「emitさん、どうぞー」
「失礼しまーす」
あれ?
「どうぞおかけください。よろしくお願いします」
この声は。
さっきのエコー検査の時の人か。
30代前半くらいの若い先生だった。
前回の院長先生じゃないのか。少し残念。
「emitさん、手術はいつにしましょうか?」
エコー検査の結果を話すかと思ったので、これまた意表をつかれた。
とりあえず、手術日を決めてからの方が計画が立てやすいのだろう。
「なるべく早い方がいいです。最短だといつになりますか?」
「早くて年明け、最短は1月上旬ですね~」
「じゃあ1月上旬でお願いします」
「わかりました。最短だとこの週とかいかがでしょうか?」
「問題ないです」
「じゃあこの日にしましょうか。1日前に入院ということで」
「はい、よろしくお願いします!」
あっさりと手術日が決まった。
これで予定が立てやすくなるし、ひと安心。
「あと今日この後の予定ですが、リュープリン2回目でしたよね」
「はい」
「2回目の接種と手術日も決まったので、肺機能検査と心電図もとりましょう」
「わかりました」
「お願いしますー」
エコーの結果について話したくてうずうずしていた私が切り出す。
「先生、リュープリンすごいですね~。筋腫小さくなってましたね!」
嬉しいあまり少し興奮気味に。
すると。
「え? そうでしたっけ?」
え?
そうでしたっけ?……って?
私も「違うのかな?」と自信がなくなってしまい口ごもる。
「前回99.9だったのが94.4になってたので…恐らく…」
「ああ、そうでしたか、ね…? そ、そうですね!」
タハハ…と若先生が笑う。
アハハ…と私もとりあえず笑ってみせた。
なんだかこの先生……。
ちょっと不安だなぁ……。
データをちゃんと見てくれてない?
いろんな人を見てて疲れてるのかもしれないけど。
でも……。
それくらいはちゃんと把握しておいて欲しかった。
さっき決めた手術日も本当に1月でよかったんだろうか……?
前回コミュニケーションは大事だと学んだばかりだ。
心配な事があるなら私から聞けばいい。
「先生」
「はい?」
「リュープリンを打てるのが最大6回だと聞いていて、4週間おきに1回打っていくと……」
私はスケジュール手帳を取り出して、
「この日が6回目になるようですが」
「ほうほう」
おお、ちゃんと調べてあるんですね~と先生は興味深そうにのぞき込む。
「私の希望は置いといて、先生的には本当はこの日を待って手術をした方がいいと思いますか? 先生の意見を聞かせてください」
「そうですね~」
うーんと先生が考え込む。
「正直、1月はちょっと早いかなーと思います」
「それ最初に聞きたかったなー」
……とは言えず、心の中で突っ込んだ。
初めての手術で何がベストなのかもわからないシロートだから、知識ある先生の言葉がなによりも参考になるんです。
まぁ、患者の希望を優先してくれたんだろうけど。
「じゃあ1月じゃなくて、2月にしようかな…」
「そうですねぇ。その方がいいかもしれません。まぁ、今日決めなくてもいいので大丈夫です。次回でも遅くないので」
「次回でもいいんかーい!」
……とは言えず、心の中で思い切り突っ込んだ。
「あっ、はい……。じゃあ次回までに考えておきます」
「よろしくお願いします。それではこの後検査と接種の方お願いしますね。最後にご質問ありますか?」
待ってました。
この1か月で少し気になっているささやかな疑問を予めメモしておいた。
後であれ聴きそびれたーという事がないように。病院も遠いしね。
「あっ、聞きたいことあるんですがいいですか?」
私が雑誌の記者のように手帳をめくり、メモの準備をすると。
「あっ、はい。どうぞどうぞ」
若先生のだらんとしていた体がしゃきっと伸びた。
Q1.リュープリンは4週間で効果が切れるそうですが、きっちり4週間後に打たないといけませんか?
A.4週間後から1週間以内に来て接種していただければ大丈夫です。
Q2.リュープリンの副反応で、頭痛・関節痛などが出た場合は市販のノーシンピュアなどの鎮痛剤を飲んでいいですか?
A.良いです。
Q3.ボンビバ錠は4~5週間おきの朝起きてすぐならいつでも良いですか?
A.良いです。
Q4.食事は進んで食べた方がいいものはありますか?
A.特にないです。バランスよい食事をお願いします。
Q5.毎日10分程度の筋トレ(リングフィット)をしていますが、続けてよいですか?
A.良いです。
Q6.生理の後不正出血がありましたが、何か問題ありますか?
A.今終わっているなら、問題ないです。
若先生は快く答えてくれた。
月1しか来院しないので、聞きたいことをメモしておくのは中々良い事だと思った。
これからも続けていきたい。
