自信を持ってレースに臨んでいた。「他の馬に合わせるくらいなら、自分でペースを作ろうと思っていたので、逃げても抵抗はなかった」。好スタートから先頭に立つと、前半800メートルは47秒2。狙い通り、マイペースの展開に持ち込んだ。「泣いたろうと思ったけど、嬉しすぎて泣かれへん。なんか、すいません」と笑顔の秋山が、NHKマイルC史上初となる逃げ切りでの3歳マイル王に導いた。
55回目の挑戦で、ついに手にしたGIジョッキーの勲章。「本当に長かったですね。ずっと惜しいところで勝てなくて、コンプレックスみたいなものもあったけど、今日で吹っ切れました」。16年目の苦労人が、今年初めて、GIで1番人気馬を勝利に導いた。
平田調教師にとっても待望のGI初制覇となった。秋山とのコンビで忘れられない一戦がある。ベッラレイアがわずか9センチ差の2着で涙を飲んだ07年のオークスだ。「あれがあって、今の僕らがあるのかなという感じです」と、感慨深げに振り返った。
秋山も同じ気持ちで、リベンジの時を待っていた。「オークスでは1番人気で、それまで味わったことのないような緊張だった。それが馬に伝わってしまったのもあったかもしれない。だけど、それがあったから今日は気が楽だった。何とか平田先生の管理馬でGIを勝ちたいと思っていた。最高です」と胸を張った。
両者の悲願が叶ったのは、最少キャリアの4戦で頂点に立った、カレンブラックヒルの強さがあってこそ。「こちらの想像以上に強いですね。今後はオーナーとゆっくり話をしてからですが、一応登録はします」とトレーナーはダービー(27日、東京)参戦の可能性を示唆した。まだ底を見せていない無敗の3歳マイル王が、強い絆で結ばれた2人を、更なる高みへ導いていく。