「降りないのか」
何も言わないマヤ
真澄は開閉ボタンを押す
無言のまま、マヤは真澄から視線を外さない
真澄は、マヤを見れない
目的階で、マヤを見ずにエレベーターを降り
出迎えの秘書に人払いをして執務室に入る
執務机に座り、やっと正面に立つマヤを見る
「それで?」
「それでじゃありません
お昼、、、一緒に食べようって約束したじゃないですか」
「約束などしていない」
机に両肘をつき、指を組み合わせる
指に唇が当たるようにして、じっと見つめる
こうして向き合うこともなくなる
遠くからでもいい
ずっと君を見ている
「約束じゃなくても、ご褒美って!
私が里美くんと写真撮られたからですか!
私は里美くんとは」
真澄がフッと笑ったので、マヤは言葉を失う
すっと立ち上がり、マヤに近づく
「君は気付いていたんだろ?
俺が、、、君の母親を死に追いやった償いで紫の薔薇を贈っていたことを」
「違う!」
ショックを受けつつもマヤは全身で否定する
「紫の薔薇は、その前から!
どうしてですか
どうしていつも私を傷つけることを言うんですか」
真澄の胸を両手で叩く
「幸せになるんだ。
俺の、、、」
俺のマヤ
「俺は、いつも君を傷つける」
無表情だった真澄が、一変
マヤの両手を握り
熱い眼差しでマヤに目線に合わせるように屈む
「幸せになるんだ
それが、俺の願いだ」
喉が枯れそうだ
どうしてこんなに苦しいのか
「里美と行くんだ」
衝撃を受けて、固まるマヤに告げる
「愛してる
君を愛してる」
「俺は、君だけを愛している
生涯、君だけを想っている」
速水さんの優しい目
この目、、、この目に恋した
「俺と一緒にいても、
俺では君を、、、、幸せにできない」
「どうして、、、そんな」
「今までもそうだ
1番大切に想っている君を俺は傷つける
俺は幸せになんてなれない
こんな俺の人生に君を巻き込みたくないんだ」
「そんな、、」
「幸せになるんだ」
「いや、、、私、、、
速水さんが好き
速水さんと一緒にいたい」
「だめだ、俺と一緒にいない方がいい
俺では、、、
それでも生涯君を愛してる」
「だったら!」
「だめだ。
俺では、、、、」
マヤの手を離す
離したくはない
このまま、離さず
しがらみのない場所へ一緒に
逃げれるものなら、どこか誰も知らない土地で
2人でやり直したい
「キスしてください、
、、、最後に、キスしてください」
魂が抜けたようなマヤの口から出た言葉だった
もう誰ともキスなんてしない
里美とのハプニングみたいなキスを最後にしたくない
生涯最後のキス
速水さんと一緒にいられないなら、
もう誰も愛したりできないから
「キスし、、て」
マヤが倒れる勢いで真澄はマヤにキスをする
後ろに取れないように左腕で抱き
右手でマヤの後頭部を引き寄せる
愛してる
何よりも愛してる
お願い、時間よ止まって!
時間よ止まってくれ!