夏の暑いときでした。



同業者が

「解錠できますか?できればお願いしたいんですけど・・」

と電話をかけてきました電工鉗





話によれば某物件のオーナーからの依頼で、鍵をなくしたので鍵を換えてほしいとの依頼でした。鍵がないので解錠と鍵の交換をするという依頼でした。





僕は店が終わってからその物件に向かいました。



物件は1階部分が貸テナントの物件で普通のピンシリンダーがついている扉、その横にガラス窓、その横にその物件の2階へ通じる階段の扉がありました。2階は賃貸物件で人が住んでいるということでした。貸テナントは久しく空き物件でした。



夜だったこともありピッキングで貸テナントの扉の解錠を試みましたが、解錠できませんでした。

夜なので鍵を壊すにも音がするのでその日はあきらめて出直すことにしました。







次の日のまだ明るいうちにもう一度伺いました。物件のオーナーはすでにお越しになられていました。



ピッキングをしているときに物件のオーナーがこんなことを言ってきました。



「この2階に住んでいる住人は家賃をもう2年程払っていないんですよ。催促してもその月だけは払うんですが最近は電話さえ出ようとしないんです。今、裁判所に立ち退きの申請をしてもうすぐ(命令が)出る予定ですが電話をしても今でも連絡が取れないんです。居留守を使っているんでしょうかね・・・」



穏やかな口調でおっしゃられていましたが明らかに怒りを帯びていました。





ピッキングが駄目だとわかり破錠をしようかと思いましたがその扉は大きなガラスがついておりかなり古いものだったので扉にダメージを与えるとガラスが割れる恐れがあったので横のガラス窓を開けることにしました。



ガラス窓の解錠に取り掛かり、しばらくの時間窓をガタガタいわせていると横の扉が開く音がしました。

2階から誰か出てきたようでした。



物件のオーナーがお話をされていた例の「不払い住人」でした。



物件のオーナーと「不払い住人」の久しぶりの ご対面 でした。



物件のオーナーは今までこらえていた怒りを爆発させました3 peaks





「あなたはもうすぐしたらここから出て行くことになります。もうすでに裁判所に申請してます。もうすぐ命令が出ますので準備をしておいてください。あんたよくも今までこんな恥知らずなことをされてましたね。だいたい・・!・・・?・・・!!!」





いろいろなことを言っておられましたが怒りに満ちたその声を聞きながら僕はひたすら窓の解錠を試みていました。



窓が開きその物件の中に入って扉のカギを開け取換えをしました。











・・・この「不払い住人」はどうなるのだろう?











僕は自分がした解錠、鍵の取換えよりも「不払い住人」がどうなるのかが心配でした。

何か僕が悪いことをしたみたいな気持ちになりました。



その日は無事に仕事を終え、お代金をいただき店に戻りました。







・・・







2日後、物件のオーナーから電話がありました。





「どこかゴミ回収をしている業者を知りませんか?」





お聞きすると解錠をした次の日に早速「不払い住人」は出て行かれたそうです。

引越しというより 夜逃げ でした。



僕も気になってもう一度その物件にいってみたところ本棚などかなりのものがまだ部屋に残っていました。





オーナーは

「どれでも要るものがあれば持って帰ってください曾璧山中學

といってくれたのですが僕は何も持って帰りませんでした。





「不払い住人」はお詫びの気持ちが書かれた置手紙を残して行き先も告げずに出て行かれたということでした。







・・・







(お金はその使い方によって人格がわかる)

という言葉を誰かが言っていたのを思い出しながら同情とは少し違う複雑な気持ちがした経験でした。