加速は止まらない。鞍上は軽く手綱を動かす程度だったが、首を大きく使った雄大なフォームでラスト1ハロン12秒2(7ハロン96秒4)を刻み、圧巻の7馬身先着。単走と見間違えるほどの派手なパフォーマンスで、異次元の身体能力を見せつけた。
決戦に向け、ダービー前と同じように積極的に調教の手綱を執っている岩田が、状態の良さに太鼓判を押した。「先週の日曜(14日)で体はできていたけど、素晴らしい。息の入りはいいし、本当に悠々と走っていた。納得できる動きだった」。闘争心を内へため込むため、ハミをかけないよう意識した最終デモ。人馬一体となった走りで、3か月のブランクによる不安を払しょくした。
7月に、英G1のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSに挑戦。8着に終わったが、世界の強豪を相手に、貴重な経験を得た。検疫、放牧を経て、帰厩したのが9月27日。秋の大目標を3000メートルの菊花賞に置くことに対し、陣営に迷いはなかった。
「挑戦だよね。ダービー前も、距離が長いと言われていたわけだから」と矢作調教師は言う。それだけではない。海外遠征から帰って最初のレース。条件的には厳しいが、岩田の信頼は揺るがない。「戦友というか、分かち合える友達のような感じ。ブリランテの背中でレースができるのは、幸せなこと。ダービー馬に恥じないレースをさせてあげたい」
岩田は、スプリンターズS(ロードカナロア)、秋華賞(ジェンティルドンナ)と連勝中。史上初の連続するG1・3連勝と、JRA年間G1最多勝タイ(6勝)の偉業がかかる。ビッグレースで、誰よりも頼りになるジョッキー。これまでと同じように、魂の騎乗で、ダービー馬のプライドを守り抜くつもりだ。