自らの区間記録には及ばない。それでも3年連続で往路優勝のゴールテープを切った東洋大の柏原の表情には充実感が広がっていた。「不振だったこの1年を考えると、ここまで走れたのが不思議。結果に表れてうれしい」。表彰式では「いつも支えてくれる」というチームメートの名前を叫んでうれし泣きした。ため込んでいたものを爆発させるかのようだった。
先頭の早大に2分54秒差の3位でたすきを受け取ると「つぶれるか(最後まで)行けるかどっちかです。覚悟してください」とスタート直前に酒井監督に電話した通り、序盤から飛ばした。7キロ手前で東海大をとらえ、16キロ過ぎで早大を抜き去った。後半は減速し、ゴール後には救護テントへ運ばれたが、格の違いを見せつけた。
昨年2月に右ひざを痛めたのが影響してか年間を通じて調子が上がらず「うまくいかないことが多くて、腐りそうになった」と振り返る。11月の全日本大学駅伝は2区4位。涙をためて悔しがった。悩み抜いた末の打開策は走り込み。11月後半から12月前半にかけての総走行距離はこの時期としては異例の約800キロにも及び、大一番に合わせてきた。
東洋大は往路新記録を樹立し「自分の記録よりうれしい。個人よりチームとして強くなった証拠だから」。悩み苦しんだ山上りのスペシャリストが最高の笑みを浮かべた。