ISIDがSecond Lifeオフィスを設置--商用利用に向けた技術検証、採用活動等をスタート
2007年3月、このような記事を目にしました。


今各種メディアで話題になっている企業レベルでの本格的なビジネスが、
SLで開始されるにはクリアしなければいけない課題がSLには沢山あり、
それは今後のSLの発展にも繋がっていきます。


そしてそのカギを握るのがShinagawa SIMにオフィスを構えた

「ISID 株式会社電通国際情報サービス」 だといっても過言ではありません。

http://slurl.com/secondlife/Shinagawa/126/56/22


今回はISIDの写真左から「cima Loonさん」「Fish Brouwerさん」「pitts Sailingさん」にお話をお伺いしました。



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emo8889 Xeno: 最初にISIDについて教えていただけますか?


cima Loon: 株式会社電通国際情報サービスは、電通グループのシステムインテグレータです。
電通とGeneralElectric社(GE)との合弁会社として、1975年にスタートし、
顧客企業に対して、システム開発やパッケージソフトウェアの販売・導入などの
サービスを提供しています。


金融業・製造業・流通業など、幅広い業種の顧客企業と長年に渡ってお取引させていただき、
多岐にわたる業務知識と卓越したIT能力を組み合わせたサービスを強みとしています。
電通の関連会社であるためマーケティングやウェブ系の製作会社と思われることも多いのですが
例えば金融分野においては、金融機関の決済システムや、インターネットバンキングシステムなど、
基盤となるシステムが得意なシステムインテグレータです。


emo8889 Xeno: 貴社がSecond Lifeに参入したキッカケから
Shinagawa SIMにISIDビルを建てるまでの経緯を教えてください。


cima Loon: Second Lifeでの研究活動を始めた理由は二つあります。
一つは顧客企業がSecond Life参入の検討を行うという局面において、
日本ではシステムインテグレータによるSecond Lifeへの本格参入がないことから、
ISIDとしてシステム面でのお手伝いに備えた検証が必要と判断したこと。


もう一つは、ISID自身がSecond Lifeをどのように活用できるか検討したいと考えたことです。 
社員の中には、すでに去年から個人的にSecond Lifeで活動をしている人が何人か存在しており、
その中のメンバーが中心になっています。


研究活動の拠点として自社ビルを持つ必要があったため、建てるならば本社所在地と同じ
shinagawaにしようと考え、ジップサービスさんにお願いしました。

土地の確保や社屋の建築に関しては、エージェントとしてnabe Spitzさんにご尽力いただいています。
社屋のデザインはノルウェイのMaximilian Milosz氏によるものです。
出会いから仕事の依頼そして納品までSL内で行われ、まさにバーチャル世界での経済活動を体感いたしました。
また、会社説明会で学生さんに無料配布したスーツではkasumi Silveraさんにご協力をお願いしました。
説明会会場でスーツを着た学生さんが一同に会した光景はまさに壮観でした。

emo8889 Xeno: 貴社のプレスリリースにある三項目について質問です。
この三項目について現在までに行った具体的な取り組み、結果、感想を教えてください。


■ アプリケーション間通信における安全性など、「セカンドライフ」をビジネス利用する際の
技術的な課題を抽出しその解決方法を検討する。


cima Loon: 企業がSecond Lifeの情報を活用する場合において、セキュリティの確保が解決すべき課題の
ひとつにあげられます。LindenLabがAPIを公開していますが、その具体的な使用方法などに
関しては情報が不足しているのが実情です。
ISIDが研究を始めてまだ間もなく、手探り状態で活動しなければならない部分も多いのですが、
すでにある一定の成果を得ています。


「クリティカルなシステムを構築するには、更なる検証が必要」

emo8889 Xeno: 具体的にはどのようなセキュリティ問題を認識されていますか?


Fish Brouwer: クリティカルなトランザクションなどをSLから行う場合などに
通信内容を傍受されたり改ざんされる危険があります。
そのため、 外部システムとSLサーバーとの通信などがセキュアに行われる必要があると考えています。
また、SL内においては、 成りすましや妨害行為を排除した形での企業活動が必要と考えています。


emo8889 Xeno: その課題についての解決見通しは?


