ついにあのアルバムへと突入です。
#183 movin' on
2010年のアルバム『僕の見ている風景』1曲目。JALのCMソングにもなりました。
実は、JALは経営不振により企業CMを1年間打ち切りにしていました。
この曲はそういった状況からの再スタート第一弾としての節目の1曲でもあります。
旅を通じて国同士や人同士の絆を大切にしたいというコンセプトで、
同じように絆を大切にする嵐を起用し、この楽曲タイアップが実現したのだとか。
2008年から様々な記録を連発し、あっという間に国民的スーパーアイドルグループになったにも関わらず
なお守りに入らない「力強さ」を見せ付けんばかりの1曲目です。
バスドラムの刻むリズムが人の歩くペースに近く、「力強さ」を物語るには絶妙な速度。
常に同じ8ビートのリズムを刻む鍵盤は、まるで自分自身に流れる時間の進む様を表しているかのよう。
アルバム曲でいくと『Oh Yeah!』や『Yes?No?』といったアップテンポで爽快な曲が光っていたけど、
10周年に近づくあたりから(多分『truth』のヒットはきっかけの一つだと思う)
クールな曲が決して”背伸び”ではなくなってきていることに、制作サイドもファンも気付いているのでは。
『COOL&SOUL』『Re(mark)able』といった翔さん曰く”エポックメイキング”的な曲は、
今の自分たちを歌っているようで、実際はこれからの自分たちに対する挑戦という意味合いを強く感じますが、
この『movin' on』はJazzの大人な雰囲気を間に取り込み、
チューニングを下げ重厚感の増したベースによって、そこにいる5人の安定感と力強さを強調しています。
両足がしっかり地に着いていて、迷いなく前を見据える強さがあります。
リーダーのフェイクから始まる、というのも私はかなりグッと来たポイント。
歌の上手さだけではない、でも「何か」で他をグイグイ引っ張っている。
「やっぱりこの人は嵐のリーダーなんだ」と思わせてくれる。
サクラップも、ここにくると語気が強くなりカッコよさも2割増。
当初はラップが入る予定がなかったのだけど、
歌詞に嵐とリンクするところを感じて、書きたくなったのだそう。(2010.8.26「ススめる!ぴあ」より)
七つの海 いまは語らず
重なる 五色の虹 空耀く
「五色の虹 空耀く」を自分の声で重ねて強調するあたり、
"This is us"(これが俺達だ)ということを意識しているようにも聞こえる。
(実際のステージでも、そういう身振りをしていたからね)
スタート、幕開け、に相応しい選曲。
客席から見えるステージより
幕の閉まったステージ裏からの「風景」を想像してからPLAYボタンを押せば、
彼らと同じ胸の奥がざわざわするような感覚が味わえるかもしれない。
#184 マダ上ヲ
※未成年の皆さんへ、このレビューは男女の性行為に関わる記述があります。あくまで自己責任でお願いします。
ヒップホップのような、フラメンコのような、レゲエのような、ジプシー音楽のような、
様々なジャンルの持つ情熱的な要素が組み込まれた音で構成されているのが印象的。
だいぶ前からリーダーが曲によって違う歌い方をすることは話したことがあったけど、
翔くんのラップも最近になってかなり意識的に違いをつけている印象が強いです。
2人の大きな違いは、感性か、論理か、というところに尽きる。
リーダーは、音楽の雰囲気から感じ取って表現するのに対して、
翔くんは、とても緻密に計算された明確な意図があるように感じる。
声のトーン、リズムの取り方、言葉の発音の仕方、全てにおいてこだわりがあり、意味がある。
この曲を聴いて、あれ前にもこんな曲があったような…と思って遡ってみると、
見つけました、アルバム『How's it going?』の「テ・アゲロ」。
同じようなことを歌ってます。でも、あの時と今じゃ大人度が違いすぎる…。
(「テ・アゲロ」で歌う智さんの「sexyにoh」っていうのにはいまだに鼻血が出そうになりますが)
昔好きだった某ロックミュージシャンが
CDを家で聴くこと=「自慰」、ライブ=「性行為」と表現していて「ほーなるほどな!」
と思いましたが、この曲もそれに通じるものがあります。
ジャンルにもよると思うけど、私の思う「いいライブ」って、「双方向性」があること。
演り手とオーディエンスの間に何らかのやりとりがあって、
お互いの気持ちを高ぶるように盛り上がってクライマックスを迎える、
っていうのが最高に気持ちいい瞬間。
そう考えると、その人はなかなか上手いことを言ってるよね。プロセスが一緒だもん(笑)
