「お疲れ様でしたー」
バイトを終え、カフェを出ると
車道の車がクラクションで知らせる。
「里美くん」
「マヤちゃん乗って」
助手席のドアを運転から少しだけ開け
マヤが断ろうとかがみ込む
「あの、この前も言ったけど私、、」
「里美茂さんと北島マヤさんですよね」
後ろからシャッター音と記者が迫ってきた。
慌てたマヤの手をひき、車に乗せると里美は車を出した。
「記者に感謝する日が来るとは思わなかった」
ウインクする里美は、マヤが付き合っていた頃の里美だった。
「あの!里美くん、わたし!」
キッパリとマヤが断る姿勢をみせると
ちょうど信号で停まった里美がマヤにキスをした
不意打ちだった
真っ赤になったマヤが可愛い
この子とやり直そう、
あの時、人伝に聞いた彼女の言葉
事務所に言われるままに渡米し
がむしゃらに俳優として、頑張ってきた。
何人もの女性と付き合いマヤのことを忘れようとしたけど、忘れられなかった。
純粋で、不器用、舞台にかける情熱
溢れる才能
「あなたはいつも誰と私を比べてるの!?
私を見て!私を愛して!」
数ヶ月も付き合うと同じ事を言い出す女性たち
紅天女の試演がある
彼女への気持ちに蹴りをつけなければ
前に進めない、
どんな女性と出会っても同じ事の繰り返しだ
だから、帰国した。
そしてマヤの紅天女を観てしまった。
彼女の愛が手に入るなら、
自分はなんでも出来るだろう
魂の片割れ、その人のためなら我が身も
神をも捨て、捧げる愛
蹴りをつける、昇華させる?
バカな
彼女のために自分は生まれてきた
そう気づいてしまった。
「こっ、こ、、困ります!」
「困ればいい」悪戯っ子のようにニカっと笑う
「里美さん、わたし本当に、、」
「着いたよ、さあ、行こう」
着いたところは、劇場だった
胸ポケットから2枚のチケットを取り出す里美
「え?!そのチケット!
チケット取れたんですか!
私、この舞台すっごく観たくて」
「俺は、マヤちゃんと観たくて」
食い気味に里美はいい、ウインクする
舞台の幕が降り、他の観客はもういない
マヤの意識は戻ってこない。
ブツブツ言うマヤの横顔
突然、堰を切ったように舞台のことを身振り手振りを交えて話し出すマヤ
可愛いな
溢れる才能、、天才だ
昔の自分なら嫉妬しただろう
俺なんか足元にも及ばない
でも、もう自分は子供じゃない
彼女を支え、共に歩くのは俺だ
興奮が冷めないマヤを連れ、食事に行き
滞在中のホテルのバーで隣り合わせで座る
どうしてこうなっちゃうんだろう、、、
里美くんにちゃんと伝えなきゃ
私は速水さんが好き
グラスに入った酒を煽り
正面の夜景を見る、ガラスにうつるマヤは手元を見ている
「マヤちゃん、この前言ってた好きな人
、、、それは恋じゃないよ」
そんな事ないっと下を見たまま首を振るマヤ
「、、今は色々あって会えないけど
私をずっと見ててくれる。
私の魂の片割れ
私は信じてるから
里美君、あの、、、わたしなんかを好きって言ってくれて、、でも」
「好きだよ」
顔を上げると、体ごとマヤに向き合う里美がいる
「ごめんなさい、
私、、、本当にその人じゃないとダメなの」
「じゃぁ、今日のデートの記事が
そろそろネットニュースで流れるから、
それで、その彼が動かなかったら、俺と付き合って。
ね、、」
ふわりとマヤをハグする
余りに自然で、抵抗ができない。
その1時間後、里美の言う通り
ネットニュースが流れた
『紅天女、北島マヤ
里美茂が魂の片割れだった
車チューと抱擁、ハリウッドと日本、
距離を超えて育まれた愛!
ずっとあなたが好きだった』
3枚の写真
車でのキス
食事中、愉しそうな2人の様子
ホテルにバーでの抱擁