Fish Brouwer: セキュアに通信をする手段はあるのですが、
クリティカルなシステムを構築するには、更なる検証が必要だと考えています。
成り済ましなどに関しては、グループ化やアバター名を個別にリンデンから取得するなどが可能です。


emo8889 Xeno: それが一定の成果ということですね。


Fish Brouwer: そうですね。会社説明会の際には、登録した人しかビルに入れないように制御をかけて、
妨害行為などを防止する手立てを行いました。
ヒトが集まっていると、それがさらに人を集めてしまうことにはなりましたが、
関係者以外はビルに入ることができませんでした。
結果として、説明会自体はスムーズに行うことができました。


■ 「セカンドライフ」内にISIDオフィスを設置し、企業内の情報共有や、技術的な課題を解決
するための検証スペースとして活用する。


cima Loon: オフィスの中に会議室とラボを作り、そこを拠点として会議や検証を行えるようにしています。
情報共有に関しては、通常の業務では話す機会が少ない社員がSLを通じたネットワークによって
知り合ったりということが起きています。業務外の交流は喫煙所(笑)という例が多かったのですが、
新しい社員交流の形となっていく可能性を感じています。


emo8889 Xeno: 会議や検証をチャットで行うのですか?


cima Loon: 会議に関しては現在のところ、チャットが唯一のコミュニケーション手段ですので
チャットで行いますが、履歴がすべてログとして保存できることはSL内会議の利点と考えています。
近いうちに、3Dボイスを含めたボイス機能が追加されますが、電話会議などとは違った
コミュニケーションの新しい手段として期待できると思います。

emo8889 Xeno: ボイスだとログが残らないデメリットが。


Fish Brouwer: 通常の会議や電話でも、ログそのものを録音することはあまりないので。
3Dで距離感を近づけつつ会議が出来ると、コミュニケーションも円滑に出来るように思います。
電話での通話ですと1対1のコミュニケーションですが
ボイスチャットですと、多対多のコミュニケーションがリアルタイムに行えますし。


emo8889 Xeno: では今後どんどん社員の方がISID社員としてアバターを持つという事もありえる?


cima Loon: 社員がアバターを持つことはもちろんありえると思いますが、
実際に業務で使えるかどうかはセキュリティなどの観点からも検証が必要と思います。


emo8889 Xeno: そのセキュリティーをクリアすると、どんどん企業参入の可能性は増えそうでしょうか?


Fish Brouwer: より高度な使い方が可能になると思います。
現時点ですと、プロモーションの観点での参入が中心ですから
SLからリアルな商取引を実際におこなったりということが考えられると思います。
しかしSLでは明確にサービスレベルが保障されているわけではないので
あまりクリティカルなことは現時点では行えないと思います。


■ 「セカンドライフ」内のISIDオフィスにおいて、新卒者向けのISID会社説明会を開催、 また、
応募希望者とISID社員とのコミュニケーションの機会を設けるなど、新卒採用活動の支援を行う。


cima Loon: 当初2回の開催を考えていたのですが、100名以上のご応募をいただきました。
SIMの収容人数の関係上、1回の参加人数に限りがあったため、急遽4回の開催に変更しました。
最終的には70名弱の学生さんにご参加いただきました。
初めての試みでもあり、いくつかの課題が明確になりましたが、
現実の説明会では味わえない雰囲気を体感してもらえたと思います。




Second Lifeならではの大きな利点として、海外を含む遠隔地からの応募者に対しても、ISIDとの
インタラクティブな情報交換が可能になるということが挙げられます。
実は私、今サンフランシスコのホテルからこのインタビューに参加させていただいています。
今回のインタビューが海外出張と重なってしまったのですが、このように無事に参加させて
いただくことができました。地理的な制約がなくなることによる効果は大きいと思います。


emo8889 Xeno: 会社説明会をSLでした理由は?


