何度さすっても
何度呼んでも
祖母は目を開けてくれない。














私は椅子に座り
深い溜め息を吐いた。
















一点を見つめてボォ~っとしていた。




チラッと視点を変え
時計を見ると時刻は深夜1時。



そしてまた
深い溜め息を吐いた。












と、私はハッ!とした。





立ち上がり
母に


『ちょっと仕事の方に電話してくる。まだ繋がると思うから…』



母は頷き
私は携帯を使えるエリアまで向かった。

















携帯を開いて
勤め先のメモリを開くが…
携帯を打つ指が異様に震えていた。


通話ボタンを押し
コールが鳴る。



私の心臓の音がバクバク鳴っているのが
外にも聞こえそうなぐらい高鳴っていた。















『ありがとうございます。こちら、きた…『あ!お疲れ様です、魚住です…』



私は何かに焦っているように
店長が言い終わる前に名乗った。




『ぉお!魚ちゃん、どないしたんこんな時間に…』



『あの…今祖母が急変して…救急車で運ばれたんですが……』




私は…
声が凄い震えていて…
今にも流れそうなほど
目に一杯涙を溜めていた。







『それで…きょ、今日が…山場だと言われまして…明日申し訳ないですが…お休みを…』


『ほんまか…ん~まぁ解った。』



『すみません…』



『魚ちゃん、しっかりな?』



『はい…』












そして電話を切り
再び病室に戻った。













祖母は…
まだ意識がないまま
眠っていた…




そうして
救急車は到着し
父と母は付き添い
私と姉は家に残った。











とりあえず
家の電気などを消して外に出る用意を済ませて
私と姉は遅れてタクシーを呼び
病院に向かった。


















病院に着いて急いで病室に向かう。











エレベーターが降りて来るのが物凄く遅く感じて…
私は眉間に皺を寄せながら
エレベーターが降りて来るのを見つめていた。













そして
祖母が入院している部屋の階まで行き
急ぎ足で病室に向かった。













祖母は意識がなく
ただ、ベッドの上に寝ていた。










私と姉は状況がよく解らなく…
ただただ祖母を見つめていると
母がいきなり涙を流した。



















『今日が山場らしい…』


















きょ、今日が…
山場…?


















私の頭では整理しきれなく
ただ私の中の時間だけが止まった。


















祖母は…
ただ…目を瞑っていて…














今日が山場なんだと……
受け止めたくなかったが…
その現実を目の前にして…
私と姉は…
泣きながら…
祖母をさすり…
『ばぁちゃん!』とひたすら叫んだ…
















しかし…
祖母は目を開ける気配は全くない…














この時はもはや…
あの彼のメールのことなど
頭の中のどこにもなかった…




彼から来たメールを見ると……















【好きだから付き合って欲しい】













そう…
記されていた…
















私には…
マンネリしているとはいえ
付き合ってる彼氏が居るわけで…














断るのが人一倍苦手な私で…
それに…
まだ一度も会った事の無い人と付き合うとか……………














とにかく…
メールの返事は返さないといけないわけで…


しかし…
【付き合ってる人がいるから…】
その一言が打てなく
メール作成画面のまま
一文字も打てずに眉間に皺を寄せていた。





そうしていると…
下の部屋から母が
『ちょっと降りてきて!』と叫んだ。



何かあったのか?と思いながら
下に降りると…
一緒に住んでいた祖母が苦しんでいた。




祖母は…
2006年8月から大阪に連れてきて一緒に住んでいた。
それまで
祖母一人で宮崎に住んでいて
母が…医者から祖母は肺癌だと知らされたのは…
2006年5月のこと…。
それも…もう末期で2007年越せるか解らないと言われていた。



そこで
急遽、私の両親が祖母を迎えに行ったのだ。















せめて…
残りの時間を家族と過ごす為に…
祖母は……
いつも気を張っていたけど…
本当に寂しそうにしていたから…




だから
一緒に暮らし始めた時は
何より幸せそうで…
一緒に暮らし始めてから毎日…
『もう幸せ過ぎて…』ってよく言っていた。















その祖母が急に苦しみだして
急いで救急車を呼んだ。


母は手慣れていて
救急車に連絡した後
直ぐ様、入院の準備をした。










私は…
どうすればいいのか解らず…
ただただ…
祖母の手をぎゅっと握り締めていた。