あのあと結局
直人さんがお店に戻ってきても
特に会話もなくて…



その後、数日間出勤しても
忙しいのかお店に来てないみたいで
全く顔を合わせる事はなかった

気分を悪くさせた手前
やっぱり少し気まずかったから
それはそれで
少しほっとした

同じ服飾関係でも
衣装とアパレルじゃ全く別物で
仕事を覚えるのに
とにかく必死になって
花さんの事も
すっかり頭から離れてた



始めたら、何でも完璧じゃないと
気が済まない…

私の長所でもあり
短所でもある

そんな感じだから
ここ数日間毎日、
早く仕事を覚えたくて
寝る間も惜しんで勉強した



夕方、新商品の会議に
参加させて貰う事になって
午後になると
サンプルを運んだり、資料を用意したりで
一気にバタバタし始める




木「秋山さーん!
 その、資料並べたら
 コーヒー8個淹れてもらっていい?」

ゆ「はい! 分かりました!」

木「裏口のとこにアメコから
 ポットで届いてるはずだから
 こっち持ってきて
 直人さん来たら、すぐ淹れて出して!」

ゆ「あ、はい!」

 




木下さんに言われた通りに
裏口の方に向かうと
廊下のテーブルにコーヒーを
発見した


(あ、かわいい…)

ポットが二つに
かわいい絵柄の紙コップ

(アメイジングコーヒー?
だから、アメコか…!)


「ハハッ 笑」


突然、背後からの笑い声に
体がビクッと反応した


ゆ「あ…!
    おはようございますっ」

直「おはよ 笑
 アメコ分からなかった?」

ゆ「へっ?! 私、声に出てました?」

直「出てました 笑
 かわいい…  のとこからずっと 笑
 それ俺、持つよ?」

ゆ「あ、いえ 私が持ちますっ」

直「いーのいーのっ 
 通りかかったついでだから 笑」

ゆ「じゃあ、ひとつだけ…」


ニコっと笑うと
私の手元からポットを二つ
奪っていく…


ゆ「ありがとうございます…」

直「いいえー 笑
 どお? 慣れた?」

ゆ「はい、ボチボチ…
 でも正直いっぱいいっぱいで…
 覚える事が多すぎて…」

直「あんまりクソ真面目に
 やらなくて大丈夫だからね 笑
 手抜きはダメだけど…
 ちゃんと寝てる?」

ゆ「え…?」

直「クマ…
 出来てるからさっ
 睡眠は大事よー 笑」

ゆ「あ…//」

直「ごめんごめん 笑
 失礼だったよね…
 一生懸命はいい事なんたけど
 身体壊しちゃいけないからさぁ…」

ゆ「すいません… 気をつけます。」

直「あー 違う違うっ
 謝らないで 笑
 ちょっと心配になったから…

 あとさ…   この前はごめんね。
 キツイ言い方しちゃったかなって…」


少し、申し訳なさそうに話す直人さん

そっか…
この人も気まずかったんだな…


直「この前の話…
 花に確認したら
 すっごい喜んでたよ…
 あいつも、秋山さんに会いたいって…
 
 俺、取り繕うから会ってやってよ…」

ゆ「本当ですか?!
 そっか…   花さん
 私のこと覚えててくれたんだぁ…
 直人さん、ありがとうございます…」

直「あんだけ、喜ばれたらね 笑
 多分泣いてたよ 笑
 すーぐ泣くんだよあいつ 笑」



花さんに会えるんだ
やっと…

嬉しい気持ちが溢れるさなか
ふと、直人さんの表情と
話し方に気づいた事があった

だって、あまりにも
凄く優しい笑顔で
ちょっと照れ臭そうに話すから





えーーっと…


直人さんて、もしかして…