pitts Sailing: 2月から全国各地で説明会を開催してきましたが、
遠隔地の方や、海外の大学に通学中の方に対しては、地理的な制約から十分な情報提供ができませんでした。
時期的に採用シーズンのピークということもあり、SL内での企業説明会という、新しいことにチャレンジする
にはちょうどよいタイミングと考えました。


3月SLでの実施を告知した際に真っ先に応募があったのは アメリカ西海岸の学生でした。
メールで「このような情報収集の場をいただき感謝します」と感謝され、嬉しかったですね。


emo8889 Xeno: しかしSLで説明会を実施って凄く思い切った事だと思うのですが。


pitts Sailing: 私もそう思っていました。
そもそも「Second Lifeって何?」という問い合わせが殺到してしまうのではないか、と。
ところが 既に住人となっている学生やその存在をネットで知っていた学生が
100名近く参加希望をしてくれました。その情報感度の高さには驚きましたね。


そしてSLそのものに対する質問は一件もありませんでした。
服の着替え方がわからず、いきなり全裸になる学生も多数いたとの話ですが(笑)


emo8889 Xeno: 社員説明会で見えてきたいくつかの課題とは?


pitts Sailing: もっとも多かった学生側の不満はマシンスペックに関するものでした。
それ以外で申し上げるとSLの世界では、採用活動そのものを実施することはできませんので、
リアルな選考の場への導線が必要となります。

参加してくれた学生の関心を高めリアルな選考に参加してみたい、といかに思わせるか、
その辺に今後の課題があるのかな、と。


そして今回は音声のストリーミング配信とパワーポイントの説明にとどまりましたが
もう少しコンテンツに工夫の余地があるのではないかと考えています。


「3分の2以上の学生が現実の選考に参加してくれました」
emo8889 Xeno: 今回の新卒説明会に出席した人からの実際の応募はどれくらいの人が?


pitts Sailing: 説明会に参加してくれた学生の中で、
3分の2以上の学生が現実の選考に参加してくれました。
人数的には申し上げられないのですが、先日見事内定となった学生も複数名います。


emo8889 Xeno: それは素晴らしいですね!!!


pitts Sailing: はい 私も驚きました。
参加者の反応もさることながら、今の学生は自らの情報を横に繋げていきます。所謂、口コミ効果です。
ブログやSNS、就職の掲示板などで面白かった、斬新だった等の感想が、
爆発的に展開していくさまには驚きました。
ISIDは斬新な会社という企業イメージが、学生間に広がっていく効果を体感することができましたし、
面接の控え室などでも、その話で盛り上がることが多かったですね。


emo8889 Xeno: 次に貴社が今後Second Lifeで実行する、もしくは実行したいと思っている事を教えてください。


cima Loon: 参入の目的の一つである技術的な検証活動を今後も継続して行う予定です。
その検証活動の結果を通じて、顧客企業がSecond Lifeを活用する際に課題解決のお役に立てればと考えています。


emo8889 Xeno: 技術的な検証活動って具体的には?


Fish Brouwer: 先ほどのセキュリティ関連で、どこまでできるかという点については、
更に突き詰めていきたいと思います。
つまりはAPIの利用法を更に探求するということになりますね。


emo8889 Xeno: ISIDオフィスでの活動は?


Fish Brouwer: このオフィスに関しては継続的に情報発信の場として活用していきたいと思います。
今後も採用活動に関わること等は継続していくことを考えています。
また、ISIDをご存知ない方にもISIDを理解して頂くよい機会になると思います。


emo8889 Xeno: その検証活動の結果を通じて、顧客企業がSecond Lifeを活用する際にとありますが
これは参入支援ともとれますがいかがですか?


Fish Brouwer: 参入支援といっても、単に建物を建てたりという場合には

ISIDではお手伝いすることはないと思います。
今後、よりクリティカルな利用方法が現実的となってきた際に、
システム面での支援を行えるようしていきたいと考えています。


emo8889 Xeno: 現在沢山の参入支援活動をおこなっている企業や個人の方がいらっしゃいますが
これらと競合ではないということですね?


