#231 ふたりのカタチ

 

個人的な話なのですが、最近不思議と歌詞に目(耳?)が向くことが多くなりました。

なので、え、そんなこと歌ってたの?とか

こんな風に解釈して聞いてたっけ…?とか新たな発見をすることもしばしば。

 

この曲の場合は、曲のタイトルと音のイメージが違いすぎてイマイチ入り込めなかった曲で…発売当時は私自身も突き止めるほど熟考する時間もなく、後回しになっていたというのが正直なところです。

 

今あらためて歌詞をちゃんと読んで、あぁそういうことだったのかと。。。ちょっとスッキリした気持ちになっています。

 

■まずは作家陣のご紹介から

 

作詞は、須藤まゆみさん。

今井美樹さんなどのバックコーラスもされているようなのですが、Wikipediaでズラッと並ぶ中で一番へぇー!!って思ったのが、CMの「日清のラーメン屋さん♪」とか「アタックのギ・フ・ト♪」とか。これは30代以上じゃないときっと覚えてない!!笑

 

作曲は、三留一純(みとめかずみ)さん。

元はゲーム制作会社SQUARE(現SQUARE ENIX)のサウンドコンポーザー(ゲームの効果音や音楽などを作る人)で、現在はフリーで活動しています。

嵐では「スパイラル」「Don't stop」の作曲、あとは大野さんの「暁」(作編)など。
(思えば「暁」はまさにゲームのイントロにありそうなダイナミズム…!!!)

 

編曲はおなじみ、石塚知生さん。

(今回は石塚さんのアレンジが結構出てるかな?と、根拠なくなんとなく思います、勝手な想像です)

 

■歌詞について…2人のすこし変わった?関係性

最初にも書いたとおり、私はつい最近まで、タイトルと音にギャップがある曲だなぁ…と思ってました。特にイントロ。

その理由の一つとして、私は「ふたりのカタチ」という曲のタイトルを、勝手に「ふたりの愛の形」というイメージで認識していたと思います。

愛というふわっとしたものが形になるということは、かなり明確な気持ちがあったり、二人がいたからこそ生まれた「子ども」であったり、二人を結びつけた「もの」であったり。

何かしらはっきりした存在でありながら、純粋というか、神秘的というか、運命的というか…。

「愛の形」というと、そういうファンタジックなイメージが私の中にはあるなぁと。

 

なので、なぜにイントロでエッジの効いたシンセが来るのか。

これが、まっっっっっったく理解できなかった。意味付けもできなかった。

愛の形を表現するのなら、たとえば「full of love」のようなイントロの方が綺麗でマッチするじゃん。なんで違うんだろう、と。


当たり前ですわ。

私がイメージとして持ってる「愛の形」を歌ってるんじゃないもの。笑
 

「傷つけ合っても 寄り添えたら ふたり不器用な Winding Story」

言えない。すべては、歌詞をよく読めばなんてことなかったなんて。

 

いや、広く言えば愛の形なんだろうけど、

言い換えれば、「ふたりならではのスタイル」というか。

あり方というか。そっちのほうが近いのかなぁと。

 

素直じゃないとか、好きなのに嫌いって言っちゃうとか、嘘をついちゃうとか、

ことごとく感情表現が逆を行ってしまう人を理解したり愛しているのを見ると、

外野からしたら「なんでそんな人好きなの?」っていう素朴な疑問が湧きますよね。

差別云々ではなく。

 

この歌詞の主人公って、結構ゆったり構えている人で、

「想いの分だけ すれ違うなら もっと そばにおいでよ believe me」

とあるように、彼女の棘のある言葉とか嘘とかワガママなどの本当の理由までまるっとお見通しというか。深くまで察しているのかなと。結構できるお方でらっしゃる。

 

「想い」が心の中の世界だけで膨らんでいくと、想像したことがそのまま現実のように思い込んでしまうっていうのは、実は心理学的にも証明されていることで、それによって目の前の現実(=僕)を正しく認識できなかったりして、すれ違いが起こってしまうこともある。

だから、もっとそばで心のやりとりをしたいし、僕を信じてそうしてほしい。

不器用な彼女の棘や嘘の向こうにあるものを信じていて、

「ひとりじゃないんだよ」と伝えたいのかなぁと。

(私の妄想含んでるところがそもそも危ういけど!!笑)

 

パッと見素敵な人美しい人との付き合い方じゃなくて、

世の中的にはちょっと誤解されやすい子を深くまでまるっと愛するっていう、

普通はすぐに理解されない、奇妙な関係性が、

イントロのエッジの効いたシンセだったのかも…

と思えた時に、私は音の部分でのモヤモヤは結構スッキリしました。

 

(歌詞の主人公自身の想いはまっすぐなんだけど、

女性の方が結構うーん、、、見えないところでたぶん色々傷ついてきたのかもね)

 

■コーラスワークの「寄り添い力」

そう思うと、音楽表現もいろいろ気がつくことが出てきて。

Aメロで、あとの方から潤くんが「繰り返す~」「会えないときも~」と、

下でハモるところがありますよね。

純粋にユニゾンからハモリに分化していくのって、

メロディの層が厚くなるので、同じメロディでも「一歩進む」というか、

一段階上がるというか、ストーリーが前に進む印象があって…

私はけっこう好きなコーラスワークなんですけど、

↑のように歌詞を読んでいったら、潤くんがあまり癖を出さず、

下ハモで優しく寄り添う感じが結構活きてるなぁと感じるようになって。

「僕」の立ち位置として、「君に寄り添って同じ方向を歩いていくから」っていう

想いが乗っている気がしてしっくり来るというか、好きと感じるのかも、と思いました。
 

■押韻の妙と「伸びりゆく」の美しさ

忍法、子音揃えの術。(そんなのない)

 

(e)aeaa→「影から」「あれから」「(で)会えたら」「(芽)生えたら」

(u)aio→「藍色(あい)の」「(ス)カイも」「(ふ)かいよ」

ouae→「交差点」「ような瞳(め)」「廊下へ」「を浮かべ」

 

こんだけ押韻法則ガッチガチで歌詞に沿ったRap書けるの面白いよね。

ハマったときのなんちゅう爽快感。

 

ところで、

街に伸びりゆき出す影から

の「り」ってなに?古語かな?

とも思ったのですが、ちょっと学校で習った「り」とは用法が違うよう…。

言葉の意味としては、「伸びゆく」とさほど変わらないと思うのですが、

なんとなく言葉の響きから考えると、「伸びゆく」は「グングン伸びる」という感じで、

「伸びりゆく」の方がしなやかに伸びていく印象があって美しさがあります。

(ラップで結局刻んじゃってるんですけど笑)

んー、これはもしかして、明治大正あたりの小説とかで使われてるとか…と

青空文庫などで調べてみたものの、手がかりはなく。

ただ、大正時代の新聞記事に「慈たく伸びりゆく」という表現があり(よく見つけた私!)

翔さんも「小生」という表現を好む方なので、

もしかするとどこかで触れる機会があったのかもしれないですね。

 

 

Data #231 ふたりのカタチ

収録:シングル「ワイルド アット ハート」通常盤

作詞:須藤まゆみ

Rap詞:櫻井翔

作曲:三留一純

編曲:石塚知生

ソロパート:なし

サクラップ:あり

サトフェイク:なし