マヤは眠り続けた。
速水の屋敷では、マヤの退院準備に余念がない。
1階の客間をマヤの介護がしやすいように改装し、真澄の書斎を隣室に移した。
元の書斎とそれに続く寝室に比べれば、狭いその部屋に執務机を置き、真澄には小さめのベットを入れた。部屋の中央にベビーベット
ベビーベットの上で小さな白いクマたちが
オルゴールの音と共にまわりだすのを待っている。
退院したマヤが速水の屋敷に到着した。
ストレッチャーで運ばれるマヤを家政婦頭の芳乃に抱かれた真一が迎える。
真一は、ただ芳乃に抱かれているだけだった。
真澄が帰宅すると時間を置かずに水城が屋敷を訪れた。
水城が真一をあやしながら、マヤの寝室に入ると
真澄が眠るマヤにゆっくりと覆いかぶさり優しくキスをしていた。
「俺が王子様だったら、マヤは目覚めくれたんだろうがな、、
俺はゲジゲジの仕事虫だから
親父に呼ばれているって?」
そう言いながら、水城に抱かれる真一に向けて手を伸ばした。
真一は、それに応え体ごと真澄に手を伸ばす。真澄は真一を抱き上げると自分の顔より高く掲げて、真一の額を自分の額に押し当てた。
「この王子様は、、、まずはヨダレを拭かないとな」真一は、嬉しそうに額をすりすりと擦り合わせせる。
水城は部屋を出て、英介の待つ奥の座敷に向かった。
数日前、水城は、英介から大と芸能の社長になる事を打診されていた。
真澄が大都芸能から株式会社大都の総裁になることは、紫織との婚約直後に決まっていたことだった。
紫織の治療がすすみ、婚約解消となったのは真一が産まれる数日前のことだったが、真澄の総裁就任はそのままに2ヶ月後の取締役会の承認、株主総会へと進んでいた。
今しがた見た真澄と真一の様子、そして、マヤ本来の屈託のない笑顔が浮かぶ、水城の心は決まっていた。
「大変ありがたいお話ですが、わたくし、、
今後も真澄様のサポートをさせて頂きたうと思っております。」
英介は、声を荒げることも優しい言葉をかけることもなく、じっと水城を見据える。
「真澄が鷹宮と婚約を解消する前から
他方から報告は聞いていた。まさか真澄がこれほどの賭けにでるとはな、、、いや、賭けではない。
勝算がなければこんなことは出来ぬ、、なぁ
それも、、、愛する女を手に入れるため、真澄は儂が生涯かけてできなかった事をこの短期間にやってのけた、
女のために、、、だ。、、、だが」
座敷の漆塗りの文箱から茶封筒を出し、水城に向ける。
水城は、封筒から書類を出し驚愕する。