Fish Brouwer: そうですね。ISIDとは競合にはならないと思います。


「SLのライブ感覚が、今までにないコミュニケーションの形態を作っている」

emo8889 Xeno: 実際にプレイしてみた、Second Lifeの感想を教えてください。


cima Loon: 要求されるハードウェアの性能が高い、操作が難しいなど、
始める時の壁が高いということが言われています。
ただ操作に関しては、プレイしてみれば実際にはそれほど戸惑うことはないのではないかと思います。


現実世界でイラストレータをやっているある知人にSecond Lifeを紹介したのですが、
その人はどちらかというとPCの操作は苦手な部類に入るにも関わらず、
今では自分でギャラリーを建てて作品を展示するなどの活動を活発に行っています。


また、会社説明会のところでも触れましたが、リアルタイム性・インタラクティブ性による
ライブ感覚が、今までにないコミュニケーションの形態を作っていると思います。
チャットのログは残りますが、その時の周囲の雰囲気や感じたことは再現できません。
揮発性の体験ではありますが、だからこそ参加することの喜びや楽しさがあるのだと思います。


emo8889 Xeno: 参加することの喜びや楽しさとは?


cima Loon: 特にイベントに限らず、SLの中で体験することに言えるのではないかと思います。
たまたま、道ですれ違った人と交わす会話とか、気まぐれでテレポートした場所の光景とか
その時々でしか体感できないことがあると思っています。


emo8889 Xeno: プレイして感じられてる問題点などはセキュリティ面以外にありますでしょうか?


cima Loon: 企業が恒常的に活動することを想定すると、いわゆるダウンタイムが多いと思います。
このインタビューの前にもありましたが、機能拡張などのためのメンテナンスなど
アクセスできない時間がどうしても存在する、という点でしょうか。


Fish Brouwer: 他には法的な課題や税務面でクリアでないことなどでしょうか。
Lindenとユーザーの間は取り決めがありますが、ユーザー間の取り決めに関して
Lindenが絡んでくることはありません。つまり、法的根拠は逆に不明確ということになります。
また、SL内での収益に関しては現在課税のスキームはなく、
経済規模が拡大していく中で課税の問題も議論されていますが、まだ明確な答えがが出ていません。


emo8889 Xeno:最後にSecond Lifeをプレイしている方にメッセージをお願いします。


cima Loon: ISIDは企業としてマジメな研究活動も行っていますが、同時にSecond Lifeの中の住人でもあるという
スタンスでSL内の活動を行っていきたいと考えています。
ギャラリーやショップなど、一般のSL住人のみなさんにも楽しんでいただける要素も作っています。
ぜひ一度ISIDのオフィスを訪れてみてください。
今後も、試行錯誤しながら楽しい要素が追加できればと考えています。




学生さん向けに関しては、SLで伝えられることはまだまだあると思います。
調査会社のガートナーは、インターネットなどのIT環境を小さいころから当たり前のこととして
育った世代を、「デジタルネイティブ」と称しています。
新卒採用説明会の感想の広がり方などは、まさに「デジタルネイティブ」特有のものと言えます。
そのような新しい世代とのコミュニケーション形態の一つとして、SLを活用できるかもしれません。


pitts Sailing: 昨今 社内SNSを導入する企業が増えていると聞きました。
このセカンドライフも社内活性化のための一つのツールになればよいなと考えています。
楽しく上下間、部署間を越えて情報交換できる場があればいいですよね。
また、ISIDの社屋の隣にお洒落なバーがあります。そちらで店長をしていますので、ぜひお気軽に遊びに
来てください。SLの世界を一緒に盛り上げていきましょう!


emo8889 Xeno: ありがとうございました!


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本格的なビジネスがSLで発生するにはクリアしなければいけない課題が沢山あり、
その問題解決の難しさを実感する事ができました。


ISIDという大企業がSLに参入し、その課題に立ち向かってくれる事で、
我々一般ユーザーが新しいコンテンツを体験する事が可能になり、
SLの世界はさらに広がる可能性を秘めています。


そして採用活動を実施し成功させ、SLの可能性を見事に示してくれた事も見逃せない事実で、
今後はもっともっとSL内で企業活動が活発になり、我々ユーザーを楽しませてくれるでしょう!