週末はオーガニックのバジルとオリーブオイルを使ったパスタを作ったり、溜まっていた洗濯物をクリーニングに出したりして一人静かに過ごした。
さっぱりした部屋を見渡すと、満足感に浸れる。
結構小さいことが、今の私には幸せに思える。
昔から、私はそんな感じだ。
人間関係を築くのが不得意で、週末は誰とも会わず、一人で過ごすことが多い。
実家も市内のため、たまに母親が訪れては差し入れの煮物なんかを置いていった。
光の差し込む南向きのアパートで一人コーヒーを飲みながらくつろげば、平日の喧騒を全て忘れられる気がした。
週明け、寝呆け眼で出勤した私に、早速ゆう子が近づいてきた。
『せーんぱい☆おはようございますぅ』
『あ、おはよう』
ゆう子の顔色は明るい。どうやら、週末の皆川との一件をご丁寧にも報告して頂けるようだ。
案の定、ゆう子はロッカールームに私をひっぱり込み、開口一番に
『あのー、あたしー、今までで一番感じちゃったかもしれないです!もぉ皆川さん最高なんですよぉ~ッ。とにかく、二人で抜けるまでは大変でしたけどねー。渉外課には山下さんとかもいるし恐いしみたいな』
山下さんは渉外課の32歳独身、頭は切れるが所謂お局様だ。
『そうー。じゃあ、ゆう子ちゃんは皆川さんと付き合うの?』
『それがぁ、特に口説いてきたりとかナイんですよぉ。これって遊びじゃないですよね?』
知るかい、んなこと私に聞くなよと軽く心のなかで毒づきながら、私は制服のブラウスを羽織った。
『照れてるだけなんじゃない?きっと。皆川さんなんて浮いた話もないじゃない』
『まぁそうですけどお、不安かも。おわった後もタバコ吸っててあんまり話しなかったし』
ゆう子は本当に不安そうに眼を伏せた。長い睫毛がかぶさる。
ゆう子ほどの美人を一回寝た後自分のモノにしたいと思わない男がいるのだろうかと思う。
スカートの皺を直しながら、私は 言う。
『ほら、元気出して。朝礼遅れるよ』
週明けは溜まった仕事を片付けるのに追われた。振込業務を処理するのでいっぱいいっぱいになってしまった。午後には外回りで得意先を訪問する予定が入っている。
週明けはいつも憂欝だった。こんなに憂欝なのに、私が働き続ける意味って何なんだろう。
『坂下さん、こないだ頼んでおいた稟議書の校正はあがりましたか。』
私がはっとして目をあげると、橘課長がデスクの前に立ち、私を見下ろしていた。
忘れていた!金曜日に頼まれていた明日予定されている会議の重要案件の資料だった。
『す…すみません、今からすぐに取り掛かります!』
橘課長は少し溜め息をついたようだった。
『いい。あなたは午後は外回りの予定があるでしょう。明日には間に合わない。私がやりますから書類を返して』
『は…はい、すみません…』
背筋がひんやり冷たくなる。
最悪だ。
橘課長に軽蔑されたくなかった、と私は思った。
他の社員は失態を演じた私を遠巻きに見守っているようだった。
橘課長は追い打ちをかけるかのように言葉を重ねた。
『これ、コピーお願い、明日まで、冊子製本で』
分厚い冊子が手渡された。
さっぱりした部屋を見渡すと、満足感に浸れる。
結構小さいことが、今の私には幸せに思える。
昔から、私はそんな感じだ。
人間関係を築くのが不得意で、週末は誰とも会わず、一人で過ごすことが多い。
実家も市内のため、たまに母親が訪れては差し入れの煮物なんかを置いていった。
光の差し込む南向きのアパートで一人コーヒーを飲みながらくつろげば、平日の喧騒を全て忘れられる気がした。
週明け、寝呆け眼で出勤した私に、早速ゆう子が近づいてきた。
『せーんぱい☆おはようございますぅ』
『あ、おはよう』
ゆう子の顔色は明るい。どうやら、週末の皆川との一件をご丁寧にも報告して頂けるようだ。
案の定、ゆう子はロッカールームに私をひっぱり込み、開口一番に
『あのー、あたしー、今までで一番感じちゃったかもしれないです!もぉ皆川さん最高なんですよぉ~ッ。とにかく、二人で抜けるまでは大変でしたけどねー。渉外課には山下さんとかもいるし恐いしみたいな』
山下さんは渉外課の32歳独身、頭は切れるが所謂お局様だ。
『そうー。じゃあ、ゆう子ちゃんは皆川さんと付き合うの?』
『それがぁ、特に口説いてきたりとかナイんですよぉ。これって遊びじゃないですよね?』
知るかい、んなこと私に聞くなよと軽く心のなかで毒づきながら、私は制服のブラウスを羽織った。
『照れてるだけなんじゃない?きっと。皆川さんなんて浮いた話もないじゃない』
『まぁそうですけどお、不安かも。おわった後もタバコ吸っててあんまり話しなかったし』
ゆう子は本当に不安そうに眼を伏せた。長い睫毛がかぶさる。
ゆう子ほどの美人を一回寝た後自分のモノにしたいと思わない男がいるのだろうかと思う。
スカートの皺を直しながら、私は 言う。
『ほら、元気出して。朝礼遅れるよ』
週明けは溜まった仕事を片付けるのに追われた。振込業務を処理するのでいっぱいいっぱいになってしまった。午後には外回りで得意先を訪問する予定が入っている。
週明けはいつも憂欝だった。こんなに憂欝なのに、私が働き続ける意味って何なんだろう。
『坂下さん、こないだ頼んでおいた稟議書の校正はあがりましたか。』
私がはっとして目をあげると、橘課長がデスクの前に立ち、私を見下ろしていた。
忘れていた!金曜日に頼まれていた明日予定されている会議の重要案件の資料だった。
『す…すみません、今からすぐに取り掛かります!』
橘課長は少し溜め息をついたようだった。
『いい。あなたは午後は外回りの予定があるでしょう。明日には間に合わない。私がやりますから書類を返して』
『は…はい、すみません…』
背筋がひんやり冷たくなる。
最悪だ。
橘課長に軽蔑されたくなかった、と私は思った。
他の社員は失態を演じた私を遠巻きに見守っているようだった。
橘課長は追い打ちをかけるかのように言葉を重ねた。
『これ、コピーお願い、明日まで、冊子製本で』
分厚い冊子が手渡された。