「君は水城君のところだったな」

真澄はカードケースを胸ポケットから出し
階数ボタンの下にかざし、22階のボタンを押す

大都ビルは、エレベーターにもセキュリティーがかかっていて、権限にないフロアのボタンが押せないようになっている。
エレベーターで下ボタンを押せば、IDカードをかざさなければ1Fへ運ばれる。

「あ」マヤは足元に屈む
真澄のポケットから落ちたのはポイントカード

それを拾い、自分の手の中にあるポイントカードを見つめる

「今日でポイント30個ですね」
真澄はそれを受け取りながら「いや、、、」とマヤを見ずに答える。

「ポイントは、もう貯めない」

「どうしてですか?」

エレベーターが停止し、扉が開く

「ここが水城君のいるフロアだ
正面に受付がある」とマヤに降りることを促す

「どうしてですか?」
マヤが言う

「どうしてって、水城君がいるフロアだ」

「そんなこと聞いてません」
涙目がボロボロと床へ落ちる



会計の度にポイントカードを出す真澄に
マヤはある日聞いてみた。

「速水さんってお昼は会社で食べるんですか?」

「いや、、、会食がなければ、、昼飯は適当だな」

「適当って?」

「腹はあまり減らない」

「お腹がすかない?え?
どこか身体が悪いんですか?」

真澄は一瞬止まり、笑う。
「そうだな、どこか悪いところがあるのかもな
君みたいにきちんと腹が減るほど健康じゃない」

「なんですか、それ」
頬を膨らませて、横を向く

速水さんのこの笑顔が好き


次の日もポイントで無料になるランチをネタに話をした

「ランチ食べに来れるんですか?」

「なんだ、来ちゃいけないのか
それとも君が食べたいのか?」

「なんですか、それ!
残念でしたー私は賄いがあるから
ポイントなんて貯めなくていいんですよーだ」

「そうか、てっきり欲しいのかと思った
だが、、、そうだな、それなら
一緒に食べてくれるとありがたい」

「なんでそうなるんですか」

「昼飯に興味が湧かないからな
誰かと一緒なら食べる」

「だからってなんで私が一緒にランチ食べるんですか」嬉しいから、恥ずかしくてこんなことを言ってしまう。

「せっかく、30回も通うご褒美だ」

「ご褒美?」

「そうだ、この俺が30回も通うんだ
君と食事ができるご褒美ぐらいあってもいいだろ」

「全然意味がわかりません」

フッと笑う真澄が好きだ。

「あ!それなら食べるがドルチェつけてください。
ドルチェは有料です」

「有料でもなんでも構わんが
甘いものは苦手なんだ」

「速水さんが食べるんじゃないです
私が食べるんで」

「なんでそうなるんだ」

「ご褒美です」

声を出して笑う真澄が好きだ。


ある日は、真澄から話し出した。
「ポイントを貯めるのは、なかなか
いいものだな」

「でしょ」嬉しそうに笑うマヤが愛しい

「こんなに楽しみな昼飯は初めてだ」

「、、、はぁー、速水さん、、」深いため息
「毎日お昼もちゃんと食べて下さい
モーニングとお夕飯だけって、わんこじゃないんだから」

一緒に笑う彼女が愛しい。

「夕飯も、別に。
接待があれば相手に合わせて食うが
酒だけあれば、、、」

しまった、、、

「速水さん!」

怒る彼女が愛しい。