2012-11-12のクローズアップ現代をたまたま見ました。糖尿病を手術で治すという番組でしたが、糖尿病を患う方が見たら「勘違い」するなあと思ったので一応書きます。

医療で使われる「治療」という言葉に問題があり、厳密には「調節」です。

骨折した骨を医療技術により接合し、その後は患者さんの自然治癒力で骨折を治します。治すのは「人」であり「自然治癒力」であります。医療は「補助」に過ぎません。この構図が医療の原則となります。医療技術や薬剤により自然治癒力を発揮できる状態へ導くことが本筋です。この視点で自分の受ける医療を見ればその意味が理解できるでしょう。

2型の糖尿病は、血糖を処理できなくなるほどの高カロリーを続けた結果、膵臓が疲弊して自らのインスリン分泌が出せなくなってしまう状態。休憩無く全力疾走し続けた馬が走れなくなるのは当然です。はっきり言ってしまいますが、

手術で糖尿病は治りません。

まずやるべきは、一にも二にも生活習慣の改善であり、この前提が無い限り糖尿病克服への扉は開きません。腹腔鏡でいかにも安全確実に糖尿病が治るような錯覚を視聴者に与えてはいけません。


テレビで紹介された方法は、胃の殆どを切り取って1/10にすると同時に小腸を切除します。未消化物が小腸へ流入することによりGLP-1というホルモン分泌が盛んとなり、膵臓からインスリン分泌を促し、血糖を下げるという事を目的としています。従いまして、膵臓がインスリンを出せるという条件が必要ですが、この点には触れていません。全ての人に当てはまると思い込まないようにしましょう。

アメリカでも盛んに実施されていると言われていますが、アメリカ人の肥満とは不思議の国のアリスに出てくる太った双子(トゥイードル・ディーとトゥイードル・ダム)をもっと膨らませたレベルを指します。
$田中佳先生のブログ
胃にバンドを締めて膨らませなくする方法もテレビでは見たことが有りますが、胃の1/10切除は過激と思います。取ってしまえば取り返しが付かないからです。

インタビュー映像で脱水になるから1日2リットルの水を飲むように指導されますが、胃が無いので飲めないと嘆いていました。夏の猛暑はどう乗り切るのか? あっという間に熱中症で危険になります。春先~初夏に手術を受けるのは危険だと思います。あと、胃と腸が無くなると未消化物が一気に流れていくので消化できず下痢となります(ダンピング症候群)。これは種々の症状を出しますが、副交感神経支配の腸が刺激されるので、血圧低下や徐脈(脈拍低下)を一時的に招きます。食べ方を工夫し、身体がその環境に慣れるまで待つしか有りません。


この手術は 糖尿病を治すのでは無く、強制的ダイエットです。


HbA1cが下がって糖尿病が治ったと言う勘違いの無いようにして下さい。医療では目的の数値さえ下がれば「治った」と言ってしまうからです。もし、また食べられるようになれば、元の木阿弥となるのは当然です。

この手術による代償も少なくはありませんので、徹底的な生活管理を試みてから手術を検討して欲しいものです。


参照:◆ 糖尿病の真実を知りましょう