「ご用は何ですか?あなた達とは何年も前に絶縁したはずです。」
「麗!久しぶり会いに来てくれたのにそんな言い方!」マヤが麗に抗議する。
「いいのよ、マヤさん
私達家族は、少し複雑なの。
そう、、、、少し、少しね」
悲しそうな弥生の言葉にマヤは同情した。
「麗、ずっとお前に会いたかったのよ。
この前の紅天女の試演を観たわ
マヤちゃんの演技は勿論だけど、お前の演技を見て
ここまでになったお前に感動した事を伝えたかっただけなの」
「おばあさま」
「ここってお店?」
麗の肘を引っ張りマヤが室内をキョロキョロと見る。連れてこられたのは、会員制のレストランで看板もなく、メニューもなかった。
ハジメがマヤとの会話を楽しみ、
その会話に笑う弥生
少しだけ硬さが抜けていく麗
賑やかな食事になった。
「あーー美味しかった!お腹いっぱい!
ご馳走さまでした。」素直なマヤの礼に弥生、ハジメ、麗が微笑んだ。
「わ!3人とも、さすが家族!一緒の顔してる!」
「家族っか」
食後、アパートまで送って貰い
お布団を並べて敷いているマヤに麗がポツリ呟いた。
「マヤ、、、言ってなくてごめん」
麗がマヤに初めて家族の話をした。
麗が生まれた青木家は、普通の家族ではなく
旧財閥の末裔で、麗が物心ついた頃に両親は別々のパートナーとそれぞれ外国で暮らしていた。
とはいえ、両親は確かに麗に愛情を注いでくれた。
6歳上の兄と青木家の屋敷で祖母と暮らし、
祖母も兄も麗を可愛がってくれた。
「青木家の影響力は、恐ろしいんだ。
自分が望む望まないに関わらず、その力で周囲を幸せにも不幸にもする。わたしはそれが怖かったんだ」
麗が小学生の頃、学校の演劇鑑賞会で見た芝居に心を奪われて
学園祭の劇に自分も出たいと言った。
まだ子供だった麗は、無邪気だった。
「ねぇ、おばあさま!今度ね、学園祭の劇のオーディションがあるの。麗、受けてみたいって先生に言ったら、すごく喜んで下さったの」今日の出来事を嬉しそうに話す。
「まぁ麗、素敵ね。
何のお芝居なのかしら、麗はどの役がやりたいの?」
「あのね、おばあさま!」嬉々として話す孫娘
「子供が学園祭の役をやりたいって言っただけなんだ。わたしは、子供で、自分の影響力を知らなかった」拳を握り下を向く麗
「オーディションに受かって、稽古も順調、クラスメイト以外の仲間もできた、そう思ってた」
学園祭、喝采の中で幕が降り
興奮が冷めきらず、迎えの車に乗ろうとした時
男の子が麗の足元に頭を擦りつけ懇願して来た。
「お願いです、僕、、、なんでもしますから
父の会社を潰さないで下さい!お願いします。お願いします」
運転手が男の子を掴み「君!無礼だろ!下がりたまえ!」と大声を上げる。
「お願いします!お願いします!」
泣き叫ぶ男の子に呆然としている麗
学校の先生が数名走り寄り、麗と男の子の間に壁のように立ちはだかった。
「先生、何ですか?あの子何を言ってるんですか?
ちょっと待って、あの子、、、わたしはあの子と話します!いや、ちょっと、、いやーーー」
わたしは知らなかったんだ。
その役をやりたいと私が口にした時
その劇は、わたしのためのものに変えられたんだ。
私の体格に合う相手役
私が気に入りそうな演出
大人は汚い。
子供の劇、ただそれだけのために
わたしのライバルを消すため
何の落ち度もない、むしろわたしよりその役に合う生徒を排除したんだ。
屋敷に戻り、おばあさまに聞いた。
「何をしたの?あの男の子、、、会社を潰さないでってどう言うこと?ねぇ!おばあさま!!!
どういうこと!」
おばあさまは、いつもの穏やかな口調で
「麗が1番よ、今日の演技とても素敵だったわ」
「そんなのどうでもいい!あの男の子に何をしたの?!おばあさま!」
「おばあさまも知らないわ。困った子ねぇ、、」近くにいる使用人に弥生が何かを囁く。
麗は頭を弥生の膝に預けなき叫び、弥生は優しく麗の頭を撫でる。