へ向かった。 レジでもらったサービス・スタンプは、集めてもしようがないため、 私は、隣にいた小柄な老婆に「これ、差し上げます」と、言った。
そして、品物をかごから袋へ移しにかかる。
・・・と、そのときだった。 紡績工場の機織りのようにパッタン、パッタンと音が聞こえ始めたのは。
私は、思わず、その方角に目をやった。
何と、老婆が一心不乱に、備え付けの透明のビニール袋 (ロール式)を自らの手に巻き付けているではないか。
「そんなに多くのビニール袋を、一体、どうする気なのか」と、 私は、一瞬、訝ったが、それも束の間、そのビニール袋は、 私の買い物かごに、見事、押し込まれていたのである。