2.affection
作詞・作曲:nobby/編曲:佐々木博史
◎やさしさ+郷愁を生み出す五音音階
「voice」をマイナー調にしたような、または「voice」と「むかえに行くよ」をミックスさせたような…と思ったら、どっちも五音音階ベースの優しさと郷愁が漂う曲だった。
◎【最注目ポイント】5度、6度ハモリを活かした”多彩な2音ハモリ”のオンパレード
【ハモリ分析】
「ハモリ」は本来、歌声に対して使う言葉ですが、ここでは音の構成という意味で便宜上、楽器でも「ハモリ」という言葉を使わせてもらいます。
「復活LOVE」はオシャレ和音をさりげなく奏でつつも主旋律に対して四度下でのハモリが使われましたが、この「affection」では、イントロからサビに至るまで、日本的な雰囲気を醸し出すヨナ抜き長音階ニロ抜き短音階(追記1参照)をベースとして、4度、5度、6度ハモリなど多彩な音の組み合わせが印象的です。
Japonismしかり、最近の「ヨナ抜き長音階」を始めとする日本的な音階を前面に押し出す流れがあるので、それをくみ取った形とも言えます。
(予備知識)
根音=和音の基礎になる音
第○音=根音を第1音として、長調または短調で奏でた時の音階の番号のこと。例えば、C(ドミソ)なら、音階は長調(短調)でドレミ(ミ♭)ファソラ(ラ♭)シ(シ♭)ド、根音はド、ミ(ミ♭)は第3音。ソは第5音。
イントロの弦楽器、ピアノはそれぞれ4度~6度の離れ気味の音の幅で奏でられています。
この「離れハモリ」は、組み合わせによって感じが違いますが、切ない感じやシリアスな感じで使われることが多いです。切ない感じ、というのが郷愁に近い感覚を呼び起こすのですが、これは日本人が懐かしいと思うヨナ抜き長音階やニロ抜き短音階(追記1参照)に沿っていることが多いです。
引き続きBメロも。4度と5度を行ったり来たり。
◎リフレイン多用
これは完全に私の好み。「Song for me」や「Take me faraway」まではいかないまでも、同じフレーズを何度も何度も繰り返して、抽象的かつ印象的な空気を作ります。
◎厚みのあるコーラス
Aメロから徐々に厚くなっていくコーラス。Bメロはメロディーの上にニノと思われる上ハモリが入ってますが、これも5度と4度の組み合わせ。おじゅんが下から、支えたり和音の一部になったりといろんな役割をしてます。ここの歌詞は「思い出の中の声」のようにも聴こえる。サビは、いつもよりコーラスが強めに出ていると感じたけど、重ね具合とベースがオクターブで響いているように聴こえるので、すごく深遠な感じがするのかな。厚みのあるコーラスをまとっての「迷わない」「歩き出せる」という言葉、ずっしりと重みを持たせていると思います。(追記あり→追記24度下ハモリ+5度上ハモリ+8度ハモリの為せる技)
ついでに、Bメロ~サビのベースとコーラスをこんな風にしてみたので貼っておきます。
重厚感ハンパナイ…
楽曲分解中。「affection」のコーラスとベースを弦楽器四重奏にしてみたらなんか厳かになったのでシェア。これでも同じ音なんだよ。音色変えただけでもこんなに違う。うしろでちょこまか鳴っているのもちゃんとした役割があると気付かされる。https://t.co/GjPaZXHHns
— Emina@潜ったり浮かんだりのエブリデ (@eminalize) 2016, 2月 24
◎間奏のダイナミックさ
ストリングスが三連符とかダイナミックオサレ。
結論、アカペラでやったらカッコイイなーこれ。
やりがいしか感じない(こういうつぶやきがあと何回か出てきます)
追記1 2016/03/13 △ヨナ抜き長音階→◎ニロ抜き短音階
最初は「ヨナ抜き長音階」と書いていましたが、思うところあり、訂正しました。
ヨナ抜き長音階とニロ抜き短音階の違いっていうのは、私も何が違うのって言われるとまだまだ理論がなってなくて「まー、雰囲気?」としか言えてなくて(笑)いまだ模索中なとこはあるんですが…ちょっとややこしいことを話すと、「ヨナ抜き長音階」と「ニロ抜き短音階」は根音を変えると同じ音の組み合わせになる事があります。
【ラ(A)を根音にしたヨナ抜き長音階】ラ・シ・ド#・ミ・ファ#
【ファ#(F#)を根音にしたニロ抜き短音階】:ファ#・ラ・シ・ド#・ミ
ご覧の通り、スタートが違うだけで、音は一緒なんですよね。
んで、affectionの場合、全体的に短調で、しかもファ#を基調としていることを考えると「ニロ抜き短音階」といった方が良いのかもと思いました。何度も言いますが、音の組み合わせは一緒なんですけどね…雰囲気で(笑)
しかも、少しだけニロの「ニ」を抜いてないところありますけどね。サビの「季節は」の「つ」のとことか。ただ、展開を重視するJ-POPでなかなか完璧なヨナ抜きニロ抜きのJ-POPってそう多くないような気がします。貫くと歌謡曲っぽくなっちゃうかも。ヨナやニロの音をきっかけに展開を変えられるという利点があるので、あくまでも基本は、っていう意味で「ニロ抜き短音階」と言っていいんじゃないかと思います。
追記2 4度下ハモリ+5度上ハモリ+8度ハモリの為せる技
私がアレンジするうえで持っているハモリのイメージが、
2度→不穏・ぶつかり合い
3度→まとまり・円満
4度→太古・神秘
5度→安定・安心
6度→優雅
7度→無機質・ばらばら・(安定の)前兆
8度→厚み・力強さ・強調
なんですが、ここのハモリって神秘的であり(4度下)、どこか安心できる感じもあり(5度上)、そして力強さも(メイン以外の2音=8度)あり。心の底からの深い愛情(=affection!)が良く表現されてるところだと思います。