三月のメリー・ゴー・ラウンド | Proof of...

Proof of...

祈る神を持たない僕は、ただ言葉の力を信じている。全ての言葉に僕の意味を。

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動くものの気配が消えた部屋。
彼は身動きひとつせず眠っている。恐らく夢さえも見ていないのだろう。微かに漏れる息遣いが、闇と静寂を構成物とした純粋な空間を、より完璧に仕立てている。

しかし、その完璧さの中に、どこか違和感を感じずにはいられない。何ものかの気配。何かを隠すときに生まれる、不安定な感覚。

注意深くその正体を探っていく。何も聞こえない。彼の他には誰もいない。目には見えない。
すると気が付く。〈そこにある闇が回転している〉。そこは、僅かながら、回転を続けている。
彼が。彼の横たわるベッドが。壁掛けの時計が。床の服が。温くなったビールの気泡が。そしてこの部屋自体が。
いや、街そのものが闇の内で廻り続けている。
それはどれもピクリとも動いてはいない。だが、回転している。回転している〈感覚〉がする。
今日と今日の狭間で回る、メリー・ゴー・ラウンド。
真鍮の飾りのオルゴール。
終らないカノン。
どれだけ速く走ろうと、何処にもいけない。
出口がない。
何かがぜんまいを巻き続けている。

ぐるぐる。



直に夜が明ける。スイッチを入れるように唐突に、朝は訪れる。
だが、この街を飲み込んだ螺旋は未だに止まる気配を見せてはいない。