正面から三人の人間が歩いてくる。
ひとりは男で、ひとりは女で、もうひとりはちょっと判断ががつかない。
やがてその三人とすれ違った時に、三人の声を聞き気付く。
男だと思ったひとりは女であって、女だと思ったひとりは男であって、もうひとりは人間ですらなかった。
こんなとき、僕は人知れずとても恥ずかしい気持ちになる。僕はいつも、いろいろなことを知っている、理解していると勘違いしている。それを思い知らされて、たまらない気持ちになる。
そんな日は何もかもが嫌になって、いつもはやらないことをしてみようと思うのだ。そうしてそれは大抵にして失敗に終わり、更に惨めな気持ちになる。
しかし寧ろ、思えば僕は率先して自分を惨めに辱めてやろうと思っているようでもあるし、やはり一方そんな思いなぞしたくはなく思う。つまりはよく分からない。
ほら、また分からない。
世の中には僕の分からないことが多すぎて、ほとほと参る。
自分のことすらよく分からない世界で、僕は地図もコンパスも無いまま、いやそもそも目的地も分からないままでさまよい続けている。そこは砂漠ではなく、熱帯のジャングルだ。水も食べるものも豊富にあるから、飢えて死ぬことはない。しかし出口がない。歩き続けて歩き続けて、とりあえず歩き続けていくしかない。ひとところに留まろうものなら、臭いを嗅ぎつけた獰猛な獣たちや、死角からやってくる小さな毒虫の餌食になってしまう。歩き続けていくしかない。しかし出口がない。出口がない。