*広がる世界 ➁
自分のやりたいことについても、改めて考えるようになった。
自分には人と関わることは向いていない、なるべく1人で籠ってできるような仕事がしたいと、ずっと思い続けて来た。
だけれど、絶対にできない、嫌だと思っていた接客業に慣れてしまった。
そんな自分に驚くと共に、日常の人との関りを楽しいと感じ始める自分にも気が付いた。
それはお客さんとの関わりであったり、一緒に働く人たちの関りでもあった。
末っ子で昔から周りに面倒を見てもらって来た自分は、年下の人と接するのが苦手だった。
けれど、学生さんや小さな子どもたちと接するうちに、自然と話せるようになっていった。
苦手だったのは、年上だからしっかりしなければ、恥ずかしくないように振る舞わなければと思っていたからで、だけれど実際は、全然そんなことはなく、相手が年下でも年上でも関係なく、分からないことは分からないと良い、一緒に迷ったり、教えてもらったり、それで良いのだと理解していった。
毎日、何気ない会話を交わしたり、面白いことを共有したりするのが、単純にとても楽しかった。知らないことをたくさん知った。
そんな中で、以前は作家だけがしたいと思っていた夢が、人前で話したり、情報を共有する仕事も楽しそうだと感じ始めた。
講演というガラではないので、もっと気さくに、自分の経験や気持ちをシェアするトークショーのような場で話せたら、きっと楽しいだろうと思ったのだ。
事業所や個人での相談業務をやってみて、自分は誰かに寄り添うのは苦手だと知った。
だけれど、一方的に話すだけなら、それは出来そうだし、面白そうだった。
自分の話したいことを話して、けれどそれが、どこかの誰かにとって響く言葉だったら、どんなにいいだろうと思う。
昔のように、誰かに意見や行動を押し付けるのではなく、ついて来たい人だけが、自分のペースで、自分の好きなところだけを拾って進んで行くような手伝いがしたい。
書くことは元々好きだったが、話すことの楽しさも、人と接するうちに学んでいった。
嫌だ嫌だと言いながら、またパートを始めて、本当に良かったと思う。
そういう新しい視点を得られたから。
パートを再開したきっかけは、支払いが足りないと気付いたからだと先に書いたが、後から数えてみたら、意味不明な計算間違いをしていただけで、お金はきちんと足りたのだ。
でも、その時に計算間違いをしていなかったら、私は鬱鬱としたところから抜けきれなかったと思う。
その時に仕事を探したからこそ、今の職場に来れた。
そして色々なことを知り、学んだ。楽しんだ。
やっぱり人生は、何か大きなものによって動かされているのだなあと、ぼんやりと思うのだ。
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