「中国の周辺国で、中原を脅かしたことのない民族は朝鮮だけである。」
中原とは長い壁で区切られる壁の内側のことだろう。
文明の中心となる平原と言ってもいい。
いかにも男性的な視点からは、そのことがやや寂しくも思えたりするのだろう。
「釈迦が来たれば朝鮮の釈迦にならず釈迦の朝鮮になり、孔子が来たれば朝鮮の孔子にならず孔子の朝鮮になり、なんらかの主義が来たれども朝鮮の主義とならずに主義の朝鮮になろうとする。」
朝鮮が抱える大きな悩みの一つだろう。
事大主義と言ったりもする。
元は小さな国が大きな国につかえることを言ったらしいが、そこから派生して強いものに迎合する意味に使われる。
先の括弧は文一平氏の、後の括弧は申采浩氏の言葉だ。
主体性が強調されるようになったのは、事大主義の反動ではないか。
ただし、主体性の行き過ぎは、文明へのあこがれや真似を遠ざけるので、文明から取り残されるリスクもある。
国として主体性を強調したのは北の方だろう。
アメリカに付いて豊かになったはずの南が、その北にあまり強く出られないのは、精神的な意味ではやや引け目を感じるためではないかと、想像を膨らませている。
うっすらと日本にも被る問題だ。
話は変わる。
ウチの父親はあずきバーが好きだったと思う。
おみやげに持っていったことはないが。
そのあずきバーを作っているのは井村屋だ。
中島伸子さんが井村屋で働き始めたのは、アルバイトとしてだったという。
繁忙期には、自らトラックを運転して、アイスクリームを運んだりもした。
どんな仕事も必要だから回ってきた。
「私がするべき仕事じゃない」
「こんな仕事をするために会社に入ったんじゃない」
と思ったことはないという。
今は井村屋グループの会長をされている。
「幅広い知識を蓄え、気づく力、伝える力、コミュニケーション力を、しっかり磨いて下さい。
制度など目に見える壁だけでなく、人の意識の中にある壁も、まだけっこう大きくあるのが現実です。
そんなときは、壁に扉の絵を描いてみてください。
人生のハンドルは自分しか持てないですし、扉の鍵は自分にしか開けられません。
その覚悟を持って『人生は自分次第』と考えて乗り切っていくと、ものすごく豊かになります」
以上は、「自信がない、と感じる女性たちが意識すべきことは何でしょう」と問われて中島さんが答えたものだ。
自信がない女性のみならず、従属的立場に悩む人に広く当てはまる話だと思う。
少し前の朝日新聞から抜粋した。
参考文献:
小倉紀蔵著「朝鮮思想全史」
2024年3月31日付朝日新聞26面
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