年末年始の大掃除をまだ行っている。
三が日のある日、久しぶりに右こめかみの頭痛を自覚し、右首から肩へ痛みが走る。
こんな時は目の周りを温めるに限る。

しかし、

外来を訪れる頭痛の患者さんの殆どは冷やしています。
温めるのだ というと驚くのだが、こっちが驚きます。
頭痛の原理を皆さんは知らないのだということにやっと気づいたのでブログへ。

ただ頭痛に関して全て書くと大変なことになるので、ここでは脳に病気が無いという前提で、日頃気になる点を述べます。


痛みに対して冷やすのは「炎症」を起こしている場合のみです。
日常的に遭遇する炎症は、打ち身や捻挫で痛くて腫れた状態かと。
いわゆる、腫熱痛です ~ 赤く 腫れて 熱を持って 痛い
この状態は発生する余分な熱を取ってあげると気持ちが良いしいいですね。
車のエンジンがオーバーヒートしないようにラジエターで冷却する感じ。
先発投手が肩を冷やすのは使いすぎて炎症を起こしている肩の熱を取る。
痛みに対して冷やすのは急性期のみです。
それをごちゃ混ぜにしてはいけません。


さて、頭の痛みを感じる部分は大まかに3つです。
その3つとは、筋肉、神経、血管です。
それぞれ、筋肉痛、神経痛、血管痛になり、
さらには、筋緊張性頭痛、後頭神経痛(三叉神経痛)、片頭痛となります。


一番多いのが筋肉の痛みである筋緊張性頭痛です。
多くの原因は疲れ目でこめかみ痛肩凝り・首凝りで後頭部痛です。

パソコンに向かい続けるシステムエンジニアや設計士、一日中同じ格好を強いられる電話のオペレーターや事務作業の方は動かずちゃんと筋肉を使いませんので、首や肩の筋肉の血流不全を起こして筋肉の質が落ちてしまい、カチカチとなる凝りの人が多いです。

パソコンを使い続ける方は疲れ目も起こり易く、更に老眼が入り始める頃で自覚が無い(自覚したくない)方はこめかみ痛が多いです。目から30cmほどの近い場所を凝視しますので視力は0.5もあれば充分なのに、コンタクトや眼鏡の矯正視力を1.2にしていれば疲れて当たり前ですし、老眼に気づかず見えすぎている状態も同様です。

この状態に対しては、筋肉の血流低下が痛みの原因です。
筋肉への血流を上げれば解決します。
・筋肉を動かす(ネコみたいに伸びる、腕を回す、揉む、など)
● 目の周りを温める(おしぼりをチンして目に乗せる×数回)
・お茶の湯気に痛い方の目を当ててみる(ちょっと変な人になる)
・風呂に入る(岩盤浴に行く)
・肩を揉んで貰う(できればプロに)
● 適切な視力に合わせる(しばらく遠くを見る)
・食事をする(飲酒する)
但し、メラメラ火傷に注意
業務中ならば、できる事をする

温めて気持ちが良かったり、風呂に入って改善するならば、ほぼ間違いなく筋緊張性頭痛です。
血流を落とす「冷やす」行為は逆効果です。
やる事をやってから、どうしてもダメなら鎮痛剤に手を出すのも、まあ、仕方ないかなとは思います。


神経痛は神経そのものの痛みなので、鋭い痛みが走る感じです。肘を打って小指がビビーンと痛痺れることがありますが、あれが神経痛です。椎間板ヘルニアの痛みも挟まった神経の痛みなので鋭い痛みがビシビシ来ますね。
後頭神経痛は肩凝り・首凝りに合併することが殆どですので、筋緊張性頭痛とセットとなります。目の裏に痛みがビーンと走る感じが多いようです。肩凝り・首凝りがあるならば、首や肩を温めることで一緒に改善する事が多いです。ひどくなると後頭神経が過敏になってしまっていると改善に時間がかかるので、辛ければ鎮痛剤もやむ無しかなと思います。

三叉神経痛は顔面の痛みです。顔面の神経は表情を作る為の筋肉を動かす「顔面神経」と、知覚を司る「三叉神経」に役割が別れています。三叉神経痛は特殊なので此処では触れません。本当の三叉神経痛を診断できる医師は少ないのでご注意を。


外来でも「片頭痛です」という方が多く、頭痛=片頭痛とされているようです。しかし、本物の血管痛である片頭痛は、頭痛の中でもかなり少ないです。痛みとしてもかなりの強さで、時には激烈です。また、片頭痛には片頭痛専用薬しか効きませんので、市販の鎮痛剤で改善したら片頭痛では無いと言っても過言ではありません。

痛みの原因は頭皮の血管(動脈)が広がってしまい、血管に張り付いている神経が引き延ばされるために起こります。ですから、拍動と共に血管が広がり、その度に痛むので「拍動痛」と表現されます。飲酒後の二日酔の頭痛はこれです。ですから、筋緊張性頭痛対策で行うような血管が広がるような事をすると悪化します。

ちょっと乱暴ですが、入浴して改善したら筋緊張性頭痛、悪化したら片頭痛というのは一つの目安にはなります。時々、筋緊張性頭痛+片頭痛の方もおられるのでややこしいですが、どうしても改善しなければ医療機関への受診をしましょう。