「カラダが目覚める」、「カラダが欲しがる」っていう表現にあるように、
たとえ心が自分たちのほうに向いていなくとも、本能的な衝動を煽るくらいのカリスマ性というか、
うーん、相手を引っ張っていくたくましさというか…
攻めてるよね。うん。
単に男女の情事の曲という風に片付けるのではなくて、一緒に”マダ上ヲ”目指そうっていう
メッセージ性を感じてもいいのかな、と思う一曲です。
作曲にはDapo Torimiro、Drew Ryan Scott。
Dapo Torimiroのキャリアを見て今までにないくらい興奮しました。
Stievie Wonder、Lauryn Hill、Earth, Wind & Fireなど日本でも有名アーティストのツアーに参加、
John Legend、Elliott Yamin、Justin Bieber、日本では嵐の他に福原美穂の曲も手がけたり。
Elliott Yaminといえば木山裕策さんがカバーした「Wait for you」が有名だと思うのですが、
彼の曲のなかで私が一番好きなのが「Know Better」という曲なんです。
なんとこの曲を作ったのが、Dapo Torimiroだったという。
渋谷のタワレコでやったフリーライブに連れて行ってもらって惚れこんだ曲なので、
なんというかこんな巡りあわせあるのかと…。
Drew Ryan Scottもボーカルグループを持ちながら、作曲活動ではK-POPを裏で支えている1人のよう。
SUPER JUNIOR『Sorry,Sorry』『Why I like you』、SS501『Love Like This』『Wasteland』、Shinee『Shout out』、東方神起『You’re my melody』など、クールからミドルバラードまで…。
うほー!!そんなインターナショナルな方々に嵐は曲を作ってもらったのか、と。
おそらくこのアルバムの中で一番の実験作だからこそ、こんな人たちが付いてきちゃうんだろうなと。
鼻息荒くなります。
#183 movin' on
曲名 | Rap詞 | 作詞 | 作曲 | 編曲 | ソロ | サクラップ | サトフェイク |
movin' on | 櫻井翔 | みうらともかず 小川貴史 | Dr Hardcastle Dice Taylor youwhich | youwhich | AMNO | ○ | ○ |
2010年のアルバム『僕の見ている風景』1曲目。JALのCMソングにもなりました。
実は、JALは経営不振により企業CMを1年間打ち切りにしていました。
この曲はそういった状況からの再スタート第一弾としての節目の1曲でもあります。
旅を通じて国同士や人同士の絆を大切にしたいというコンセプトで、
同じように絆を大切にする嵐を起用し、この楽曲タイアップが実現したのだとか。
2008年から様々な記録を連発し、あっという間に国民的スーパーアイドルグループになったにも関わらず
なお守りに入らない「力強さ」を見せ付けんばかりの1曲目です。
バスドラムの刻むリズムが人の歩くペースに近く、「力強さ」を物語るには絶妙な速度。
常に同じ8ビートのリズムを刻む鍵盤は、まるで自分自身に流れる時間の進む様を表しているかのよう。
アルバム曲でいくと『Oh Yeah!』や『Yes?No?』といったアップテンポで爽快な曲が光っていたけど、
10周年に近づくあたりから(多分『truth』のヒットはきっかけの一つだと思う)
クールな曲が決して”背伸び”ではなくなってきていることに、制作サイドもファンも気付いているのでは。
『COOL&SOUL』『Re(mark)able』といった翔さん曰く”エポックメイキング”的な曲は、
今の自分たちを歌っているようで、実際はこれからの自分たちに対する挑戦という意味合いを強く感じますが、
この『movin' on』はJazzの大人な雰囲気を間に取り込み、
チューニングを下げ重厚感の増したベースによって、そこにいる5人の安定感と力強さを強調しています。
両足がしっかり地に着いていて、迷いなく前を見据える強さがあります。
リーダーのフェイクから始まる、というのも私はかなりグッと来たポイント。
歌の上手さだけではない、でも「何か」で他をグイグイ引っ張っている。
「やっぱりこの人は嵐のリーダーなんだ」と思わせてくれる。
サクラップも、ここにくると語気が強くなりカッコよさも2割増。
当初はラップが入る予定がなかったのだけど、
歌詞に嵐とリンクするところを感じて、書きたくなったのだそう。(2010.8.26「ススめる!ぴあ」より)
七つの海 いまは語らず
重なる 五色の虹 空耀く
