皆さま、ごきげんよう。英国王立刺繍学校(Royal School of Needlework)講師・刺繍作家の二村エミです。


お代替わりに伴う10連休、本日はあいにくの肌寒い一日でしたが、いかがお過ごしですか?新元号が発表された日はちょうどレッスンの日で、生徒様とカウントダウンしようかしら・・・などと思ったのは笑い話ですが、平成から令和まで、残すところあと1時間となりましたね。

 


© KYODONEWS 天皇、皇后両陛下(宮内庁提供) 

天皇陛下からの最後のお言葉「支えてくれた国民に、心から感謝します」に、日本人であることを大切に思っていなかった私を変えた、英国での忘れられない体験を、しみじみと振り返りました。

 

今から19年前、ちょうど2000年に刺繍を学ぶために英国へ留学しましたが、当時日本の社会に生きづらさを感じていた私は、「今日から日本を捨てて、英国で生きていく」というような生意気な気負いと、どこかせいせいしたような気持で、学校のあるハンプトン・コート宮殿の門をくぐったのを覚えています。

 

ところが、入学初日にいきなり学校の廊下で目にしたのが、たたみ二畳はあろうかという、大きな額に入った日本刺繍の大作。様々な種類の菊が咲き乱れながらも、上品に抑えられた色調の繊細なグラデーション、そして何よりも、その刺繍を刺したであろうと思われる職人の方々の強烈な情熱と心意気を感じて、その場を動くことができませんでした。

 

それまで着物の装飾というイメージだった日本刺繍とは全く違う、見たことのない刺繍・・・でもこれは韓国や中国ではなく、間違いなく日本のもの。

 

そう確信できることに驚き、その時初めて自分の中に流れる日本人としての意識に目覚めたのです。

刺繍孔雀図屏風 12代西村總左衛門作 明治後期(20世紀) 京都国立近代美術館蔵

 

雑誌Bead Art & Embroidery No.28連載ページ

 

後から分かったことですが、その刺繍は明治時代に多く作られていた、欧米への輸出用の作品のうちのひとつでした。当時は竹内栖鳳など、西洋の写実的な絵の影響を受けた京都画壇の一流の画家たちが下絵を描き、職人がそれを刺して刺繡にするという、大変贅沢なコラボレーションによる最高級の刺繍が作られていたのです。

 

横浜美術館「ファッションとアート 麗しき東西交流」 《昭憲皇太后着用大礼服》

 

英国で刺繍を学んだことは、私にとって人生を変える大きなギフトですが、それと同じくらい大きな贈り物は、刺繍を通じて日本のすばらしさに気が付くことができたことだったと思っています。

 

あれから19年の歳月が流れ、いつしか明治時代の輸出用の日本刺繍と英国刺繍とが、人生の2大テーマになりました。

「明治150年記念 華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美-」展

 

今、東京で開催中の「明治150年記念 華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美-」展、昨年京都会場へ参りましたが、美しい品々ひとつひとつに、明治は欧米の文化を取り入れながらも、日本の感性のすばらしさ・美しさを守り抜こうとした時代でもあったのだなと感じました。

 

明治・大正・昭和・平成から令和へ…。時代が変わりゆく中で、変わらずに日本人の中にある自然と調和する精神、こまやかな感性を、大切にしていきたいですね。

 

「明治150年記念 華ひらく皇室文化-明治宮廷を彩る技と美-」

泉屋博古館分館
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/
(港区六本木1-5-1 TEL 03-5777-8600)
2019年3月16日(土)–5月10日(金)
休館日 月曜日(5月6日は開館、5月7日休館)


学習院大学史料館
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/ua/exhibition/
(豊島区目白1-5-1 TEL 03-5992-1173)
2019年3月20日(水)–5月18日(土)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:50まで)
休館日 日曜・祝日・5月1日(水)
特別開館日 4月14日(日)
※5月2日(木)は開館

 

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