悲しみは寄せては還す。魂を。
祈り。それは神にでは無い。では何に祈る。言葉。人。卑しき人。今生まこと愛しき人。
愛しき人の髪を撫でる。艶やかなそれは、今生まこと愛しき命。
その手で僕は、それはただの錯覚ではあるのだけれど、そこに横たわる彼の彼女の髪を撫でたのだ。
平面画の向こう。泥にまみれた階段にもたれる、彼と彼女の髪を。
それは重く、くすんで、ごわごわと、まるで全ての否定を主張しているように「これが人の死に方か」
尊厳も意思も何もかもを、命を。悲しみが、流していった。
現実の僕の手は、愛しき命を撫でている。つややかなこの髪こそが人である。平面画の向こう。手を伸ばす彼女の流す涙の熱が、命であるのだなぁ。
繰り返し襲う体の震え。孤独に怯える魂の震動。呼吸を繰り返すと、心音がやけに響く。
祈り。言葉への祈り。命への祈り。どうかどうかこの夜が明けますように。
震える命を、その手をしっかりと握り。
未だ漂う見えない悲しみと、未だ見えない暁を。東の空の、愛しき命を。想い撫でる髪に。潜む、ほんのすこしの重い感触に怯えながら。