「五色の虹 空耀く」を自分の声で重ねて強調するあたり、
"This is us"(これが俺達だ)ということを意識しているようにも聞こえる。
(実際のステージでも、そういう身振りをしていたからね)
スタート、幕開け、に相応しい選曲。
客席から見えるステージより
幕の閉まったステージ裏からの「風景」を想像してからPLAYボタンを押せば、
彼らと同じ胸の奥がざわざわするような感覚が味わえるかもしれない。
#184 マダ上ヲ
曲名 | Rap詞 | 作詞 | 作曲 | 編曲 | ソロ | サクラップ | サトフェイク |
マダ上ヲ | 櫻井翔 | 小川貴史 HYDRANT | Dapo Torimiro Drew Ryan Scott | 吉岡たく 佐々木博文 | AMNOS | ○ | × |
※未成年の皆さんへ、このレビューは男女の性行為に関わる記述があります。あくまで自己責任でお願いします。
ヒップホップのような、フラメンコのような、レゲエのような、ジプシー音楽のような、
様々なジャンルの持つ情熱的な要素が組み込まれた音で構成されているのが印象的。
だいぶ前からリーダーが曲によって違う歌い方をすることは話したことがあったけど、
翔くんのラップも最近になってかなり意識的に違いをつけている印象が強いです。
2人の大きな違いは、感性か、論理か、というところに尽きる。
リーダーは、音楽の雰囲気から感じ取って表現するのに対して、
翔くんは、とても緻密に計算された明確な意図があるように感じる。
声のトーン、リズムの取り方、言葉の発音の仕方、全てにおいてこだわりがあり、意味がある。
この曲を聴いて、あれ前にもこんな曲があったような…と思って遡ってみると、
見つけました、アルバム『How's it going?』の「テ・アゲロ」。
同じようなことを歌ってます。でも、あの時と今じゃ大人度が違いすぎる…。
(「テ・アゲロ」で歌う智さんの「sexyにoh」っていうのにはいまだに鼻血が出そうになりますが)
昔好きだった某ロックミュージシャンが
CDを家で聴くこと=「自慰」、ライブ=「性行為」と表現していて「ほーなるほどな!」
と思いましたが、この曲もそれに通じるものがあります。
ジャンルにもよると思うけど、私の思う「いいライブ」って、「双方向性」があること。
演り手とオーディエンスの間に何らかのやりとりがあって、
お互いの気持ちを高ぶるように盛り上がってクライマックスを迎える、
っていうのが最高に気持ちいい瞬間。
そう考えると、その人はなかなか上手いことを言ってるよね。プロセスが一緒だもん(笑)
「カラダが目覚める」、「カラダが欲しがる」っていう表現にあるように、
たとえ心が自分たちのほうに向いていなくとも、本能的な衝動を煽るくらいのカリスマ性というか、
うーん、相手を引っ張っていくたくましさというか…
攻めてるよね。うん。
単に男女の情事の曲という風に片付けるのではなくて、一緒に”マダ上ヲ”目指そうっていう
メッセージ性を感じてもいいのかな、と思う一曲です。
作曲にはDapo Torimiro、Drew Ryan Scott。
Dapo Torimiroのキャリアを見て今までにないくらい興奮しました。
Stievie Wonder、Lauryn Hill、Earth, Wind & Fireなど日本でも有名アーティストのツアーに参加、
John Legend、Elliott Yamin、Justin Bieber、日本では嵐の他に福原美穂の曲も手がけたり。
Elliott Yaminといえば木山裕策さんがカバーした「Wait for you」が有名だと思うのですが、
彼の曲のなかで私が一番好きなのが「Know Better」という曲なんです。
なんとこの曲を作ったのが、Dapo Torimiroだったという。
渋谷のタワレコでやったフリーライブに連れて行ってもらって惚れこんだ曲なので、
なんというかこんな巡りあわせあるのかと…。
Drew Ryan Scottもボーカルグループを持ちながら、作曲活動ではK-POPを裏で支えている1人のよう。
SUPER JUNIOR『Sorry,Sorry』『Why I like you』、SS501『Love Like This』『Wasteland』、Shinee『Shout out』、東方神起『You’re my melody』など、クールからミドルバラードまで…。
うほー!!そんなインターナショナルな方々に嵐は曲を作ってもらったのか、と。
おそらくこのアルバムの中で一番の実験作だからこそ、こんな人たちが付いてきちゃうんだろうなと。
鼻息荒くなります。