その昔、
ディーラーの営業を
やっていた頃の話。

来店されるお客様は、
子供連れが多いので、
子供達が遊ぶスペースを作ろうと、
営業みんなで準備していた時のこと。

そのスペースには
カーペットを敷いて、
その上で遊べるようにしたんだけど、
靴を脱いでもらうように
張り紙をしようということになった。



私が張り紙を書いた。

「土足厳禁」

それを見た
ある女性営業が言った。

「大関さん、
 『くつをぬいでね』って、
 書いたらどうでしょう?
 その方が子供達がわかりやすいし、
 楽しい感じでいいと思います」

それを聞いて、はっ!とした。

私は、
その張り紙を書きながら、

おらおら、ガキども、
靴で上がって汚すんじゃねぇよ!
きちんとルール守れよな!


そんな気持ちでいた。
めっちゃ上から目線だ。



けれど、
私に提案した女性営業は、
子供と同じ目線になるように、
しゃがむ心で考えたのだろう。

顔から火が
出るんじゃないかってほど
恥ずかしかった。

瞬時に彼女の
素晴らしさに打ちのめされた。
それと同時に、自分の小ささを感じて、
胸がぎゅーっと苦しくなった。

平気な顔をして、
あ、そうだよね♪
なぁんて返していたけど。



私は、黒字で書いた
「土足厳禁」の紙を捨てて、
パステルカラーのペンを取り、
新しい紙に「くつをぬいでね」と書いた。

書いていたら楽しくなって、
文字の周りに花を描いてみた。
それはそれは可愛らしくて
楽しい張り紙ができた。

ぜ、全然違う、「土足厳禁」とは(笑)

素敵過ぎる.。゚+..。゚+.
自分が靴を脱ぎたくなっちゃうぜ。




突然この出来事を思い出した。



小せぇくせに偉そうな、
いや、小せぇからこそ偉そうな、
腰に手を当てて仁王立ちし、
上から見下ろし、
圧力で相手を
ねじ伏せようとする自分。

それとは逆に、

子供の顔をのぞき込むように、
小さくしゃがんで、
同じ目線でただ伝える、
たとえば「おやつ食べよう」って伝える、

それと同じように
「靴を脱ごう」って伝える彼女。
豊かな心。



今日、ふと思った。

今も自分は、
仁王立ちしていないだろうか、
上から見下ろしていないだろうか、

対子供でなくても、
相手が誰であろうとも、

彼女が見せてくれた
そんな素晴らしい在り方が、
果たしてできているだろうか…

で、できてないことよくある(爆)

こと、娘のアンナに対しては、
最上級の仁王立ち…

他の人にだって、
言葉こそ丁寧にはしているものの、
心は仁王立ちの上から目線の気持ちで、
天女のようなお面をかぶって
もっともらしいこと言いながら、

実はコントロールしようと
してるんじゃないかしら…

そんなことない!
って言えない自分。

思い出されたその出来事は、
襟を正し、姿勢を正し、
自分の在り方を省みる
チャンスを与えてくれた。

それが思い出されたのは、
きっと、大切な気持ちを
忘れかけていたからじゃないかしら。

仁王立ちになる自分が
いけないんじゃない。

そういう自分に気付いて、
なりたい自分をふたたび選んでいく。

それだけ。

自分を責めていない自分に気付き、
とてもうれしかった。



しゃがむということ、
ちょっと忘れてたな。

弱い犬ほど吠えるっていうけど、
小せぇ私ほど仁王立ちする。

そこでナウシカが言う。

「怯えていただけだなんだよね」

ハイ…
と私がうなずく。

立派そうに見せなくたって、
みんな立派なんだ。
それぞれの人生で
立派にやってるんだ。

自分を正当化しようと
すればするほど、
人生はぎくしゃくする。

すべてはただ起こってるんだもの。



今日も世界はまぁるい。