真誕2022-1
「マヤちゃん、ここでバイトしてるって聞いて」
里美は、チラリと店内っを見渡し、真澄に気づく
里美は、自ら真澄の席の近くに座り
マヤにオーダーした後、真澄の元へ向かった。
「お久しぶりです。速水社長」
「久しぶりだな、
帰国してるとは知らなかった。」
「速水社長は、総帥になられるそうで、
おめでとうございます」
「ありがとう、、、」
「もう、大都の社長でなくなるなら
いや、総帥というお立場になられるのであれば、自らマヤちゃんに付き纏わなくても、、」
「別に付き纏っているわけではない。
、、、何が言いたい」
あからさまな里美の態度に苛立つ
「俺は、、、俺達はあの頃、子供だった」
他の客のオーダーを通し、帰った客の席で片付けをするマヤを見ながら言葉をつなげる。
「紅天女の試演を見ました。
もう、彼女も子供じゃない。
もちろん、俺も。
速水社長、あなたが彼女を当時どう見ていたのか、
今、彼女を女優として、紅天女として手に入れたいのか、それ以上なのか、俺は知りませんが」
「あゝそうだ、知る必要もないだろうな」
カップを口に運ぶ真澄は抑揚のない声で里美の話を切る。
「俺は、もう一度彼女を自分のものにしたら、もう二度と手を離すつもりはありません」
「そうか、好きにしたらいい」
いつも通りの時間に真澄は席を立ち会計へ向かう。
「ごちそうさま」
「660円です、、、あ!
もうすぐポイント30個ですね」
「あゝ、そうだな」
「あ、、? あの、、もし良かったら、」
ポイントカードをしまいながらマヤを見ると
何か言いたげにモジモジしている。
「なんだ、、」
「マヤちゃーーーーん、4番さんのー」
店長に呼ばれ、マヤが振り返ると真澄は店を出て行くところだった。
「速水さん!
、、、
行ってらっしゃい」
真澄は目を伏せ、少し微笑んだ。
紫織の敵意がマヤに向かい
屋敷の自室に火を放ち、入水自殺を起こすほどの狂気から、紫織への責任を取るため再び紫織との結婚を決意した。
そして再びマヤの気持ちを踏み躙った。
そう、この俺がマヤに想いを告げれるわけがない。
諦めが悪いな
いつもと同じ会社に向かう道、10月だと言うのに、冷たい風が抜ける。
「おはようございます。」
「水城君、朝から呼びたててすまない。」
同じビルではあるが、今は水城は真澄の秘書ではなく大都芸能の次期社長として別のフロアで仕事をしている。
秘書が2人の前に紅茶を運んできた。
「紅茶か、、水城君の指示かな」
「ええ」
「何もかもお見通しというわけだ」
決して嫌味も苛立ちもない口調の真澄に水城は微笑む
「いい加減、進展があってもよろしいのではございませんか?」
「進展など、、ない」
「真澄様」
また拗らせている上司に辟易する。
「マヤちゃんから昨日相談がありまして」
向かいの席でタブレットを見たままの真澄に水城は続ける。
「彼女達のアパートの取り壊しが決まったそうですわ、それで、とりあえず」
言葉を切るが、真澄は業務上の資料から目を離さない。
面倒臭い人ね、全く。
「ウチに来ることになりました」
「ウチ?」流石に目線を水城に向ける真澄
「ええ、私の自宅にしばらく住まわせます」
「それは、、、、何よりもガードが硬いな
そうか、それで段ボール、、、」
「段ボールがどうかなさいまして?」
「いや、なんでもない」
2人は、友人の様に話し、次第に事業の引き継ぎに入った。