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日本野球機構(NPB)は11日、今季から公式戦で使用している統一球の仕様を変更していたことを明らかにした。昨年、ボールの反発係数が基準値を下回るケースがあったため、修正を製造元のミズノ社に依頼していたもので、労組・日本プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天)と仙台市内で事務折衝を行った後、下田邦夫事務局長が公表した。下田事務局長は、ミズノ社にボールの改良を認めないよう、指示していたことも認めた。

 やはりボールは変わっていた。現場を、ファンをだましていた。NPBはこれまで統一球の仕様は変更していないとしていたが、下田事務局長は選手会との事務折衝の後、「今年のボールについては、ミズノに微調整をお願いしたという説明をした」と、初めて改良を公表。さらに、ミズノ社に対して、統一球に関する問い合わせには「全く変わっていない」と答えるよう指示し、隠ぺいを図っていたという。

 統一球は、2011年から加藤良三コミッショナーの主導で導入。NPBでは年に4、5回、各球場から抜き打ちで集めたボールの検査を行うが、昨年までの統一球は反発係数(0・41~0・44)が基準値以下のケースもあり、時には0・408という極端な値を示すこともあった。NPBはこれを受けて昨夏に改良をミズノに指示。下田事務局長は「我々としては下限に合わせるということで(スタンスは)変えてない」と、“企業努力”を強調。ただ、基準値内に収めたとはいえ、結局は昨年より球が「飛ぶ」ようになっていたのは事実だ。現在の本塁打数を単純に当てはめると12球団で年間1297本塁打となるペースで、これは昨季の881本から47%も増える計算だ。

 しかも、把握していたのは加藤コミッショナーを含めたNPBの上層部の一部と、ミズノ社のみで、12球団関係者には知らされていなかった。コミッショナーは「選手がアジャストしたのでは」と話す有り様。嶋会長は「最初に導入されたときの基準で出来高を結んでいる選手もいるし、特に投手は影響がある」と、現場の声を代弁した。「労働条件が変わっている」という選手会の追及を受け、NPBとしても、これ以上シラは切れないと判断し、公表に踏み切った模様だ。

 NPBは事務折衝で、09年以降5年間の係数の数値を示して理解を求めたが「納得? してないでしょ」と下田事務局長。さらに隠ぺいの意図を問われ「知らせて混乱させてはいけないと思ったが、知らせずに混乱を招いた」と、苦しい言い訳に終始した。ミズノ社広報宣伝部では「現段階ではお答えできることはありません」とコメントした。

 昨年までのボールは今年のオープン戦で在庫を使い切り、開幕からは「新・統一球」を使用しているという。「まあ、生活の知恵というか…」と下田事務局長。統一球導入後、「朝令暮改はしない」とボールの改良を否定してきたコミッショナーの、今後の説明が注目される。

 ◆統一球 NPBが公平な競技環境づくりや国際大会への対応のために11年から導入した。ミズノ社製で、中心のコルク芯を覆うゴム材を低反発素材に変更。縫い目も幅が1ミリ広く、高さが0.2ミリ低くなった。反発係数を低く抑えることで、ミズノ社の実験では球速144キロ、スイング速度126キロ、飛び出し角度27度で打ち返した場合、従来の球よりも飛距離が約1メートル縮まるとしていた。

 ◆ボールの反発力と反発係数 反発検査は日本車両検査協会・東京検査場で行われる。反発係数とは、例えば、時速100キロで鉄板にぶつかり、時速50キロではね返れば「0・5」となる。ピッチングマシンから放出される球を約1・5メートル離れた鉄の壁に当て、当たる前の速度とはね返った後の速度で測定。NPB公式サイトによると、時速270キロ(ボールとバットの標準的な相対速度)で反発係数「0・41~0・44」の範囲に入ると合格とし、厳密な数値を「0・4134~0・4374」と定めている。



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