*迷走と後退 ⑤

 

 本当に憶病で、卑屈な時期だった。

 専業主婦の代わりに、好きなことを頑張るからと夫に宣言したのに、夫を送り出した後に二度寝する生活を送っていただけだ。

 書かなければと思うほど、書くことが苦しい。

 何を書いても、どこかで見たような内容にしか思えない。

 自分独自の、自分の色を出すことができなかった。

 そうこうしているうちにも、貯金はグングンと減っていく。

 それでも、また外で働くことを考えるだけで、胸がギュッと苦しくなり、ざわついた。

 現実から懸命に目を逸らしながらも、やはりいつでも不安と恐れに憑りつかれていた。

 ある時、来月の支払いが足りないことに気が付いた。

 もう駄々をこねている猶予はない。

 今すぐに働き始めなければいけなかった。

 嫌だ嫌だと喚きながらも、求人を探した。

 今までは接客業は徹底的に避けていたが、そもそも世の中の仕事は殆どが接客業なので、その選択肢の狭さが嫌になった。

 自分が『普通』なら、もっと伸び伸びと仕事も探せるのにと、心底、苦しくなった。

 どうせ嫌々働くなら、時給は少しでも高い方がいい。

 開き直って、時給が他よりも高い接客の仕事に応募した。

 ドギマギしながら面接に行き、その場で採用。

 希望していた時間ではなかったが、もういいやとこだわりを捨てた。

 相変わらず働きたくはなかったが、収入のめどが立ったことに安心した。

 それから初出勤までに、私はまた本を読み漁っていた。
 
 働く前に、少しでも心を整えておきたかったのだ。

 知り合いがオススメしてくれていた本を思い出して、さっそく図書館で借りた。

 随分と前に出た哲学の本で、ベストセラーだったのでタイトルは良く知っていたが、読んだことはなかった。

 読み始めて驚いた。

 私が今まで考えていたことや感じていたことが、とても明快に纏められていたのだ。

 見解が違う所ももちろんあったが、それまではスピリチュアルや自己啓発といった類の場所でしか見聞きしなかった考え方や捉え方、実行の仕方が、そこにはさも当たり前のように、事細かく、記載されている。

 この一般的には奇異な内容が世の中で話題になったことにも、今更ながら驚きを受けいていた。

 そういう分野は、一部の人以外には受け入れられないものだと思っていたからだ。

 自分が信じて来たものは、きっと間違っていない。

 本の内容が、自分へのメッセージに思えた。

 この時、無気力だった私の中で、再び情熱のスイッチが押された。

 エネルギーが、体の中を循環し始めた。

 ひきこもりから脱したときのような、久しぶりの高揚感だった。

 ここからまた、私という存在は、少しずつ変化していく。

 自分だけの幸せの道を歩むために。

 

 

 

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