近所の電柱や壁に貼ってある、迷い犬の貼り紙。
紙の上半分には大きな写真が載っていて、その中には物憂げな表情をした犬が写っています。
今年の5月頃から貼られていますが、半年経った今でも剥がされていません。
まだ見つかっていないのか。
剥がされる様子はなく、次第に雨風に曝されてボロボロになっていきます。
結構広範囲にわたって貼られていることから、どうしても見つけ出したいという飼い主の必死さが窺えます。
大学に行く途中で数枚ほど目にしますが、その貼り紙を見る度に悲しい気持ちになります。
もし今も見つからないのであれば、もう飼い主のもとへ戻ってくることは無いでしょう。
にも関わらず、いなくなった飼い犬の情報を求めてあちこちに貼られた紙を見ると…胸が痛みますね。
次第に傷み、皺だらけになったり色褪せていく貼り紙。
写真に写った犬が、どんな色でどんな模様でどんな特徴があったのか。もう判別することも出来ません。
色褪せていくその貼り紙のように、どこかの飼い犬がいなくなったことも、飼い主が必死になって探していたことも、私の記憶から抜け落ちていくでしょう。
しかし、可愛がっていた飼い犬がいなくなった飼い主の悲しみは、風化することはありません。
犬が無事に戻ってくるまでは、その貼り紙が剥がされることもありません。
今日もまた、貼り紙の中の犬は、悲しそうな目で通る人を見つめています。