銀杏の前 | 市川笑野ブログ「笑野戯言草」

銀杏の前



当月出演しております歌舞伎座昼の部の演目、


傾城反魂香でございますが、


序幕の「近江国高嶋館の場」と「館外竹藪の場」は


三代猿之助四十八撰の演出で上演されております。



前回上演されたのは平成24年(2012)11月、


明治座での事でした。



この公演は私にとって忘れられない思い出があります。


まず1つ目は「銀杏の前」という大役をいただいた事。


銀杏の前は高嶋家の姫君ですが、


側室の子ゆえに大名家へは輿入れせずにおりました。


そんな折、


姫は館に出入りの絵師「狩野四郎二郎元信」に恋をします。


殿は姫の思いを叶えようと「田上群七百町」の領分を付けて嫁入りさせようとしますが、


仲間の手前や欲心ゆえに姫に近づいたと思われてはと、


この縁談を断り続けます。



そこで姫は腰元藤袴に扮して狩野元信の前に現れます。







姫との縁談を断るならば、


既に言い交わした女房が居ると言ってはどうかと元信に迫り、


強引に盃を交わしてしまいます。


まあ何とも積極的なお姫様です!



そして話は進み、


高嶋館は上を下への大騒ぎ!


(是非お芝居を観て下さいませ!)


姫も囚われの身となります。








この騒動が二幕目の「土佐将監館の場」に繋がっていきます。



又、もうひとつ感慨深いのは、


この公演の前月、


念願の名題試験に合格したのです!


師匠の猿翁は、


せっかくだからこの公演で名題披露しなさい。


とのお考えでしたが、


さすがに準備が間に合わないので、


名題披露は翌年1月になりました。


ですのでこの銀杏の前は名題下の時に勤めさせていただいたのです!




という思い出でございました。



笑野