「最悪の場合、ストマになります」


W看護師は、「ムンテラ(医師からの病状説明)の際に医師から告げられる、この言葉が壊滅的なダメージを患者さんに与えているんです」

と、真っ直ぐな眼差しで、でも弱々しい声で言った。


「私達ナースから、ベテランのDr.達に〝こういうムンテラをしないで〟だなんて絶対に言えません。その一言で鬱になり、自死している現状を、Dr.達は知らないんです。Dr.、忙し過ぎるから…」


Emmaさん、元気になったら、どうか私達の代わりに、外科の先生方に伝えてください。言い方を変えて下さいって。」


想像もしていなかった。

私の主治医は、初診の時、

「大辻さん‼️これでとんかつ食べられるようになるよ爆笑

と、言ってくれた。

だから、オペまでの1ヶ月近い待機中、私は、

「とんかつ〜、とんかつ〜‼️」

それをモチベーションに、テンション高く絶食を乗り切った。



しかし、ほとんどの患者さんにとって、オストメイトになることは、「最悪なこと」なのだ…。

そんな、他のオストメイトの気持ちを1ミクロも理解してあげてなかった自分を恥じた。


Dr.がそう言わねらばならない背景はよーく分かる。

ストマを造設する患者さんは8割以上が60歳以上だから、ほとんどが〝大腸がん〟に対してストマを造設することになるわけである。

大腸がんだと診断されたら、ムンテラの内容は大変な情報量になる。(中山祐次郎先生に教わった手順↩️)



①大腸がんのステージング

→Stage 4の場合、残された時間は約半年。

②化学療法

→治療に用いれば、3年半近い延命は期待できるが、抗がん剤の副作用で1ヶ月の半分は、苦しく寝たきり状態になる

③放射線療法の副作用のあれこれ

④手術は骨盤底をいじるから、合併症として便失禁や尿失禁、性機能障害が起こる。

⑤遺産や会社経営など責任ある立場の人は、はっきりとした余命を知りたがる。

⑤ストーマはなるべく一時的になるよう善処するが、永久ストマになる可能性がある。


アップアップアップ

もう、これいっぺんに聞いたら、患者さん、飽和状態である。消化し切れなくて当然である。


Dr.は、その人の命を預かっている以上、起こり得るネガティブな情報は、全て伝えなくてはならない。

個人情報保護法だけでなく、今の社会全体が、モラハラ・パワハラ・ドクハラetc…とハラスメントがもはや流行だらけなだけに、なおさら、慎重に言葉を選ばないといけない。かなり医療者側にもきつい負担がある。


この話を、鹿児島大学の同級生で外科医になった二人に聞いたら、

あ、やべー。俺、それ言っちゃってるわ。話の流れの中で…」


と教えてくれた。

「ってかさ、癌の話があまりベビー過ぎて、ストマの話まで、患者さん、頭回んないのよ」


実際そうなのだろう。

20分と決められた外来の枠で、全部を話切るのはかなりの技術が必要だし、話が最後、人工肛門のトピックに飛んでいる時には、患者さんの耳には、何億万光年彼方から聞こえてくる〝やまびこ〟みたいな感覚なのではないかと思う。

(遠い目をしている患者さんのイメージ図)


そこで、唯一頭に焼き付けられしまった、


「最悪の場合、ストーマになります」


というinformation。

ただでさえ大きな病気を抱えるハメになったのに、最悪な日常が待っている、と思ったら、人生に希望を持て!

だなんて安易に誰が言えようか。


私は、癌患者ではないので、がん患者さんの気持ちがわかるか?と言われたら、わからない。

私は自分が経験した病気の苦しみしかわからない。

けれど、オストメイトの気持ちは理解できる。


オストメイトにとって、〝最悪なこと〟は〝死ぬこと〟である。


我々オストメイトは、少しでも長く口から食べ、社会や育児に復帰し、1分でも生きている時間を享受するために、うんち袋をお腹に作ってもらったのだ。


オストメイトになるのは絶望する為ではない。

希望を持つ為に、生きる為に、その運命を背負ったのだ。



講演会があるたびに、私は必ずこの、W看護師から預かったメッセージをお伝えしている。


どこかで一人ぼっちで苦しんでいるオストメイトの方が、明日に希望を持てる契機になることを信じてキラキラ


(追伸:とはいえ、オストメイトになると、辛い事、我慢しなくちゃいけない事、できなくなってしまう事も沢山ある。それぞれの悩みは多岐に渡るので、私が経験した範囲で、ブログ内で一つずつ掘り下げて行く予定です😊!みんなで乗り越えれば怖くないラブラブ


Emma拝