唯一の側に居た人が、天国に行ってしまうと、

さみしくてさみしくてさみしくて

気が狂いそうだった。


いつ死んでもいい


できれば、もう死ねたら楽なのに。


そんな失意のどん底に居た時は

記憶もあまり定かではない。


何年間くらい、そんな状態だっただろう。



軽いさみしさしか、知らなかった私は

本当のさみしさを知った時

驚愕した。


本当に食べられない

本当に眠れない

何もしたくない。


この先の人生なんて、もちろん考えられない。


何千という辛い辛い辛い夜。


もう、思い出したくない。



そして、やっと。

まるで、冬眠から覚めるように

くらい穴倉から出てくるように

一歩、外界に出てみた。


そして、彼に出会った。


はじめは、彼の方から近づいて来た。


私を女として見てくれる事が嬉しかった。


ただそれだけ。


女友達じゃない、異性とのやり取り、おしゃべり、

単純に新鮮で久しぶりで、ただ楽しかった。


初夏から季節が秋になる頃


私は彼に恋をしていた


いや、恋をしていることに気がついた。


夫を亡くして、長い時間が経ったあと

初めて好きになれた人。


私は、必死で彼にしがみついた。


彼にしがみついていないと、

また振り落とされる。

2度と戻りたくないあの地獄に。


寒くて心細くて、孤独で。

だれひとり、助けてくれない

気にもかけてくれない、あの地獄。


息が苦しい。


たすけて。たすけて。たすけて。


いくら呼んでも誰も来てくれない。


そのうち声も出なくなる…。


いやだ。いやだ。

もう、戻りたくない。


だから、私は必死でしがみついた。